コラムcolumn
院長より

開院6か月の「LINE相談」を振り返りました

なかのこどもクリニック院長の中野優です。
当院もおかげさまで開院から半年を迎えました。開院当初から続けているLINE相談について、半年分のデータを集計し、運用の実際を共有します。
これから同様のサービスをご検討されている先生方のご参考になれば幸いです。

当院のLINE相談はかかりつけや受診歴の有無にかかわらず、どなたでも相談可能としています。もちろん無料です。類似の運用をしている先行事例が見当たらなかったため、ほぼ手探りで始め、改善を重ねてきました。
今回まとめたのは「かかりつけ登録されていない方」からの相談に限ったデータです(※かかりつけの方からは、この2倍程度のLINE相談を頂いています)また、時期は小児科クリニックの閑散期(4〜10月)に相当します。


集計の前提

  • 対象期間:開院(2025年4月7日)から6か月

  • 対象データ:かかりつけ登録「なし」の方からの相談のみ

  • セッション定義:同一相手とのやりとりで12時間以上空けば新しいセッション

  • プライバシー:個人が特定されない形でのみ集計・公開


① 相談件数の推移(6か月)

  • 期間中の相談セッション数:516件1日平均 約3.0件

所感:平日の波はあるものの、緩やかに相談が増えております。外来の混雑や流行状況に応じて、“オンライン相談の受け皿”として機能している印象です。


② 時間帯×曜日の傾向(受信メッセージ)

  • 最多時間帯:19時台(夕方〜就寝前の時間帯に集中)

  • 最多曜日:木曜日(当院は木曜午後が休診です)

所感保育園・学校・仕事の後にご家庭で症状が目立つ/相談できる時間が確保できる、という生活動線が反映されています。夕方〜夜の応答体制翌朝のフォロー動線を整えることが、患者さんの安心に直結します。


③ タグ別(初回メッセージの内容分類)

初回メッセージのキーワードから簡易カテゴリに分類しました(最初にヒットしたものを採用)。

  • 受診の相談:263件

  • その他:168件(ワクチンの相談や予約方法の相談など)

  • 報告:53件(検査結果・フォローアップ・お礼など)

  • 緊急性:28件(ぐったり・けいれん・呼吸苦など)

  • 発達の相談:4件

所感:半数超が「受診した方がよいか」の相談でした。受診目安や家庭での観察ポイントを定型文+個別補足でお返しする運用は、外来の適正化・トリアージに有効と感じます。
緊急性のある相談は少数ですが、即時の切り返し(救急受診誘導を含む)が求められるため、検知フローの強化が重要です。
発達の相談とは非常に親和性が高いと感じました。保護者さんも文書にすることである程度まとまりを持ってお話できること、こちらも聞き漏らしがないこと、実際には紹介状作成などが必要になることから、事前に話を詰めておけるのは有用と感じました。


④ 応答時間と、やりとりの回数

  • 返信ありセッション:485件

  • 初回応答時間(最初の受信→最初の返信)
    平均 29.8分/中央値 10.9分

  • やりとりの回数(送受信の“交代”回数)
    平均 4.72(中央値 4

    所感:中央値が約11分と比較的早く、初動の安心提供には貢献できています。一方でP90(90%tile)が約72分であり、ピーク時間帯の遅延夜間帯の運用がボトルネックになりやすいと考えます。
    とはいえこの多くは診療時間内のメッセージであり、ここに対応すると診察にお越しくださった患者さんをお待たせしてしまいます。
    現在は診察時間内の相談をお受けしないよう明記しました。
    実はLINEの確認はリアルタイムでしていることが多くて、応答までの時間というのは、文献を当たったり、書物を見たり、適切な画像を作成したりする時間になっています。
    意外と悩ましい相談も多くUpToDateやMediSearch、医中誌など各種医学サイトを使って内容のブラッシュアップをしています。


見えてきた改善ポイント

  1. 夕方〜夜の体制:19時台の集中に合わせて既読・一次返信を早める運用(既読→定型一次返信→必要に応じて個別対応)。

  2. 受診目安の定型化:多い「受診の相談」に対し、年齢・症状別の受診目安カードを整備(誤解を招きやすい部分は個別補足)。

  3. 緊急検知の強化:キーワード(ぐったり、けいれん、呼吸苦等)を自動ハイライトし、救急誘導テンプレートへ即座に切替。ただしこれを自動化すると、不要な救急受診が増えて基幹病院の先生にご迷惑をおかけすることになりかねません。

  4. 翌朝フォローの導線:夜間帯の相談に対し、「翌朝の再確認」と「来院予約への誘導」をルーチン化。


まとめ

  • 開放型のLINE相談でも、運用の工夫と定形化で初動は中央値10分台を維持可能。

  • 相談の中心は「受診した方がよいか」であり、明確な受診目安の提示が満足度と医療資源の適正化につながる。

  • 生活動線に沿った時間設計(夕方〜夜)と翌朝フォローの両輪で、安心と受診行動のバランスが取りやすい。


やってみた印象としては、やはり大変でした。
しかし小さい赤ちゃんがいるご家庭や、経済的に弱くてお仕事を休めないご家庭など、受診が困難な層へも一定の貢献ができたかなという印象です。
患者さんに安心してもらうのが目的ですから、実際には受診されたであろう患者さんが受診されなくなるというケースが一番多いです。
そのため、この活動によってクリニックの収益は低下します。逆にこの活動を理由に少し遠方から来られる患者さんもいらっしゃいます。
今後この方式に賛同いただける先生がいらっしゃれば、複数クリニックで持ち回りにしたりできるかもしれません(ただしここは電子カルテの閲覧など課題はあります)。
今後も定期的にデータをまとめながら、ご興味のある先生に向けて発信していきます。

最後になりますが、当院での不十分なLINE対応も後方で受けてくださる基幹病院があって成り立っております。
安城市の夜を守ってくださっている安城更生病院様、八千代病院様に心より御礼申し上げます。