コラムcolumn
病気の話

インフルエンザ – 知っておきたい予防と対策

「朝は元気だったのに、急に高い熱が出て…」
インフルエンザは、普通の風邪とは違い、突然の高熱強い全身症状が特徴です。お子さんが「だるい」「頭が痛い」「体が痛い」と訴えたら、インフルエンザかもしれません。
インフルエンザウイルスには、主にA型B型があります。A型の方が症状が強く、世界的な大流行を起こすこともあります。日本では、通常11月から4月頃に流行しますが、近年は流行開始が早まる傾向があります[1]。

こんな症状が出たら要注意

突然の高熱(38℃以上、多くは39~40℃)
悪寒、寒気(ガタガタ震える)
全身のだるさ
頭痛
筋肉痛、関節痛(「体が痛い」と訴えることが多い)
咳、のどの痛み
鼻水、鼻づまり
普通の風邪は、鼻水や咳などの症状がゆっくり始まりますが、インフルエンザは全身症状が強く、急激に発症するのが特徴です。

病院に行くタイミングは?

インフルエンザの検査は、発症後すぐだと陽性に出ないことがあります。発症から24時間以降(最低でも12時間はあけたいです)に検査すると、より正確な結果が得られます。ただし、以下のような場合はすぐに受診してください。
生後3か月未満の赤ちゃん
呼吸が苦しそう
水分が取れず、おしっこが少ない
ぐったりして反応が悪い
けいれんを起こした
意識がはっきりしない、変なことを言う

抗インフルエンザ薬について

インフルエンザには、ウイルスの増殖を抑える薬があります。発症後48時間以内に使うと、症状の期間を短縮し、重症化を防ぐ効果があります[2]。

主な抗インフルエンザ薬

オセルタミビル(タミフル®):粉薬やカプセル、1日2回、5日間
ザナミビル(リレンザ®):吸入薬、1日2回、5日間
ラニナミビル(イナビル®):吸入薬、1回のみ
バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®):錠剤、1回のみ
小さいお子さんは吸入が難しいので、ほぼ全員がタミフルになります。世界的にも一番よく用いられるのはタミフルですし、当院でも治療の第一選択はタミフルにしています。
ただし、すべてのお子さんに必ず必要というわけではありません。多くは自然に治る病気でもあります。幼児や、基礎疾患があるお子さん、症状が強いお子さんには投与が推奨されます[2]。

異常行動に注意

抗インフルエンザ薬を使っても使わなくても、インフルエンザにかかると、まれに異常な言動や行動が見られることがあります。特に発熱から2日間は、お子さんから目を離さず、窓やベランダの施錠を確認するなど、転落事故を防ぐ対策をしてください[2]。

お家での過ごし方

休息と水分補給

一番大切なのは、しっかり休むことです。高熱で汗をかくので、こまめに水分を飲ませましょう。経口補水液、麦茶、スポーツドリンクなどがおすすめです。

解熱薬の使い方

熱が高くて辛そうな時は、解熱薬(アセトアミノフェン)を使っても構いません。ただし、アスピリンは絶対に使わないでください。小児がアスピリンを使うと、ライ症候群という重い合併症を起こすリスクがあります。

快適な環境づくり

湿度:50~60%に保つと、のどの痛みや咳が楽になります。
服装:熱が上がりきって暑そうにしていたら薄着に、寒がっていたら温かくしてあげましょう。

家族への感染を防ぐ

マスク:お子さんも家族もマスクを着用しましょう。
手洗い:こまめに石けんで手を洗いましょう。
別室で過ごす:できれば、感染していない家族とは別の部屋で過ごしましょう。
換気:定期的に窓を開けて換気しましょう。

登園・登校はいつから?

学校保健安全法により、インフルエンザと診断された場合の出席停止期間は、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」です[3]。
発症日を0日目として数えます。熱が下がっても、まだウイルスを排出している可能性があるため、しっかり休ませてあげましょう。

予防が一番大切

インフルエンザワクチン

日本小児科学会は、すべてのお子さんにインフルエンザワクチンの接種を推奨しています[2]。ワクチンは、発症を予防するだけでなく、かかっても重症化を防ぐ効果があります。2024/25シーズンの調査では、ワクチンの有効性は入院予防で73%、外来予防で57%と報告されています[4]。
接種時期:流行前の10月~12月
接種回数:13歳未満は2回、13歳以上は1回

日常生活での予防

手洗い:外から帰ったら、食事の前には必ず手を洗いましょう。
マスク:人混みに行く時はマスクを着用しましょう。
十分な睡眠と栄養:体の免疫力を保つことが大切です。
適度な湿度:乾燥するとウイルスが活発になります。

まとめ

インフルエンザは、予防と早めの対応が大切です。ワクチン接種、手洗い、マスクなどの基本的な予防策を続けることで、感染のリスクを減らすことができます。もしかかってしまっても、適切なケアで回復します。心配な時は、かかりつけ医に相談してください。
参考文献
4.Shinjoh M, et al. Influenza vaccination in Japanese children, 2024/25. Vaccine. 2025.