コラムcolumn
院長より

学校健診・乳幼児健診と「服を脱ぐこと」について

正確さと、子どもの安心をどう両立するか

最近、学校健診で「服をどこまで脱ぐ必要があるのか」という話題が出ています。
健診は、子どもに不快な思いをさせるためのものではありません。一方で、見逃してはいけない病気を早く見つけるためには、医療として一定の正確さも必要です。

文部科学省も、学校健診では「正確な検査・診察」と「児童生徒のプライバシーや心情への配慮」の両方が大切だと示しています。服装についても、正確な診察に支障のない範囲で、体操服や下着、タオルなどで身体を覆うこと、必要に応じて医師が衣類をめくって確認する場合があることを、事前に説明するよう求めています。(文部科学省)

つまり、大切なのは
「脱がせるか、脱がせないか」の二択ではありません。

子どもの尊厳を守りながら、必要な診察の精度をどう確保するか
ここが一番大事だと考えています。

聴診について:当院では服の上から聴診することもあります

当院では、服の上から聴診することもよくあります。

もちろん、服の上から聴診すると、音が弱くなったり、衣類のこすれる音が混ざったりすることがあります。実際に、衣類による心音・呼吸音の減衰は研究でも課題として扱われています。(MDPI)

そのため当院では、リットマンの電子聴診器を採用しています。リットマン® コア デジタルステソスコープは、ピーク周波数で最大40倍の音響増幅が可能で、アクティブノイズキャンセリング機能も搭載されています。(リットマン)

服の上から聴診した場合の「音が小さくなる」という問題については、このような機器の力でかなり補うことができます。

ただし、すべてを服の上から済ませる、という意味ではありません。
心雑音の確認が必要な場合、呼吸音が聞き取りにくい場合、衣類の音が混ざって判断しづらい場合には、必要最小限の範囲で、肌に近い位置から確認させていただくことがあります。

側弯症の検査について:当院ではスコリオデバイスを使用しています

側弯症は、背骨が横に曲がったり、ねじれたりする病気です。軽いうちは本人の自覚症状が少なく、成長期に進行してから見つかることがあります。日本側彎症学会も、側弯症は早期発見・早期治療が重要であり、学校健診で確認する医学的意義があるとしています。(側彎症学会)

従来の側弯症チェックでは、背中の左右差、肩甲骨の高さ、前かがみになった時の背中の盛り上がりなどを目で確認します。そのため、背中が服で隠れていると、軽い異常を見つけにくくなる可能性があります。(側彎症学会)

この点について、当院ではスコリオデバイスという機器を使用しています。
スコリオデバイスは、脊柱側弯症をスクリーニングする角度測定機器で、背中にローラー部を転がすことで左右の傾斜角度を自動検知します。メーカー資料では、着衣のまま測定可能とされています。(電制コムテック)

もちろん、脱衣して背中を直接見て評価することの大切さに異論はありません。
日本側彎症学会も、より精度の高い評価には背中と腰を露出した状態での確認が医学的には必要だと述べています。(側彎症学会)

ただ、現実には「服を脱ぐことに抵抗がある」「恥ずかしい」「健診や受診そのものが嫌になる」というお子さんもいます。

脱衣に抵抗があることで、受診が遅れてしまう。
健診そのものを避けてしまう。
その結果、本来見つけられたかもしれない異常が見逃される。

それは、医療としても望ましいことではありません。

着衣のままでも一定の評価ができる機器があるなら、まずはその力を借りる。
そのうえで、必要がある場合だけ、理由を説明して、最小限の範囲で追加確認をする。

当院では、その方が現実的で、子どもにとっても安全な健診に近づくと考えています。

「正確さ」と「安心」は、どちらか一方ではありません

健診で大切なのは、病気を見つけることです。
しかし、それと同じくらい、子どもが安心して診察を受けられることも大切です。

「正確に診るためだから、我慢して」だけでは不十分です。
一方で、「不安だから、何も見ない」では健診の意味が失われます。

当院では、必要な医学的評価を保ちながら、できるだけお子さんの不安や恥ずかしさを減らす方法を選びます。

服の上から聴診する。
電子聴診器で音を増幅する。
側弯症の確認にはスコリオデバイスを使う。
必要な時だけ、理由を説明して追加で確認する。

医療の正確さを保つことと、子どもの尊厳を守ることは、本来対立するものではありません。

健診は、子どもに怖い思いをさせる場ではなく、子どもの健康を守るための場です。
当院では、これからも「見逃さないこと」と「安心して受けられること」の両方を大切にしていきます。


参考資料

文部科学省「児童生徒等のプライバシーや心情に配慮した健康診断実施のための環境整備について」では、正確な検査・診察とプライバシー・心情への配慮の両立、服装や事前説明の重要性が示されています。(文部科学省)

日本医師会は、学校健診は確定診断ではなく、学校生活に支障がないかを確認するスクリーニングであり、服装によって脊柱・皮膚・心臓などの評価精度に影響しうると解説しています。(日本医師会)

リットマン® コア デジタルステソスコープは、最大40倍の音響増幅やアクティブノイズキャンセリング機能を備えています。(リットマン)

スコリオデバイスは、脊柱側弯症スクリーニング用の角度測定機器で、着衣のまま測定可能とされています。(電制コムテック)

日本側彎症学会は、側弯症の早期発見・早期治療の重要性と、背部が覆われた状態では軽微な異常の見逃しにつながる可能性を示しています。(側彎症学会)