コラムcolumn
病気の話
急性上気道炎(かぜ症候群)- 保護者のためのガイド
「かぜ」って、本当はどんな病気?
「うちの子、また風邪ひいたみたい…」
お子さんの鼻水や咳、発熱は、保護者の皆さんにとって日常的な心配事ですよね。「急性上気道炎」は、一般的に「かぜ」や「風邪症候群」と呼ばれる、鼻やのど(上気道)にウイルスが感染して炎症が起こる病気です。ほとんどのお子さんが年に何回も経験する、とても身近な病気です。
なぜ、子どもはよく風邪をひくの?
お子さんが風邪をひきやすいのは、まだたくさんのウイルスに出会ったことがなく、免疫が発達途中だからです。原因の80~90%はウイルスで、ライノウイルス、RSウイルス、コロナウイルスなど、その種類は200種類以上あると言われています[1]。
これらのウイルスは、感染した人の咳やくしゃみのしぶき(飛沫)を吸い込んだり、ウイルスがついた手でおもちゃや自分の口・鼻に触れたりすることで感染します。集団生活が始まると、どうしても感染の機会は増えてしまいます。
こんな症状、ありませんか?
•鼻水・鼻づまり:最初はサラサラ、だんだん黄色や緑色になることも。
•のどの痛み
•咳・くしゃみ
•発熱:38℃前後のことが多いですが、個人差があります。
•だるさ、食欲不振
これらの症状は、体がウイルスと戦っているサインです。
症状はどのくらい続くの?(自然歴)
風邪の症状は、種類によって治るまでの期間が異なります。「思ったより長引くな」と感じることも多いかもしれませんが、それは自然な経過であることがほとんどです。一般的な目安は以下の通りです[3][4]。
|
症状
|
平均的な期間
|
ポイント
|
|
発熱
|
2~3日
|
高い熱は最初の数日で下がることが多いです。
|
|
のどの痛み
|
2~3日
|
発熱と同時に現れ、比較的早く治まります。
|
|
鼻水・鼻づまり
|
7~10日
|
最初はサラサラ、だんだんドロドロになり、2週間ほど続くこともあります。
|
|
咳
|
2~3週間
|
最も長引きやすい症状です。他の症状が治まった後も、3~4週間続くことも珍しくありません。
|
ほとんどの症状は1週間から10日ほどでピークを越えて改善しますが、咳だけが残ることはよくあります。慌てずに経過を見守りましょう[2]。
お家での過ごし方:ママ・パパにできること
風邪に特効薬はありません。抗菌薬(抗生物質)はウイルスには効かないため、基本的には必要ありません[1]。一番のお薬は、お子さんの体をしっかり休ませて、回復する力をサポートしてあげることです。
休息と睡眠
無理に遊ばせず、静かに過ごせる環境を整えましょう。絵本を読んだり、DVDを見たりするのも良いですね。
水分補給
熱や鼻水で水分が失われがちです。麦茶、湯冷まし、経口補水液などを少しずつ、こまめに飲ませてあげましょう。
食事
食欲がなければ無理に食べさせる必要はありません。消化の良い、お子さんが食べたがるものを与えましょう。うどん、おかゆ、ゼリー、果物などがおすすめです。
快適な環境づくり
•湿度:空気が乾燥すると、のどや鼻の粘膜が刺激されます。加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして、湿度を50~60%に保ちましょう。
•服装:熱が上がりきって暑そうにしていたら、熱がこもらないように薄着にしてあげましょう。逆に寒がっている時は、一枚多く着せてあげてください。
お風呂はどうする?
熱が高くなく、元気があれば、さっとシャワーを浴びて体を清潔にするのは問題ありません。ただし、長湯は体力を消耗するので避けましょう。ぐったりしている時は、無理に入浴せず、体を拭いてあげるだけでも十分です。
こんな時は病院へ:受診の目安
基本的にはお家でのケアで回復しますが、次のようなサインが見られたら、かかりつけの小児科医に相談しましょう。
•生後3か月未満の赤ちゃんの発熱
•呼吸が苦しそう(肩で息をしている、胸がペコペコへこむ)
•水分がほとんど取れず、半日以上おしっこが出ていない
•ぐったりして、あやしても笑わない
•耳をしきりに気にする、痛がる(中耳炎の可能性があります)
•高い熱(38.5℃以上)が3日以上続く
•症状が2週間以上長引く、または一度良くなったのに再び悪化する
まとめ
お子さんの風邪は、成長の過程で誰もが通る道です。慌てず、でも注意深く見守り、お子さんの回復力を信じてサポートしてあげることが大切です。心配なことがあれば、一人で抱え込まず、いつでもかかりつけの先生に相談してくださいね。
参考文献
4.Troullos E, et al. Common Cold Symptoms in Children: Results of an Internet-Based Surveillance Program. J Med Internet Res. 2014;16(6):e144.

