コラムcolumn
病気の話
クループ症候群 – 「犬が吠えるような咳」が聞こえたら
夜中に突然「ケンケン」という咳が…
お子さんが夜中に突然、犬が吠えるような「ケンケン」「コンコン」という特徴的な咳をし始めたら、それは「クループ症候群」かもしれません。息を吸う時に「ヒューヒュー」という音がしたり、声がかすれたりすることもあります。
クループは、主に生後3か月から5歳頃までのお子さんに見られる病気で、のど(喉頭)が急に腫れて、空気の通り道が狭くなることで起こります[1]。
原因はウイルス
クループの原因のほとんどはウイルス感染です。特にパラインフルエンザウイルスが最も多く、その他にRSウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスなども原因となります[1]。
風邪の症状から始まり、のどの奥(声門下や喉頭)が腫れることで、特徴的な症状が現れます。
こんな症状に注意
•犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう):犬が吠えるような「ケンケン」という特徴的な咳
•吸気性喘鳴:息を吸う時の「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音
•声がれ:声がかすれたり、出にくくなったりします
•鼻水、鼻づまりなどの風邪症状
•発熱(あることもないこともあります)
症状は夜間に悪化しやすいのが特徴です。昼間は元気だったのに、夜になると急に症状が強くなることがあります。
軽症と重症の見分け方
軽症
咳と軽い喘鳴はあるけれど、普段通りに遊べたり、食事や水分が取れたりする状態です。
重症
以下のような症状が見られたら、重症のサインです。すぐに医療機関を受診してください。
•呼吸が速い、苦しそう
•胸やのど元がペコペコへこむ(陥没呼吸)
•顔色が悪い、唇が紫色(チアノーゼ)
•ぐったりしている
•水分が取れない
•よだれが多く、飲み込めない
お家でのケア
加湿と冷たい空気
湿った空気や冷たい空気を吸うと、症状が和らぐことがあります。
•加湿器を使う
•浴室で蒸気を吸わせる(お風呂にお湯を張って、蒸気の中で過ごす)
•冷たい夜気を吸わせる(窓を開けて、外の空気を吸わせる)
楽な姿勢で休ませる
横になるより、上体を少し起こした方が呼吸が楽になることがあります。抱っこしたり、クッションで支えたりしてあげましょう。
泣かせない
泣くと症状が悪化することがあります。できるだけお子さんを安心させ、落ち着かせてあげましょう。
水分補給
のどが腫れて飲み込みにくいかもしれませんが、少しずつでも水分を取らせましょう。
病院での治療
クループはウイルス感染が原因のため、抗菌薬(抗生物質)は効きません[1]。治療は症状を和らげることが中心です。
ステロイド薬
気道の腫れを抑える効果があります。内服または吸入で使用します。症状を早く改善し、重症化を防ぐ効果があります。
アドレナリン吸入
気道の腫れを速やかに改善しますが、効果は一時的です。重症の場合に使用されます。
こんな時はすぐに病院へ
早めの受診が必要
•犬吠様咳嗽が出た
•息を吸う時にヒューヒュー音がする
•声がれがひどい
すぐに受診が必要(救急外来へ)
•呼吸が速い、苦しそう
•胸がペコペコへこむ(陥没呼吸)
•顔色が悪い、唇が紫色(チアノーゼ)
•ぐったりしている
•水分が取れない
•よだれが多く、飲み込めない
クループは、急激に症状が悪化することがあるため、注意深く観察することが大切です。
予後は良好
ほとんどの場合、適切な治療により2~3日で症状は軽快します。後遺症が残ることはほとんどありません。
ただし、まれに重症化し、気道が完全に塞がれてしまうこともあるため、呼吸の様子をよく観察してください。
予防
感染予防
•手洗い:こまめに石けんで手を洗いましょう。
•マスク:風邪をひいている人との接触を避けましょう。
•人混みを避ける:特に秋から冬の流行期は注意しましょう。
まとめ
クループの特徴的な咳を聞くと、とても心配になりますが、多くの場合は軽症で、お家でのケアと病院での治療で回復します。ただし、呼吸が苦しそうな時は、決して様子を見すぎず、すぐに受診してください。夜間でも、迷わず救急外来を受診しましょう。
参考文献

