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こどもの鼻血、「もしかして白血病?」と不安なときに

こどもの鼻血で受診される保護者の方から、「もしかして白血病ではないでしょうか」とご相談を受けることがあります。インターネットで調べると重い病気の名前が並んでいて、不安になられるお気持ちはよく分かります。

結論から先にお伝えします。こどもの鼻血のほとんどは、鼻の入り口にある血管が傷ついて起こるもので、白血病のような血液の病気が原因であることは非常にまれです。

なぜそう言い切れるのかという「体の仕組み」を解説し、そのうえで、正しい対処法と「念のため受診したほうがよいサイン」を整理してお伝えします。

 

こどもの鼻血の9割以上は「鼻の入り口」から

こどもの鼻血は、そのほとんどが「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる場所からの出血です(※1)。
・場所:鼻の穴から1cmほど入った、左右の鼻を仕切る壁(鼻中隔)の前のほう。
・特徴:外から触ると骨がなく、柔らかい「小鼻」の裏側にあたります。

キーゼルバッハは指の届く近い場所にあります。

キーゼルバッハ部位は指の届く近い場所にあります。

 

ここで鼻血が起こりやすいのには、はっきりとした理由があります。キーゼルバッハ部位は、太い動脈から枝分かれした血管が網の目のように集まっている「血管の交差点(吻合部:ふんごうぶ)」です。さらに、この部分の粘膜は非常に薄く、すぐ下に毛細血管がぎっしりと走っています(※1)。
指先がちょうど届く位置にあるため、少しの刺激で血管が破れやすい構造なのです。こどもの場合は、さらに以下の要因が重なります。

  1. 鼻のトラブル:アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎で粘膜が腫れたり、かゆくて無意識にいじってしまう。
  2. 粘膜の未発達:もともと粘膜が薄いうえに血管が拡張しやすく、乾燥した季節やお風呂上がりの血行促進でも容易に出血する。

つまり、頻繁に鼻血が出るのは「血が止まりにくい体質」になったからではなく、「もともと出血しやすい場所(血管の交差点)を、繰り返しいじってしまう」ことが大半の理由です。

 

白血病と鼻血の関係を正しく整理する

白血病で鼻血が出ることはありますが、それは「単独の症状で見つかることはまれ」というのが正確な答えです(※3)。

血液の病気で出血が起こる仕組み

白血病は、骨髄で血液をつくる過程に異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が無制限に増える病気です。血を止める役割を持つ「血小板(けっしょうばん)」が作られにくくなるため、確かに出血しやすくなります(※2)。

しかし、小児白血病の診断において重要なのは、「不特定の症状が組み合わさって、長く続くこと」です。白血病を疑う契機となるのは、以下のような症状の「セット」です(※3)。

・全身の出血症状:鼻血だけでなく、歯ぐきからの出血や、ぶつけた覚えのないアザ、皮膚にプツプツした小さな赤い点(点状出血)が全身に出る。
・全身症状:長引く発熱、強い倦怠感(ぐったりしている)、顔色が悪い(貧血)。
・その他のサイン:骨や関節の痛み、リンパ節の腫れ、おなかの張り(肝臓や脾臓の腫れ)。

白血病による鼻血は、「それまで元気だった子に、鼻血だけがときどき出る」という現れ方はしません。「鼻血だけがポツンと出てすぐ止まる」というエピソードであれば、白血病である可能性は限りなく低いと考えてよいタイプの症状です。

まず家でやっていただきたい「正しい止血法」

鼻血が出たときは、慌てず以下のポイントを実践してください。正しい方法で圧迫すれば、15分以内にはほぼ止まります(※1)。

  1. 正しい姿勢(うつむき加減で座る):イスや保護者のひざに座らせ、少しうつむかせます(※1, ※4)。
    ※注意:上を向かせると血液がのどに流れ込み、気分が悪くなったり吐いたりする原因になります。
  2. 正しい場所をつまむ(小鼻を圧迫):鼻の中にティッシュを詰め込まず、親指と人差し指で「小鼻全体」をしっかりつまみます(※1, ※4)。
    ポイント:鼻の上のほう(骨がある硬い場所)ではなく、その下の「柔らかい部分」を、鼻の穴をふさぐように強く圧迫します。
  3. 10-15分間、絶対に離さない:そのまま時計を見て、約10-15分間圧迫し続けます(※1, ※4)。これは実際に計ってみると、かなり長い時間なのが分かります。

※重要:「止まったかな?」と途中で何度も指を離して確認しないでください。せっかくできかけた血の蓋(血栓)が剥がれてしまい、再出血の原因になります。

 

こんなときは受診をご検討ください

家庭での対応で安全に経過を見られる鼻血と、念のため受診したほうがよい鼻血を整理します。

【急いで受診が必要な場合】
・外傷:頭や顔を強くぶつけたあとの鼻血(特に、血液が薄く透明な液が混じっているように見える場合は、髄液という脳のまわりの液が漏れている可能性があり、要注意です)(※1)。
・止まらない:正しい方法で15分以上圧迫しても止まらない(※1, ※4)。
・全身状態:顔色が悪い、ぐったりしている、冷や汗をかいている(※1)。

 

【診療時間内に一度ご相談いただきたい場合】
・頻度:鼻血を週に何度も繰り返すとき(※1)。
・他の出血症状:鼻血と一緒に、歯ぐきからの出血や、ぶつけた覚えのないアザ、皮膚の点状出血が見られるとき(※5)。
・全身の不調:鼻血だけでなく、長引く発熱、強い倦怠感、脚や関節の痛み、リンパ節の腫れなどが続いているとき(※3)。

 

まとめ – 鼻血だけで白血病を心配しなくて大丈夫です

こどもの鼻血は、その9割以上が鼻の入り口の血管(キーゼルバッハ部位)から起こるもので(※1)、もともと出血しやすい場所をいじってしまうことが繰り返しの一番の原因です。
白血病で鼻血が出ることはありますが、それは血小板の減少を背景に、発熱や倦怠感など他の症状と組み合わさって現れるのが通常です。「ふだん元気な子に、鼻血だけがときどき出る」という形では現れません。

ご家庭では、落ち着いて「小鼻をつまんで15分圧迫」を試してみてください。もし頻繁に繰り返したり、他の場所の出血や長引く発熱を伴う場合は、遠慮なくご相談ください。当院でも、必要なときには血液検査等でしっかりとお調べし、不安な点にしっかり向き合いたいと思います。

参考文献

※1 日本小児慢性看護学会 在宅ケア委員会. 鼻出血(電話相談対応マニュアル). https://www.cn-pen.org/homecare/doc/file06.pdf

※2 国立がん研究センター がん情報サービス. 白血病〈小児〉. 2022年6月6日更新. https://ganjoho.jp/public/cancer/leukemia/print.html

※3 小児慢性特定疾病情報センター. 前駆B細胞急性リンパ性白血病 概要. https://www.shouman.jp/disease/details/01_01_001/

※4 公益社団法人 日本小児科学会. こどもの救急(ONLINE-QQ) 鼻血. http://kodomo-qq.jp/index.php?pname=hanaji

※5 小児慢性特定疾病情報センター. T細胞急性リンパ性白血病 概要. https://www.shouman.jp/disease/details/01_01_003/