コラムcolumn
感染症

夏風邪は熱が高いのか

「夏風邪のほうが熱が高くなる気がする」──診察室や保育園のおたよりで、保護者の方からよくいただく感覚です。実際、夏に40℃近い熱を出してぐったりしたお子さんを見た経験のある方は少なくないと思います。

今回はこのイメージが正しいのか、国の感染症情報や小児科の一次資料に当たってファクトチェックし、その上で「では、うちの子の熱はどう考えればよいのか」をお伝えします。

結論からお伝えします

結論を先に申し上げると、「夏風邪のほうが熱が高い」というイメージは、半分正しく、半分はそうとも言えません。

正確には、熱の高さは「季節だけ」で決まるものではありません。どのウイルスに感染したか、お子さんの年齢や体の反応、脱水の有無、室温や厚着などの環境要因が重なって、体温計の数字として現れます。

その中でも、夏に流行するヘルパンギーナや咽頭結膜熱には、39〜40℃の高熱を出しやすいものがあります。そのため、「夏風邪は熱が高い」という印象につながりやすいのです(※1、※2)。

一方で、同じ夏に多い手足口病は、発熱しても38℃以下のことが多い感染症です(※3)。また、冬に流行するインフルエンザも38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、全身倦怠感などが比較的急速に現れることがあるため、冬のウイルスでも高熱は珍しくありません(※4)。

つまり、「夏だから熱が高い」のではなく、「夏に流行するウイルスの中に、高熱型のものがある」と考えるのが正確です。

そもそも、なぜ熱は出るのか

熱が出る仕組みを少しだけ押さえておくと、その後の話が分かりやすくなります。

ウイルスや細菌が体に入ると、体の中の免疫細胞が反応し、炎症に関わる物質を出します。これらの信号が脳の体温調節中枢に伝わると、体は平熱の設定温度を一時的に高く設定し直します。これが発熱です(※5)。

たとえば、体が「39℃まで上げよう」と判断すると、まだ体温が37℃台の段階でも、子どもは寒がったり、手足が冷たくなったり、ガタガタ震えたりします。これは、体が新しい設定温度に追いつこうとして、熱を逃がさず、筋肉をふるわせて熱を作っているためです。

専門的には、発熱ではプロスタグランジンE2という物質が脳の体温調節に関わる部位に作用し、体温のセットポイントを上げると説明されます。保護者向けに言い換えると、「体温計が壊れている」のではなく、体が感染に反応して、体温の目標値を一時的に上げている状態です(※5)。

ここで大事なのは、熱の高さだけで重症度が決まるわけではないということです。同じ39℃でも、水分が取れていて目が合い、熱が下がったタイミングで少し遊べるお子さんと、呼吸が苦しそうで反応が乏しいお子さんでは、緊急度がまったく違います。

夏に流行する感染症は、本当に熱が高いのか

夏に多い代表的な感染症として、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱、手足口病があります。同じ「夏風邪」と呼ばれることがありますが、熱の出方はかなり違います。

ヘルパンギーナ ─ 確かに高熱が出やすい感染症です

ヘルパンギーナは、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスなどが原因となる感染症です。国立成育医療研究センターは、3〜6日の潜伏期のあと、突然の39〜40℃の高熱に続いて、のどの奥や上あごの粘膜に小さな水ぶくれが出ると説明しています。発熱は2〜4日程度で解熱するとされています(※1)。

のどの痛みが強いと、水分を飲みたがらず、乳幼児では脱水につながることがあります。「熱が高いか」だけでなく、「飲めているか」「おしっこが出ているか」を一緒に見ることが大切です。

咽頭結膜熱(プール熱) ─ 高熱が比較的長く続きます

咽頭結膜熱は、アデノウイルスによる感染症です。厚生労働省は、1日の中で39〜40℃の高熱と37〜38℃前後の微熱を行き来する状態が4〜5日ほど続き、のどの痛みや結膜炎を伴うと説明しています(※2)。

熱の高さだけでなく、熱が続く期間が長いため、保護者にとってはとても印象に残りやすい感染症です。目の充血や目やにが強い場合は、眼科的な治療が必要になることもあります(※2)。

手足口病 ─ 実は熱はあまり高くないことが多いです

手足口病は、口の中、手のひら、足の裏などに水ぶくれのような発疹が出る感染症です。厚生労働省は、発熱は38℃以下のことが多く、多くの発病者は3〜7日のうちに治ると説明しています(※3)。

ただし、「熱が低いから必ず安心」というわけではありません。手足口病ではまれに、髄膜炎、脳炎、小脳失調症などの中枢神経系の合併症を伴うことがあります(※3)。高熱が続く、頭痛や嘔吐が強い、ぐったりしている、視線が合いにくい、歩き方がふらつくといった場合は、早めに受診してください。

他の季節に流行するウイルスとの比較

「夏風邪は熱が高い」という印象を確かめるには、夏以外の感染症とも比べる必要があります。

インフルエンザ ─ 冬の高熱の代表格です

インフルエンザは、普通のかぜと比べて全身症状が強く、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などが比較的急速に現れることが特徴です(※4)。

つまり、高熱は夏だけのものではありません。冬に流行するインフルエンザも、夏のヘルパンギーナや咽頭結膜熱に負けないくらい高い熱を出すことがあります。

RSウイルス ─ 熱よりも呼吸に注意が必要です

RSウイルス感染症は、発熱、鼻水、咳などの軽いかぜ症状から始まりますが、乳児では細気管支炎や肺炎に進むことがあります。国立健康危機管理研究機構の資料では、発熱は初期症状として普通に見られる一方、入院時には38℃以下になるか、消失していることが多いとされています(※6)。

RSウイルスで本当に注意したいのは、熱の高さよりも呼吸です。咳が悪化する、ゼーゼーする、息を吸うときに胸やのどがへこむ、哺乳量や水分摂取が落ちるといった場合は、熱の数字に関係なく受診が必要です(※6、※7)。

RSウイルスは以前は秋冬の印象が強い感染症でしたが、2021年以降は流行時期が変化し、春から夏にかけて増える年もあります。2024年は明確なピークが認められず、一定の流行レベルが続いたと報告されています。年や地域によって流行時期が変わるため、「冬だけの病気」とは考えないことが大切です(※8)。

では、なぜ「夏のほうが熱が高い」と感じるのか

ファクトチェックの結果、熱の高さは季節そのものではなく、ウイルスの種類や体の反応、環境の影響によって変わることが分かりました。では、なぜ私たちは「夏のほうが熱が高い」と感じやすいのでしょうか。

理由1:高熱型の感染症のインパクトが強い

夏に多いヘルパンギーナや咽頭結膜熱は、39〜40℃の高熱を出しやすい感染症です(※1、※2)。「突然40℃近くまで上がった」「高い熱が数日続いた」という経験は、保護者の記憶に強く残ります。

一方で、手足口病のように熱があまり高くない感染症は、「夏風邪で大変だった」という記憶としては残りにくいかもしれません。そのため、高熱型の感染症の印象が強くなり、「夏風邪は熱が高い」と感じやすくなります。

理由2:夏は体に熱がこもりやすい

もう一つ、夏に体温が高く見えやすい理由として、室温、厚着、抱っこ、脱水気味の状態による「熱のこもり」があります。

医学的には、脳の指令で体温の設定温度が上がる「発熱」と、外の暑さなどで体に熱がこもる「うつ熱」は別の仕組みです。ただし、乳幼児では体温調節が未熟な面があり、室温や厚着によって体温が高くなることがあります。阪神北広域こども急病センターも、生後3か月未満の赤ちゃんでは体温調節が未熟で、室温や厚着などにより熱が高くなることがあると説明しています(※9)。

つまり、ウイルスによる発熱に、夏の気温、厚着、寝具、抱っこ、脱水による放熱の低下が重なると、体温計の数字が一段高く見えることがあります。

理由3:夏は「熱さ」を感じ取りやすい

夏は薄着で、お子さんの肌に直接触れる場面が増えます。抱っこしたときに「熱い」と感じやすく、熱中症の心配もあるため、体温を測る回数も増えます。

測る回数が増えれば、当然、高い数字に気づく機会も増えます。こうした心理的・行動的な要因も、「夏は熱が高い」という印象を強めている可能性があります。

家庭で見るポイント ─ 熱の数字より、全身の様子を見てください

ここまでお伝えしてきた通り、熱の高さそのものは、必ずしも重症度と一致しません。

ヘルパンギーナで40℃近く出ていても、水分が取れていて、熱が少し下がったタイミングで目が合い、反応がよければ、家庭で経過を見られることがあります。逆に、RSウイルスのように熱が高くなくても、呼吸が苦しければ早めの受診が必要です。

家庭で観察していただきたいのは、次の4つです。

1. 機嫌と意識の状態

熱が高くても、目が合う、声かけに反応する、少し笑う、熱が下がったタイミングで遊べるなら、ひとまず落ち着いて観察できることが多いです。

反対に、ぐったりして目線が合わない、声をかけても反応が鈍い、呼びかけにうとうとする、いつもと明らかに様子が違う場合は、熱の数字に関係なく受診が必要です。

2. 水分摂取と尿の回数

のどが痛い感染症では、食事よりも水分が大事です。食べられなくても、少しずつ水分が取れていて、おしっこが出ていれば、家庭で見られることがあります。

半日以上おしっこが出ない、唇や口の中が乾いている、泣いても涙が出ない、ぐったりして飲めない場合は、脱水が心配です。早めに受診してください。

3. 呼吸の様子

呼吸が速い、肩で息をする、息を吸うときに胸やのどがへこむ、唇や顔色が悪いといった様子は、熱の高さに関係なく重要な受診サインです。こどもの救急でも、陥没呼吸、肩呼吸、多呼吸、唇が紫などは呼吸が苦しいサインとして示されています(※7)。

4. 熱が続いている日数

咽頭結膜熱のように、ウイルス感染でも高熱が4〜5日ほど続くことがあります(※2)。ただし、発熱が4〜5日以上続く場合は、ウイルス感染の経過として説明できることもあれば、細菌感染症や川崎病など、別の病気を考える必要があることもあります。

川崎病については、現在の診断の手引きで発熱の日数だけでは判断しない考え方になっています。発熱が続く、目の充血、唇の赤み、発疹、手足の腫れ、首のリンパ節の腫れなどがある場合は、早めに診察を受けてください(※10)。

夏の検温のコツ

夏は、環境からの熱のこもりが体温計の数字に影響することがあります。汗をかいた直後、泣いた直後、抱っこの直後、厚着や厚手の寝具に包まれていた直後は、体温が高めに出ることがあります。

体温が高く出たときは、まずお子さんの様子を見ながら、涼しい部屋で薄着にし、少し落ち着いてから測り直してください。もちろん、生後3か月未満で38℃以上が続く場合や、ぐったりしている、飲めない、呼吸が苦しいなどの症状がある場合は、測り直しを待たずに受診を優先してください(※9)。

受診の目安

熱の高さよりも、全身状態を優先して判断します。その上で、次のように考えてください。

すぐ救急を考える状態

生後3か月未満で38℃以上の発熱がある場合は、すぐに受診してください。この月齢では、重い細菌感染症を見逃さないことが大切です(※9)。

呼吸が苦しそう、肩で息をする、陥没呼吸がある、唇や顔色が悪い、意識がぼんやりしている、けいれんしている、けいれん後も意識が戻らない場合も、救急受診が必要です(※7)。

当日受診したほうがよい状態

水分が半日以上ほとんど取れない、半日以上おしっこが出ない、繰り返し吐く、強い頭痛がある、ぐったりしている、熱が高くて眠れない状態が続く場合は、当日中に受診してください。

手足口病が疑われる場合でも、高熱が続く、頭痛や嘔吐が強い、ぐったりしている、視線が合いにくい、歩き方がふらつく場合は、早めの受診が必要です(※3)。

翌日以降の受診でよいことが多い状態

熱はあるものの、水分が取れている、尿が出ている、呼吸が苦しくない、熱が下がったタイミングで反応がよい場合は、翌日以降にかかりつけで相談できることがあります。

ただし、発熱が4〜5日以上続く場合、発疹、目の充血、唇の赤み、強いのどの痛み、耳の痛み、咳の悪化などがある場合は、受診して原因を確認しましょう。

家庭で経過を見られることが多い状態

熱があっても、機嫌が大きく崩れていない、水分が取れている、おしっこが出ている、呼吸が苦しくない、眠れている場合は、あわてず家庭で観察できることがあります。

解熱剤は「熱を正常に戻す薬」ではなく、「つらさを和らげて休めるようにする薬」です。体温の数字だけで使うのではなく、眠れない、つらそう、水分が取れないといった様子を目安に、医師から指示された量と間隔で使ってください。

よくある誤解

誤解1:「40℃近い熱は必ず危険」

高熱そのものがすぐに脳を傷つける、というわけではありません。大切なのは、熱の数字だけでなく、意識、呼吸、水分、尿の状態を合わせて見ることです。

ただし、40℃近い熱でつらそう、飲めない、反応が悪い、呼吸が苦しい、けいれんがある場合は、早めに受診してください。

誤解2:「熱が低ければ重くない」

RSウイルスのように、熱が高くなくても呼吸が悪くなる感染症があります(※6)。乳児では、熱よりも哺乳量、呼吸、顔色、反応の変化が重要です。

誤解3:「夏風邪なら全部同じ」

夏に多い感染症でも、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱、手足口病では、熱の高さ、のどの痛み、発疹、目の症状、経過が違います。名前が同じ「夏風邪」でも、中身は同じではありません。

まとめ

「夏風邪のほうが熱が高い」というイメージは、ヘルパンギーナや咽頭結膜熱のような高熱型の感染症が夏に流行すること、そして夏の室温や厚着、抱っこ、脱水気味の状態による熱のこもりが重なることで生まれた、半分本当・半分思い込みの感覚です。

熱の高さは、季節だけで決まるものではありません。ウイルスの種類、お子さんの年齢や体の反応、環境要因が重なって決まります。

家庭では、体温計の数字だけでなく、「機嫌・意識」「水分・尿」「呼吸」「熱の日数」を見てください。40℃近くても水分が取れて反応がよいこともありますし、熱が高くなくても呼吸が苦しければ急ぎの受診が必要です。

「熱が高くて心配」「いつもと様子が違う」「受診のタイミングに迷う」という場合は、遠慮なく当院にご相談ください。

参考文献

※1 国立成育医療研究センター. ヘルパンギーナ. URL: https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/herpangina.html

※2 厚生労働省. 咽頭結膜熱. URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pcf.html

※3 厚生労働省. 手足口病. URL: https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html

※4 厚生労働省. 令和6年度インフルエンザQ&A. URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html

※5 StatPearls. Physiology, Fever. NCBI Bookshelf. URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562334/

※6 国立健康危機管理研究機構. RSウイルス感染症(詳細版). URL: https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/respiratory-syncytial-virus-infection/detail/index.html

※7 こどもの救急. せき・ゼェゼェする時のチェックポイント. URL: https://kodomo-qq.jp/index.php?pname=seki/r1

※8 国立健康危機管理研究機構. 感染症発生動向調査でみる2018〜2024年のRSウイルス感染症の流行状況. 2025年8月8日. URL: https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/rsv/010/index.html

※9 阪神北広域こども急病センター. 発熱について. URL: https://www.hanshink-kodomoqq.jp/?page_id=44

※10 日本川崎病学会. 診断の手引き. URL: https://www.jskd.jp/川崎病関連情報/診断の手引き