コラムcolumn
病気の話
喘息性気管支炎 – 赤ちゃんの「ゼーゼー」、どうしたらいい?
「ゼーゼー」という呼吸音が聞こえたら
赤ちゃんが風邪をひいて、呼吸の時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がすると、とても心配になりますよね。この音は「喘鳴(ぜんめい)」と呼ばれ、気管支が狭くなっているサインです。特に2歳未満の赤ちゃんに多く見られます[1]。
なぜ赤ちゃんは「ゼーゼー」しやすいの?
赤ちゃんの気管支は、大人に比べてとても細いため、風邪などのウイルス感染で気管支の粘膜が腫れたり、痰が増えたりすると、すぐに空気の通り道が狭くなってしまいます。その結果、呼吸をする時に「ゼーゼー」という音が聞こえるのです。
原因のほとんどはRSウイルスです。RSウイルスは、乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占めると報告されています[2]。生後1年間で、100人の赤ちゃんのうち約11人がRSウイルスに感染すると言われています[3]。その他、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルスなども原因となります。
喘息とは違うの?
「喘息性気管支炎」という名前から「喘息なの?」と心配される保護者の方も多いのですが、多くの場合、成長とともに気管支が太くなり、自然に治まっていきます。
ただし、繰り返し喘鳴が起こる場合は、将来的に気管支喘息に移行する可能性もあるため、かかりつけの先生と相談しながら、経過を見ていくことが大切です[4]。
こんな症状に注意
•咳(特に夜間や早朝に強くなることが多い)
•喘鳴(息を吐く時のゼーゼー、ヒューヒュー)
•鼻水、鼻づまり
•発熱(あることもないこともあります)
•哺乳力の低下(ミルクや母乳を飲む量が減る)
•呼吸が速い、苦しそう
お家でのケア
加湿と水分補給
空気が乾燥すると、気管支が刺激されて咳がひどくなります。加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして、湿度を50~60%に保ちましょう。また、痰を出しやすくするために、こまめに水分を飲ませてあげてください。
楽な姿勢で休ませる
横になるより、少し上体を起こした方が呼吸が楽になることがあります。クッションや枕で調整してあげましょう。ただし首の座っていない月齢の小さいお子さんは、首が曲がって窒息することがあるので、無理な体勢にならないようにしてください。
タバコの煙は絶対にNG
受動喫煙は気管支を刺激し、症状を悪化させます。お子さんの周りでは絶対に喫煙しないでください。
病院での治療
喘息性気管支炎はウイルス感染が原因のため、抗菌薬(抗生物質)は効きません[1]。治療の中心は、症状を和らげる対症療法です。
•気管支拡張薬:気管支を広げて呼吸を楽にします(吸入または内服)。
•去痰薬:痰を出しやすくします。
•解熱薬:発熱がある場合に使います。
症状がひどい場合は、病院で吸入療法を行うこともあります。
こんな時はすぐに病院へ
以下のようなサインが見られたら、すぐに医療機関を受診してください。夜間や休日であれば、救急外来へ。
•呼吸が速い、苦しそう(1分間に60回以上)
•胸がペコペコへこむ(陥没呼吸)
•顔色が悪い、唇が紫色(チアノーゼ)
•ぐったりして元気がない
•ミルクや母乳が飲めない
•喘鳴がとても強い
予防はできるの?
手洗いと感染対策
RSウイルスは、秋から冬にかけて流行します。手洗いをこまめにし、風邪をひいている人との接触を避けることが大切です。
RSウイルス予防薬
2023年より、RSウイルスに対する予防薬(モノクローナル抗体)が使用できるようになりました。重症化リスクの高い赤ちゃん(早産児や心臓・肺に病気がある赤ちゃん)に対して使用されます。詳しくはかかりつけ医にご相談ください。
まとめ
赤ちゃんの「ゼーゼー」は、多くの場合、成長とともに自然に治まっていきます。でも、呼吸が苦しそうな時は、決して様子を見すぎず、早めに受診してください。お子さんの様子をよく観察し、心配な時はいつでもかかりつけ医に相談しましょう。
参考文献

