コラムcolumn
院長より

「日本一子育てしやすい街」に住むということ ― 安城市の受賞に寄せて

「安城市が、子育てしやすい街で日本一に選ばれた」。そんな知らせを耳にして、誇らしい気持ちになった保護者の方も多いのではないでしょうか。アカチャンホンポが全国1万人を超える会員に行った調査で、安城市は子育て満足度の全国1位に選ばれました(※1)。まずは、この街で子育てをされている皆さんに、心からお祝いを申し上げます。

今回は、この受賞を当院なりの視点から読み解きながら、「この街で子育てをすること」「この街で小児科を続けること」について、日頃考えていることを書いてみたいと思います。

1.「支援の数」ではなく「届きやすさ」が評価された

この調査は、全国の10,837名の回答をもとにまとめられたものです(※1)。興味深いのは、ランキングの上位が必ずしも「制度の数が多い自治体」ではなかった点です。報告書では、支援の充実ぶりで知られる自治体であっても、保育所の入りにくさなどへの不満から、必ずしも上位に入っていない例があったと指摘されています(※1)。

では、安城市は何が評価されたのでしょうか。報告書によれば、安城市は「金銭的支援」「日常の生活支援」「地域社会」「施設環境」「生活環境」という5つの分類すべてで全国平均を上回り、特に「地域社会」と「施設環境」では全体平均の2倍以上の評価を得たとされています(※1)。給付の手厚さだけでなく、日々の暮らしのなかで支援が「使いやすい形で届いている」ことが評価された、という分析です(※1)。

これは、私たちが診療のなかで大切にしている考え方とも重なります。制度や情報は、ただ用意されているだけでは意味がなく、必要な人に、迷わず届いて初めて価値を持ちます。

2.安城市が実際に手厚いところ

では、具体的にどのような支援があるのか。当院の患者さんにも関わりの深いものを、市の公式情報で確認できる範囲で挙げてみます。

まず、子ども医療費の助成です。安城市では令和6年4月から対象が拡大され、0歳から高校生世代(18歳に達した年度末)までの通院・入院の保険診療分の自己負担が助成されています(※2)。市は、生年月日ではなく年度区切りとした理由について、子どもの生活の節目である高校卒業まで安心して受診できるようにするため、と説明しています(※2)。

もう一つが、第2子以降の低年齢児保育の無償化です。令和6年4月から始まったこの安城市独自の事業では、保育の必要性がある3歳児未満の第2子以降の子について、認可外保育施設等の利用料のうち月額42,000円までが給付金として支給されます(※3)。第1子の年齢や世帯所得などの制限を設けていない点が特徴とされています(※3)。

これらは、子育て世帯の経済的な負担をはっきりと軽くする制度です。クリニックを運営する立場から見ても、こうした制度が整っている地域は、安心して医療を提供しやすい環境だと感じています。

3.街の恩恵を、患者さんに返したい

正直に申し上げれば、これだけ子育て支援が手厚い地域でクリニックを開けるということは、私たち医療機関にとっても恵まれた条件です。言い換えれば、街から「下駄を履かせてもらっている」面があります。

だからこそ当院では、その恩恵をできるだけ地域の皆さんに直接お返ししたいと考えています。たとえば予防接種の価格設定を工夫しているのも、そうした思いからです。街が整えてくれた土台の上で、私たちにできる範囲のことを、患者さんに還元していく。微力ではありますが、それがこの街で診療をさせていただく者の役割だと考えています。

4.安心して診療を続けられるのは、後方病院があってこそ

当院のような地域のクリニックが日々の診療に専念できるのは、いざというときに支えてくれる病院の存在があるからです。その中心が、安城更生病院です。

安城更生病院は、かかりつけ医を支える役割を担う地域医療支援病院です(※4)。院内には救命救急センターや総合周産期母子医療センター、そして小児医療センターも設置されています。
安城市にお住まいの方は当たり前にある病院と思われるかもしれませんが、よその県に行っても名前が知られているくらいに名門の病院です。

当院でお子さんを診ていて、より高度な検査や入院、専門的な治療が必要だと判断したとき、安心して紹介できる病院がすぐ近くにあること。これは保護者の皆さんにとっても、私たち診療する側にとっても、大きな安心材料です。病院とクリニックがそれぞれの役割を分担し、必要なときに連携できる体制があるからこそ、地域の小児医療は安定して回っていきます。

5.これからも、この街とともに

「日本一子育てしやすい街」という評価は、安城市が積み重ねてきた取り組みと、それを支える地域全体の力の表れだと思います。手厚い制度、使いやすい環境、そして後方病院をはじめとする医療の支え。そのどれが欠けても、この評価は成り立ちません。

当院も、この恵まれた環境に感謝しながら、地域の子育てを支える一助となれるよう、これからも診療を続けてまいります。何か気になることがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。皆さんとともに、この街で子育てを支えていけることを、嬉しく思っています。

参考文献

  1. 株式会社赤ちゃん本舗. 1万人調査!! 子育てしやすい街リポート. 2026年5月25日更新. https://chirashi.akachan.jp/child-support-hub/articles/article002/
  2. 安城市. 子ども医療. https://www.city.anjo.aichi.jp/kurasu/fukushikaigo/iryo/kodomo.html / 安城市. 子ども医療費助成制度について. https://www.city.anjo.aichi.jp/shisei/jouhou-hassin/2024koe/0302.html
  3. 安城市. 第2子以降の低年齢児保育の無償化. https://www.city.anjo.aichi.jp/kurasu/kosodate/dai2shi-mushoka.html
  4. 厚生労働省 医療情報ネット(ナビイ). 愛知県厚生農業協同組合連合会 安城更生病院 機能情報. https://www.iryou.teikyouseido.mhlw.go.jp/
  5. 安城更生病院. 小児科、脳神経小児科、新生児科. https://anjokosei.jp/department/syoni/
  6. 安城更生病院. 小児医療センター ほか診療科・センター一覧(救命救急センター・総合周産期母子医療センター・地域中核災害拠点病院). https://anjokosei.jp/department/syouniiryou/