果物で口がイガイガするとき
花粉症との関係と、治るのかどうか
この時期は、学校生活管理指導表を書く機会が増えます。そのたびに、口の中の違和感や口腔アレルギーについて、よく相談を受けます。
口腔アレルギーは、リンゴやキウイなどの果物を食べて口の中がイガイガする反応で、多くは口の中だけで収まります。花粉症のある子に出やすい一方、花粉症のあとに出るとは限りません。牛乳や卵、乳幼児の口の周りの赤みは、別の話です。
症状が出る生の食べ物だけを避けて、口の外に症状が広がるときは受診してください。
口腔アレルギーは、果物を食べて口の中に出るアレルギー反応です
医学的には「花粉-食物アレルギー症候群」といいます。生の果物や野菜を食べたとき、口やのどのかゆみ、ピリピリ感、唇やまぶたの腫れが出ます(※1、※2)。東京の13歳の出生コホート(出生時から追う研究)で口腔アレルギーのあった59人では、口やのどの不快感が83.1%、唇やまぶたの腫れが15.3%で、アナフィラキシーは0人でした(※1)。
埼玉の学校アンケートでは、口腔アレルギーの子の約30%に皮膚や呼吸の症状があり、アナフィラキシーに当たるのは156人中9人(5.8%)でした。症状に気づいている人ほど答えやすい偏りがあったと、著者は書いています(※3)。
花粉症で花粉に反応している免疫が、よく似た形のたんぱくを持つ生の果物にも反応します。シラカバ花粉と似たたんぱくは、リンゴなどのバラ科の果物にあります(※4)。
日本の子で多いのは、リンゴよりキウイ・メロン・パイナップルです
全国の小中学生約7万7千人にリンゴ・モモ・サクランボ・大豆で口の症状が出るかを聞くと、小学1・2年生で0.99%、中学2・3年生で2.75%でした(※4)。果物と野菜全般に広げると、近江八幡市の小中学生4,991人で12.4%で、食べ物別ではキウイ5.1%、メロン・スイカ4.9%、パイナップル2.4%、バラ科の果物2.1%でした。
このうち「食べるのをやめる必要がある」とされたのは、全体のキウイ1.0%、メロン・スイカ0.7%、パイナップル0.2%です(※5)。
花粉との組み合わせでは、スギは少し違います。東京の13歳で、口腔アレルギーのある子と花粉症だけの子を比べると、スギへの感作(花粉に免疫が反応する状態)は93.2%と96.5%で差がなく、差が出たのはシラカバで59.3%と29.1%でした(※1)。
キウイやパイナップルは、含まれる酵素で口が刺激されることもあり、アンケートの「口の症状」にはアレルギー以外が混ざると、研究者自身が書いています(※1、※5)。

出始めるのは小学生ごろから。花粉症のある子で増えます
埼玉の調査では、鼻炎が先にあった子で、果物や野菜の症状の始まりは平均7.4歳でした(※3)。花粉に感作されている日本の受診児600人では、就学前8.5%、小学生20%、中高生36.3%と年齢とともに増えます(※6)。東京の出生コホートでは、13歳で11.7%、17歳で11.2%でした(※1、※7)。
花粉症のあとに出るとは限りません
埼玉の小中学生2,272人のうち、果物や野菜で症状が出たのは388人でした。アレルギー性鼻炎(アンケートの回答)が先にあった子が156人(約4割)、鼻炎のない子が130人、症状のほうが先だった子が40人、順番が分からない子が62人です。
著者は、鼻炎のない子と症状が先の子のうち最大170人が、花粉と関係のない型の食物アレルギーだった可能性を指摘しています。ただし血液検査はしていないので、確定ではありません(※3)。
大阪の6病院で、果物や野菜で症状が出て受診した0〜15歳97人を調べると、シラカバ花粉の2つの成分(Bet v 1と、多くの花粉に共通するBet v 2)のどちらにも感作がなかった子が23人(24%)いました。原因はキウイ、バナナ、メロンが多い型です(※8)。
中部日本の4市の調査(3,365人)でも、果物や野菜を食べたあとの口の症状は、花粉症のある子で24.4%、ない子で10.2%でした(※2)。また、花粉症の症状がなくても、花粉に感作されている子はいます。東京の13歳506人では、花粉症があると答えていないのに、血液検査で花粉に感作されていた子が少なくとも82人いました(※1)。

乳幼児の口の周りの赤みは、口腔アレルギーとは別の話です
口腔アレルギーは花粉に感作された子に出る反応で、乳幼児では少ないとされています。大阪の調査では、0〜3歳の13人中11人が、先ほどの2つの成分に感作のない型で、著者は4歳を超える子でまず口腔アレルギーを考えるとしています(※8)。
口の周りの皮膚が赤いだけなら、食べ物が皮膚に触れた刺激のこともあります。オーストラリア・ニュージーランドの2026年のガイドラインは、食べている最中かすぐあとに、口の周りだけに軽い赤みや蕁麻疹が出て、ほかの症状がないときは「アレルギー反応のサインでないことがある」として、同じ食べ物をもう一度試すよう勧めています(専門家の合意)。もう一度試して症状がより広く出たら、再び試す前に専門医に相談します(※9)。
口の周りだけでなく体にも蕁麻疹が出る、唇や顔が腫れる、嘔吐を伴うときは、受診してください。受診した子(多くはアトピー性皮膚炎)の研究では、牛乳や卵で口の周りに蕁麻疹が出た子に、免疫の反応が強く疑われています(※10)。
牛乳と卵は、花粉が原因の口腔アレルギーには入りません
口腔アレルギーに数えられるのは、果物や野菜、豆類で出た症状です。卵白は、通常の卵アレルギーの主な原因です。卵黄にも反応する子がいます。相模原の197人の卵黄の負荷試験(卵白が少し混ざっています)では、179人(90.9%)が食べられ、18人(9.1%)に症状が出ました(※11)。
鳥の羽根に感作された大人が卵黄に反応する「鳥-卵症候群」も知られていて、花粉とは関係がありません(※12)。牛乳や卵で口の周りが繰り返し赤くなるときは、食物アレルギーかどうかを診察で確かめます。
牛乳アレルギーと卵アレルギーは、多くが成長とともに治ります。生まれた13,019人を追ったイスラエルの研究では、IgE型の牛乳アレルギー54人のうち、17歳までに39人(72.2%)が自然に治りました(※13、※14)。日本の専門病院の226人では、加熱した全卵を半分、症状なく食べられた割合が3歳30%、5歳59%、6歳73%でした(※15)。
治る割合を直接測った研究はなく、近い研究では続く子が多くなっています
口腔アレルギーだけを追って、症状が消えた割合を測った研究は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。ただ、近い研究では、花粉症は続く子が多く、口腔アレルギーのある子の割合はむしろ増えていました。
花粉症で受診したイタリアの子ども401人を約6年追うと、93.3%は花粉症が続き、口腔アレルギーは23.4%から37.7%に増えていました(※16)。スウェーデンの出生コホートでは、4歳または8歳で花粉症のあった子の約75%が24歳まで続いています(口腔アレルギーではなく花粉症の経過です。※17)。
花粉症が続くかぎり、口腔アレルギーも続きやすいと考えるのが自然です。ただし、これは研究が直接示したものではありません。
花粉症の免疫療法(アレルゲンを少しずつ体に入れて慣らす治療)で口腔アレルギーが良くなるかは、証拠が弱い状態です。シラカバ花粉の免疫療法の系統的レビュー(10研究、475人)は「確かな結論を引くには証拠が足りない」とし(※18)、国際的な専門家の合意は、効果は不明で口腔アレルギーを主な目的に行う治療ではないと述べ(※19)、英国のガイドラインも有効な治療ではないとしています(※20)。
リンゴの口腔アレルギーに対するシラカバ花粉の注射では、治療しなかった26人の0%に対して49人の84%で症状が軽くなったという、くじ引きで分けていない研究がある一方(※21)、二重盲検(治療か偽薬か本人にも医師にも分からない方法)の試験(74人が参加し、評価できたのは40人)では、リンゴの症状は偽薬と差がありませんでした(※22)。この2つは、対象の年齢が抄録に書かれていません。
日本では、神奈川県立こども医療センターの研究で、19人にシラカバ花粉の注射(一部はほかの花粉の注射も同時)をして15人(79%)で症状が軽くなったと報告されていますが、比べる群はありません。著者は、口腔アレルギーはふつう自然には治らないという考えから、根本的な治療として期待できるとしています(この研究で自然経過は測っていません。※23)。
スギの舌下免疫療法で口腔アレルギーを調べた研究は、症例報告を除いて見つかりませんでした。
リンゴを毎日増やしながら食べ続ける方法は、40人の試験で、続けた27人中17人が丸ごと1個を食べられるようになり(食べない群の13人では0人)、中断すると症状が戻りました。対象の年齢は抄録に書かれていません(※24)。子どもで調べた研究は見つかっていないので、試すかどうかは主治医と相談してください。

家庭と学校での付き合い方
症状が出る生の食べ物は避け、症状が出ない関連する果物や野菜まで避ける必要はない、というのが国際的な専門家の合意です(※19)。
東京の13歳で口腔アレルギーのあった59人のうち、加熱や加工で症状が消えたのは35.6%(21人)、消えないのは5.1%(3人)でした。残る59.3%は「わからない」と答えています。答えのあった24人では、21人が消えたことになります。加熱で症状が減ることを知らない子や、加熱した食べ物を食べる機会が少ない子が多いと、著者は考察しています(※1)。
症状が軽い食べ物なら、加熱したものを試せることがあります。どの食べ物をどう試すかは、症状の程度を見て受診時に相談しましょう。
学校生活管理指導表の食物アレルギー病型には「口腔アレルギー症候群」の欄があります。手引きには、多くは局所の症状だけで回復に向かい、花粉に対するアレルギーに伴って発症することがよくある、と書かれています(※25)。
受診の目安
口の中がイガイガするだけなら、多くは口の中で収まります。口の外に広がる症状(首から下や顔全体の蕁麻疹、繰り返す嘔吐、強い腹痛)、息苦しさ、咳込み、声のかすれ、ぐったりした様子があれば、すぐに受診してください。息苦しさが強いときは救急車を呼んでください。ナッツやピーナッツで口がかゆくなるときは、別の仕組みのアレルギーが隠れていることがあるので、相談してください(※26)。
まとめ
口腔アレルギーは、果物を食べて口の中に出る反応で、小学生ごろから花粉症のある子に増えます。ただ、花粉症のあとに出るとは限りません。牛乳や卵、乳幼児の口の周りの赤みは、別の話です。
治る割合を直接測った研究は見つかっていませんが、近い研究では続く子が多く、花粉症が続くかぎり続きやすいと考えられます。症状が出る食べ物を知っておけば、付き合い方は決められます。口の外に症状が広がるときは受診してください。迷ったらご相談ください。
参考資料
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※3 Koga T, et al. Surveillance of pollen-food allergy syndrome in elementary and junior high school children in Saitama, Japan. Asia Pac Allergy. 2022;12(1):e3. PMID 35174054
※4 Sasaki M, et al. The prevalence of oral symptoms caused by Rosaceae fruits and soybean consumption in children; a Japanese population-based survey. Allergol Int. 2020;69:610-5. PMID 32444307
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