コラムcolumn
薬・おうちケア

粉薬とシロップ、どっちが正解?──正解は「飲める方」です

― 子どもの薬を、家で無理なく飲ませるために ―

お子さんに薬が出たとき、「粉薬とシロップ剤、どちらが飲ませやすいですか?」「吐いたらもう一度飲ませるべきですか?」「前にもらった薬は使っていいですか?」と迷うことがあります。

内服で大切なのは、親子で苦労しながら“完璧に飲ませる”ことではありません。処方された薬を、できるだけ安全に、必要な量だけ、続けやすい形で飲めるようにすることです。

まず結論:薬は「飲める形」で選んでよい

粉薬にもシロップ剤にも、それぞれ良い点があります。

粉薬は、体重に合わせて量を調整しやすく、1回分ずつ分包されるため持ち運びやすい薬です。一方で、苦味や粉っぽさが舌に残り、嫌がるお子さんもいます。

シロップ剤は、液体なので乳児にもスポイトや内服用シリンジで飲ませやすいことがあります。一方で、毎回正確に量を測る必要があり、保存がききにくいという注意点があります。

「粉薬の方がよい」「シロップ剤の方がよい」と一律に決める必要はありません。薬の種類、お子さんの月齢、味の好み、保護者の飲ませやすさに合わせて選ぶことが大切です。

1歳未満では、シロップ剤が飲ませやすいこともあります

「粉薬の方が保存しやすいし、飲ませやすい」と思われることがあります。たしかに、年長のお子さんでは粉薬の方が量も少なく、服薬ゼリーや少量の食品に混ぜやすいことがあります。

ただし、1歳未満、とくに授乳が中心の時期は少し事情が違います。

赤ちゃんは、生まれた直後から母乳やミルクを飲むための「哺乳反射」を持っています。哺乳反射とは、乳首を口に取り込み、吸って飲み込むための反射的な動きです。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、哺乳反射は生まれた時から備わる不随意運動で、大脳の発達とともに減少し、生後5〜7か月頃に消失すると説明されています(※1)。

月齢が低いうちは、乳首を含めて吸い込み、飲み込む一連の動きが反射的にできる時期です。実際の小児診療でも、授乳中心の乳児では、シロップ剤や水に溶いた粉薬をスポイト・内服用シリンジで頬の内側に少量ずつ流す方法がスムーズにいくことが多くあります。

一方で、粉薬をそのまま口に入れると、苦味、におい、ざらつきで嫌がることがあります。粉薬を使う場合も、少量の水でペースト状にして、舌の上に広くのせず、頬の内側や上あごに少量置くのがコツです。

離乳が進むと、薬の味やにおいへの反応がはっきりしてきます。生後5〜6か月頃からは離乳食を飲み込むこと、舌ざわりや味に慣れることが目的になり、口唇を閉じて食べ物を取り込み、舌で前から後ろへ送り込む動きが発達していきます(※1)。月齢が上がるほど、「口に入れたら反射で飲む」だけではなくなり、嫌がる、吐き出す、口を開けないという行動も出やすくなります。

粉薬の飲ませ方

乳児は「少量の水でペースト」が基本です

赤ちゃんや小さなお子さんに粉薬を飲ませるときは、1回分の粉薬に少量の水や湯ざましを加え、練ってペースト状にします。清潔な指やスプーンで、頬の内側や上あごにそっとつけ、その後に水、湯ざまし、母乳、ミルクなどを少量飲ませます。

PMDAも、散剤は服用直前に少量の水や湯ざましを加えて混ぜ、スプーンやスポイトで口の中に入れ、その後に水や湯ざましなどを飲ませる方法を紹介しています(※2)。

ここで大事なのは、薬を舌の上に広くのせないことです。頬の内側や上あごに少量置くと、薬が舌全体に広がりにくく、唾液で速やかに流れて飲み込みやすくなります。

溶かすときは「少量で飲み切れる量」に

粉薬を水に溶かして飲ませる場合は、コップいっぱいに溶かすのではなく、スプーン1〜2口で飲み切れるくらいの少量にします。

量が多いと、途中で嫌がったときに、薬がどのくらい体に入ったかわからなくなります。また、薬によっては水に溶かして時間がたつと苦味が出やすくなることがあります(※3)。

スポイトや内服用シリンジを使う場合は、口の奥に向けて一気に入れるのではなく、頬の内側に向けて少しずつ流します。寝かせたまま流し込むとむせやすいため、抱っこで少し上体を起こすと飲ませやすくなります。

食べ物に混ぜるときは「1回分だけ・直前に・少量で」

粉薬を食べ物に混ぜる場合は、必ず1回分だけを、飲ませる直前に、少量の食べ物へ混ぜます。たくさんのヨーグルトや飲み物に混ぜると、全部食べきれなかったときに薬も残ってしまいます。

ミルクやおかゆなど主食には、原則として混ぜないでください。味が変わることで、ミルクや主食そのものを嫌がるきっかけになるためです(※2)。

また、1歳未満のお子さんでは、はちみつに混ぜないでください。はちみつには乳児ボツリヌス症の原因となる菌が含まれている可能性があり、1歳未満では命に関わることがあります(※2)。

酸味のある飲み物、たとえばオレンジジュース、スポーツドリンク、乳酸菌飲料、ヨーグルトなどに混ぜると、薬によっては苦味が強く出たり、効果が弱くなったりすることがあります(※2)。混ぜてよいかどうかは薬の種類によって違うため、薬局で確認してください。

シロップ剤の飲ませ方

飲ませる前に軽く振る

シロップ剤は、薬の成分が容器の中で偏ることがあります。飲ませる前に、容器を軽く振って中身を均一にしてから測ります。強く振りすぎると泡立って目盛りが見にくくなることがあるため、やさしく振る程度で十分です。

量は「目盛り」で正確に測る

シロップ剤は、ボトルの目盛り、計量カップ、スポイト、内服用シリンジなどで1回量を測ります。台所用のスプーンは大きさにばらつきがあるため、薬の計量には向きません。

薬局で受け取るときに、「1回にどこまで測るのか」「スポイトなら何mLか」「ボトルの目盛りをどう読むのか」を確認しておくと、家で迷いにくくなります。

乳児には、頬の内側へ少しずつ

赤ちゃんにシロップ剤を飲ませるときは、抱っこして上体を少し起こし、頬の内側に向けて少量ずつ入れます。のどの奥に向けて一気に流すと、むせたり吐いたりしやすくなります。

少し入れる、飲み込むのを待つ、また少し入れる。この繰り返しで大丈夫です。急いで全部飲ませようとすると、かえって失敗しやすくなります。

飲めたあとは、水やお茶を少量飲ませる、授乳するなどして、口の中に薬の味が残りにくくしてあげるとよいでしょう。スポイトや計量カップは使用後に洗って乾かし、清潔に保ちます。

薬を嫌がるときの声かけ

薬を飲ませるときに、保護者が毎回つらい顔になると、お子さんも「これから嫌なことが始まる」と構えてしまいます。無理やり押さえつけるよりも、短く、落ち着いて、終わったらすぐ切り替える方がうまくいきやすいです。

乳児には、「お薬だよ」「上手に飲めたね」と声をかけ、飲めたらしっかりほめます。幼児には、「お薬を飲むと咳が楽になるよ」「飲んだらお水でおしまいね」と、短い言葉で説明します。

3歳以降では、「スプーンで飲む?スポイトで飲む?」「お水を先に飲む?あとで飲む?」のように、小さな選択肢を出すと、自分で決めた感覚が生まれます。学童期には、なぜ薬が必要なのかを簡単に説明し、本人と一緒に飲み方を決めると協力しやすくなります。

「飲まないと注射だよ」「悪い子だから薬を飲むんだよ」といった脅しは、薬への苦手意識を強めることがあります。薬は罰ではありません。できたときに大げさなくらいほめる方が、次につながります。

FAQ:よくある質問

Q1. 粉薬とシロップ剤、どちらが飲ませやすいですか?

年齢によって違います。

授乳が中心の乳児では、シロップ剤や、水に溶いた粉薬をスポイトで少しずつ飲ませる方がスムーズなことがあります。赤ちゃんには哺乳反射があり、月齢が低いほど少量の液体を飲み込みやすい時期があるためです(※1)。

一方で、離乳が進んだお子さんや年長のお子さんでは、粉薬を少量の水でペーストにする、服薬ゼリーに包む、少量の食品に混ぜるといった方法が合うこともあります。

「粉薬の方がよい」「シロップ剤の方がよい」ではなく、その子が実際に飲める形を選ぶことが大切です。

Q2. 粉薬はどのくらい保存できますか?

薬局で分包された粉薬は、「3か月程度」を目安にする運用がよく見られます。松山薬剤師会は、薬局で分包している粉薬は3か月が目安と説明しています(※4)。また、東京警察病院の薬剤部資料でも、散剤は湿気に気をつけて保管し、保管がよければ3か月ほど持つと説明されています(※5)。

ただし、これは「どの薬でも必ず3か月使える」という意味ではありません。粉薬は湿気に弱く、薬によって安定性も違います。袋の中で固まっている、色が変わった、においが変わった、湿っている、という場合は使わないでください。

また、子どもの薬はそのときの体重、症状、診察所見に合わせて処方されています。以前の粉薬が残っていても、自己判断で次の病気に使うことはおすすめしません。

Q3. シロップ剤はどのくらい保存できますか?

シロップ剤は、基本的には「残して次に使う薬ではない」と考えてください。

シロップ剤の保存期間は、薬の種類や調剤方法によって異なります。水で薄めてあるもの、別の容器に分けられているもの、スポイトや計量カップを使って何度も開け閉めするものでは、品質や衛生面の問題が起こりやすくなります。

資料によって目安には幅があります。シロップ剤を1週間の目安とする資料(※4)もあれば、水を加えてあるシロップは2週間、水を加えていないシロップは3か月を目安とする資料(※5)もあります。また、液状の薬は細菌が繁殖している場合があるため、残ったものは処分するよう説明している資料(※6)もあります。

このように一律の保存期間を決めにくいため、保護者向けには「処方された日数が終わったら、残っていても処分する」と考えるのが安全です。次の病気に使い回すことは避けましょう。

Q4. 薬を飲んだあとに吐いたら、もう一度飲ませますか?

薬を飲ませた直後に吐いた場合、もう一度飲ませるべきかどうかは、薬の種類、飲んでから吐くまでの時間、吐いた量によって変わります。自己判断で追加すると、薬が多くなることがあります。

特に、抗菌薬、抗ウイルス薬、けいれん予防薬、ステロイド薬などは、再投与の判断を個別にした方がよい薬です。迷う場合は、薬局または当院にご相談ください。

1回飲めなかった場合も、次の回に2回分をまとめて飲ませることは原則として避けます。

Q5. 薬は食後でないとだめですか?

薬によって違います。

「食後」と書かれている薬でも、子どもでは食後だとお腹がいっぱいで飲めない、食事と一緒に吐いてしまう、眠ってしまう、ということがあります。一部の薬では食事との関係が重要ですが、すべての薬が必ず食後でないといけないわけではありません。

ただし、薬ごとに違うため、処方時に「食前でもよいですか?」「寝る前でもよいですか?」と確認しておくと安心です。

やってはいけないこと

泣いている最中に無理やり流し込むと、むせたり吐いたりしやすく、薬への嫌な記憶も残りやすくなります。少し落ち着かせてから、少量ずつ試してください。

1回分を大量の飲み物や食事に混ぜることも避けましょう。飲み切れなければ、薬の量が不足します。

薬を作り置きすることもおすすめしません。飲み物や食べ物に混ぜた薬は、時間がたつと味や性状が変わることがあります。飲ませる直前に1回分だけ準備してください。

また、残った薬を次の病気に自己判断で使うことも避けてください。特にシロップ剤は保存がききにくいため、処方された期間が終わったら処分するのが基本です。

相談・受診の目安

すぐ救急、または119番を考える場合

薬を飲んだあとに、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、ぐったりして反応が悪い、けいれんした、じんましんが全身に広がる、唇やまぶたが腫れる、ゼーゼーする、といった症状がある場合は、すぐに救急受診を考えてください。

大人の薬を飲んだ、きょうだいの薬を飲んだ、量が明らかに多い、何をどのくらい飲んだかわからない場合も、早めの相談が必要です。

当日中に相談してほしい場合

毎回吐いてしまって薬がほとんど入らない、抗菌薬や抗ウイルス薬をどうしても飲めない、薬を飲むたびに発疹や強い下痢が出る、飲ませ方を工夫しても全く飲めない場合は、当日中に当院または薬局へご相談ください。

粉薬からシロップ剤へ、シロップ剤から粉薬へ、飲む回数の調整、味の工夫など、変更できることがあります。

次回診療時に相談でよい場合

「粉薬よりシロップ剤の方が飲みやすそう」「スポイトが使いにくい」「保育園で昼の薬が難しい」「苦い薬だけ嫌がる」などは、次回の診察時に教えてください。次の処方から、剤形や飲ませ方を一緒に考えます。

まとめ

内服は、医学的には「処方通りに飲む」ことが大切ですが、家庭ではそれだけではうまくいきません。子どもの月齢、味の感じ方、眠気、空腹、機嫌、保護者の飲ませやすさが大きく関わります。

1歳未満では、シロップ剤や水に溶いた粉薬をスポイトで少しずつ飲ませる方が合うことがあります。粉薬は、少量の水でペーストにして、頬の内側や上あごへ。シロップ剤は、軽く振って正確に測り、頬の内側へ少しずつ。

食べ物に混ぜるときは、ミルクや主食には原則混ぜず、1歳未満ではちみつには混ぜないでください。酸味のある飲み物に混ぜると、薬によっては苦味が強くなることがあります。

保存については、粉薬は比較的保管しやすい一方、シロップ剤は基本的に「残して次に使う薬ではない」と考えてください。処方された期間が終わったら、残っていても使い回さないようにしましょう。

うまく飲めないときは、保護者のやり方が悪いわけではありません。薬の形や味が合っていないだけのこともあります。困ったときは、薬の名前、飲めなかった回数、試した方法、吐いたタイミングをメモして、当院や薬局にご相談ください。

参考文献

※1 厚生労働省. 授乳・離乳の支援ガイド 2019年改定版. 2019.

※2 PMDA. Q8 赤ちゃんに医師から処方された粉薬を飲ませるよい方法を教えてください. 

※3 磐田市立総合病院. 第10話 小児への薬の飲ませ方の工夫と注意点. 

※4 一般社団法人 松山薬剤師会. 薬の使用期限と保管方法について

※5 東京警察病院 薬剤部. おくすりの保管法. 

※6 熊本中央病院 薬剤部. 薬の使用期限と保管について.