コラムcolumn
病気の話
乳児湿疹 – 赤ちゃんの肌トラブル、どうケアする?
赤ちゃんの顔に湿疹が…これって何?
生まれて間もない赤ちゃんの顔や頭に、赤いぶつぶつや黄色いかさぶたのようなものができると、「何か悪い病気?」と心配になりますよね。でも、ご安心ください。これは「乳児湿疹」と呼ばれる、赤ちゃんによくある皮膚症状です。
日本の調査では、乳児の30~31%に湿疹が見られると報告されており[1]、決して珍しいことではありません。多くの場合、適切なスキンケアで自然に治っていきます。
なぜ赤ちゃんは湿疹ができやすいの?
赤ちゃんの肌はとてもデリケートで、まだバリア機能が未熟です。そのため、ちょっとした刺激でも湿疹ができやすいのです。
生後2~3か月頃まで:皮脂の過剰分泌
お母さんのホルモンの影響で、赤ちゃんの皮脂の分泌が盛んになります。皮脂が毛穴に詰まることで、湿疹ができやすくなります。特に頭、顔、首まわりなどに出やすいです。
生後3か月以降:皮膚の乾燥
皮脂の分泌が減少し、今度は皮膚が乾燥しやすくなります。乾燥により皮膚のバリア機能が低下し、湿疹ができやすくなります。
その他の要因
よだれ、汗、衣類やおむつの摩擦、石けんやシャンプーの刺激なども原因となります。
乳児湿疹の種類
脂漏性湿疹(生後2~3か月頃まで)
•頭や顔に黄色いかさぶた状のものが付く
•眉毛の周りに脂っぽいうろこ状のものが付く
•赤いぶつぶつができる
乾燥性湿疹(生後3か月以降)
•頬や体に赤いカサカサした湿疹ができる
•皮膚がカサカサして粉をふいたようになる
アトピー性皮膚炎との違いは?
「これってアトピー?」と心配される保護者の方も多いのですが、乳児湿疹の多くは、適切なスキンケアで生後数か月で自然に治ります。
一方、湿疹が2か月以上続く、かゆみが強い、全身に広がる場合は、アトピー性皮膚炎の可能性があります[2]。定期的にかかりつけ医に診察してもらい、経過を見ていくことが大切です。
お家でのスキンケア:「清潔」と「保湿」が基本
乳児湿疹のケアで最も大切なのは、清潔に保つこととしっかり保湿することです。
清潔にする
お風呂での洗い方
1.石けんをよく泡立てる:泡立てネットを使うと便利です。
2.やさしく洗う:ガーゼやタオルでゴシゴシこすらず、手のひらや指でやさしく洗いましょう。
3.しっかりすすぐ:石けんが残らないように、ぬるま湯でしっかり流します。
4.黄色いかさぶたの取り方:無理に剥がさず、お風呂の前にベビーオイルやオリーブオイルを塗ってふやかしてから、やさしく洗い流しましょう。
保湿する
保湿のタイミング
お風呂上がり5分以内が理想です。皮膚が乾燥する前に、すぐに保湿剤を塗りましょう。
保湿剤の塗り方
•たっぷり使う:ケチらず、たっぷり塗ることが大切です。塗った後、皮膚がテカテカ光るくらいが目安です。
•1日2~3回:お風呂上がりだけでなく、朝や日中も塗りましょう。
•やさしく塗る:こすらず、手のひらで押さえるようにやさしく塗ります。
病院での治療が必要な時
赤みやかゆみが強い場合、スキンケアだけでは改善しない場合は、病院で外用薬を処方してもらいましょう。
ステロイド外用薬
炎症を抑える効果があります。「ステロイドは怖い」と思われる方もいますが、医師の指示に従って適切に使用すれば、安全で効果的です。症状が改善したら、徐々に減らしていきます。
保湿剤
皮膚のバリア機能を保つために、症状が良くなっても保湿剤は続けましょう。
日常生活での注意点
•爪を短く切る:ひっかき傷を防ぎます。
•汗をかいたらすぐに拭く:濡れたガーゼでやさしく拭き、保湿剤を塗り直しましょう。
•柔らかい衣類を選ぶ:綿100%など、肌に優しい素材がおすすめです。
•洗濯洗剤:刺激の少ないものを選び、よくすすぎましょう。
離乳食との関係
「湿疹が出たから、○○はやめた方がいいかな…」と、自己判断で食べ物を除去するのは避けてください。必要以上の除去は、かえって食物アレルギーの発症リスクを高める可能性があります[3]。
離乳食開始前に湿疹がある場合は、まず皮膚症状の改善を行い、離乳食の開始についてかかりつけ医に相談しましょう。
こんな時は病院へ
•湿疹が2か月以上続く
•かゆみが強く、赤ちゃんの機嫌が悪い
•湿疹がじくじくして、黄色い汁が出る(細菌感染の可能性)
•スキンケアをしても改善しない
•湿疹が全身に広がっている
•体重が増えない
まとめ
乳児湿疹は、多くの赤ちゃんが経験する一般的な皮膚症状です。「清潔」と「保湿」を続けることで、ほとんどの場合は改善します。焦らず、毎日のスキンケアを続けてあげてください。心配な時は、いつでもかかりつけ医に相談しましょう。
参考文献
1.Sugiura H, et al. Prevalence of infantile and early childhood eczema in a Japanese population. Pediatr Dermatol. 1997;14(1):17-21.

