子どもの昼間のおもらし 「一度できたのに戻った」とき
「もうトイレでできるようになったと思っていたのに、また漏れるようになった」
「急におしっこがしたくなり、トイレまで間に合わない」
子どもの昼間のおもらしには、いくつか異なる背景があります。多くは、しつけの不足や本人の怠けによるものではありません。
排尿の発達途中にみられる一時的な失敗もありますが、過活動膀胱や便秘、尿路感染症などに対する治療が役立つ場合もあります。まず、いつ、どのように漏れているのかを整理することが大切です。※1
昼間のおしっこは何歳ごろに安定するのでしょうか
排尿の自立は、ある日突然完成するものではありません。
子どもは成長とともに、膀胱に尿がたまったことに気づき、少し我慢し、自分からトイレへ行って排尿できるようになります。小規模な追跡研究では、昼間に尿を漏らさなくなる年齢の中央値はおよそ3歳半でした。日本小児泌尿器科学会の資料でも、昼間にまったく尿を漏らさない子どもは3歳で約半数、4歳では9割を超えるとされています。これは発達の目安であり、「3歳半までにできなければ異常」という意味ではありません。※1、※2
3歳前後は、自宅では乾いていても園では失敗する、遊びに夢中になると尿意に気づけないなど、排尿がまだ揺れやすい時期です。体調不良や便秘、生活リズムの変化によって、一時的に失敗が増えることもあります。
「一度できた」とは、どのような状態でしょうか
「一度できるようになった」という言葉にも、さまざまな意味があります。
たまたま一度トイレで排尿できた、数週間漏れなかった、大人がこまめに誘えば乾いていたという場合は、まだ排尿自立の獲得途中かもしれません。
一方、自分で尿意に気づき、大人が毎回誘わなくてもトイレへ行き、家庭だけでなく園や外出先でも数か月にわたって安定していた場合は、昼間の排尿コントロールを一度獲得していた可能性が高くなります。
そのため、3歳でいったん乾いた後に再び漏れた場合も、年齢だけでは判断できません。短期間だけ乾いていたのであれば発達途中の揺れが考えやすい一方、自発的な排尿が安定していた後の明らかな再発なら、3歳でも便秘や感染症などを確認します。
急に我慢できない尿意―尿意切迫感と過活動膀胱
急に起こる、先延ばしにしにくい強い尿意を「尿意切迫感」と呼びます。その尿意に伴って漏れる症状が「切迫性尿失禁」です。
尿意切迫感は症状の名前であり、それだけで直ちに過活動膀胱という診断になるわけではありません。尿路感染症など、似た症状を起こす明らかな原因がないことを確認したうえで、尿意切迫感を中心に、頻尿や切迫性尿失禁を伴うことがある症候群を「過活動膀胱」と呼びます。※1、※3、※4
過活動膀胱の子どもでは、足を強く交差する、股を押さえる、しゃがみ込むといった「排尿我慢姿勢」がみられることがあります。
これは、必ずしも膀胱がパンパンになるまで遊びを優先していた姿ではありません。まだ尿をためられる段階でも突然「今すぐ出そう」という感覚が起こり、子どもは尿道括約筋や骨盤底の筋肉を締めて、漏れを防ごうとします。「今、足をほどいて動いたら漏れそう」と感じ、その場で尿意の波が弱まるのを待っていることもあります。※1
ただし、足を交差している姿だけで過活動膀胱と診断したり、その瞬間に膀胱の不随意収縮が起きていると断定したりはできません。過活動膀胱は症状に基づく症候群であり、膀胱内圧検査で確認される「排尿筋過活動」とは同じ意味ではありません。※3
同じ「間に合わない」でも理由は一つではありません
子どもが間に合わずに漏らしていても、突然の尿意が原因とは限りません。
遊びや動画に集中して尿意に注意を向けにくい、尿意があってもトイレを後回しにするといった「排尿延期習慣」でも、最後には足を交差して我慢し、間に合わなくなることがあります。過活動膀胱と排尿延期習慣が重なっている子どももいます。※4
漏れた場面だけでなく、普段の排尿間隔、1回の尿量、漏れる直前の様子を記録すると、「突然の尿意」が中心なのか、「長く後回しにしている」のかを考えやすくなります。
医療機関では検査や薬による治療も行います
診察では、尿意や排尿回数、漏れる場面、便秘の有無、以前に乾いていた期間などを確認します。尿検査で尿路感染症や尿糖などを調べ、必要に応じて超音波検査で腎臓や膀胱、排尿後の残尿を確認します。排尿日誌も大切な手がかりになります。※1、※4
治療の基本は、定時排尿、適切な水分摂取、排尿姿勢、便秘への対応などを行う「ウロセラピー」です。しかし、それだけで急な尿意や尿漏れが十分に改善せず、園や学校、外出に影響している場合には、膀胱の過剰な収縮を抑える抗コリン薬・抗ムスカリン薬を検討します。※1、※4
実際の診療では、ソリフェナシン(商品名:ベシケアなど)を使用することもあります。膀胱を物理的に大きくする薬ではなく、膀胱が過剰に反応するのを抑えることで、結果として落ち着いてためられる尿量、すなわち機能的膀胱容量を増やす薬です。海外では小児の過活動膀胱を対象とした臨床試験も報告されています。※5、※6
一方、日本の添付文書には小児の用法・用量は設定されておらず、国内の小児を対象とした有効性・安全性の臨床試験も実施されていません。使用する場合は、症状や年齢、便秘、残尿などを確認し、必要性を個別に判断します。口の乾き、便秘、目のかすみ、尿が出にくくなることなどにも注意が必要です。※5
一度安定していたのに再び漏れる場合
日本小児泌尿器科学会の手引きでは、切迫性尿失禁がなかった期間がおおむね6か月あり、その後に再発した場合には、単なる発達途中の揺れ以外の背景を考えるとしています。特に挙げられているのは、慢性機能性便秘症、強い心理社会的ストレス、まれな脊髄係留症候群です。※1
入園・入学、家族との別離、きょうだいの出生、友人関係などの変化が再発時期と重なることはあります。前向き研究でも、不安やストレスとなる出来事と、新しく始まった尿失禁との関連が報告されています。※7
しかし、「一度できていたのだから心因性」と決めつけることはできません。便秘や尿路感染症のほか、強い口渇と多尿、体重減少があれば糖尿病も確認します。転びやすさや歩き方の変化、足の力や感覚の異常を伴う場合には、神経疾患を疑って専門医療機関での評価が必要です。※1、※4、※8
受診を考えたいとき
5歳を過ぎても昼間尿失禁を繰り返し、園や学校生活、外出、本人の自信に影響している場合は、医療機関へご相談ください。
5歳未満でも、以前は安定していたのに繰り返し漏れるようになった場合や、排尿時の痛み・発熱、尿の勢いの異常、強い口渇と多尿、歩き方の変化、常に下着が湿っている状態があれば、年齢を待たずに受診しましょう。※1、※4
当院からのメッセージ
昼間のおもらしの治療は、「本人がもっと気をつけること」だけではありません。
突然の尿意が中心なのか、トイレを後回しにしているのか、便秘や感染症が関係しているのかによって、対応は異なります。過活動膀胱には、生活・排尿指導だけでなく薬による治療が役立つ場合もあります。
失敗を叱るのではなく、いつ、どのように漏れているのかを一緒に整理していきましょう。
参考文献
※1 日本小児泌尿器科学会 幼小児排尿指導管理ワーキンググループ.幼小児の昼間尿失禁の診療とケアの手引き.2019.
※2 Jansson UB, et al. Voiding pattern and acquisition of bladder control from birth to age 6 years—a longitudinal study. J Urol. 2005;174:289-293. PMID: 15947669.
※3 Austin PF, et al. The standardization of terminology of lower urinary tract function in children and adolescents: update report from the ICCS. Neurourol Urodyn. 2016;35:471-481. PMID: 25772695.
※4 European Association of Urology. EAU Guidelines on Paediatric Urology: Daytime Lower Urinary Tract Conditions. 2026.
※5 医薬品医療機器総合機構.ベシケア錠2.5mg・5mg 電子化された添付文書.
※6 Newgreen D, et al. Solifenacin in Children and Adolescents with Overactive Bladder: Results of a Phase 3 Randomised Clinical Trial. Eur Urol. 2017;71:483-490. PMID: 27687820.
※7 Warne N, et al. Mental health problems, stressful life events and new-onset urinary incontinence in primary school-age children: a prospective cohort study. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2024;33:871-879. PMID: 37095371.
※8 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会編.小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024.

