コラムcolumn
病気の話, 院長より

「足の指が曲がっている」「爪の形がおかしい」

病気?遺伝?歩き方への影響は?

「足の指が内側に曲がっています」
「小指が隣の指に重なっています。歩くのに問題はありませんか?」
「親指の爪だけ、斜めに伸びています」

乳幼児健診や普段の診察で、こうしたご相談を受けることがあります。足は毎日体重を支える場所です。形の違いに気づくと、病気や将来の歩き方を心配されるのは自然なことです。

先に結論をお伝えします。

小さいころから形が変わらず、痛みがなく、指を手でそっと動かせて、普通に歩いたり走ったりできている場合は、多くが足趾の先天的な形のバリエーションです。見た目だけで「全身の病気がある」「将来歩けなくなる」と考える必要はありません(※1、※2)。

大切なのは、曲がっている角度よりも、どの指が、上と下のどちらへ曲がっているかです。そのうえで、痛み、皮膚や爪の傷み、靴との擦れ、歩き方、変形の進行、足全体の形を確認します。

 

まず、どこが曲がっているかを見ます

保護者が「足の指が曲がっている」と表現する状態には、別々の足趾変形や爪変形が含まれています。

 

指が内側・足の裏側へ入り込む――先天性屈曲趾

幼児でよくみられるのが、先天性屈曲趾(Congenital Curly Toe:CCT)です。人口の約2~3%にみられるとする報告があり、「病名はつくけれど、珍しい病気ではない」足趾変形です(※1)。

指を曲げる腱の力によって、指の途中の関節が曲がり、内側へねじれながら隣の指の下に入り込みます。第3~5趾に起こりますが、中心となるのは第4趾と第5趾です。第4趾が第3趾の下へ潜る場合も、第5趾が第4趾の下へ潜る場合も、同じ「先天性屈曲趾」です。多くは、手でそっと伸ばすとある程度まっすぐになる柔らかい変形です(※1、※3)。

「第4趾と第5趾のどちらが多いか」は、研究対象によって結果が異なります。一般の新生児を調べた研究では1,167人中38人(3.26%)に先天性屈曲趾があり、第4趾が26人、第5趾が12人でした。一方、別の新生児研究では、テーピング対象となった下へ潜る趾の94%が第5趾でした(※2、※3)。診断基準や数え方が違うため一方だけを代表にせず、本稿では第4趾型と第5趾型を並列に示します。

指が下に潜るため、爪が上から見えにくい、爪が平たくなる、隣の指に押される、といったこともあります。爪だけの病気に見えても、実際には指の向きが原因ということがあります。

 

 

小指が第4趾の上に乗る――先天性第5趾重なり趾

小指が内側を向くだけでなく、付け根から足の甲側へ持ち上がり、第4趾の上に乗ることがあります。これは先天性第5趾重なり趾(Congenital Overlapping Fifth Toe)と呼ばれます。

小趾の付け根の関節で、内側への偏位、背屈、回旋が組み合わさった変形です。第4趾の下へ潜る先天性屈曲趾とは、上下関係が反対です(※4)。

「内反小趾」という言葉も使われますが、これは小指が内側を向く形を広く表す場合があります。本稿では、保護者が見分けやすいように、下へ潜るものを第5趾の先天性屈曲趾、上に乗るものを先天性第5趾重なり趾として説明します(※5)。

親指の爪だけが斜めに伸びる――先天性母趾爪甲偏位

足の親指自体は比較的まっすぐなのに、爪だけが斜めに伸びることがあります。これは先天性母趾爪甲偏位(Congenital Malalignment of the Great Toenail:CMGT)と呼ばれます。

爪を作る部分の向きと親指の骨の向きがそろわないため、爪が指の長軸と平行に伸びません。爪が厚い、黄色や茶色に見える、横筋が入る、浮く、繰り返し剥がれるなどの変化を伴い、水虫のように見えることもあります(※6)。

軽ければ見た目だけで経過しますが、靴との小さな衝突が繰り返されると、陥入爪、爪周囲の炎症、痛みにつながることがあります。

第4趾の爪が足の裏側へ曲がる――第4趾先天性彎曲爪

第4趾の爪が趾先を越えて足の裏側へ鉤状に曲がる、第4趾先天性彎曲爪(Congenital Curved Nail of the Fourth Toe:CNFT)というまれな状態もあります。

指全体が隣の指の下へ入り込む先天性屈曲趾とは異なり、主に第4趾の先端と爪の形が問題になります。多くはその爪に限られた形の違いですが、靴下や靴に引っかかり、痛みや運動時の支障につながった小児例も報告されています(※7)。

病的な意味はあるのでしょうか

先天性屈曲趾には病名がつきますが、病名があることと、治療が必要な病気であることは同じではありません。一般の新生児を調べた研究では、先天性屈曲趾があった38人のうち、関連する構造異常、染色体異常、症候群を伴った子は0人でした(0/38人、0%)(※2)。この一研究だけで「絶対にほかの病気はない」とは断定できませんが、典型的な先天性屈曲趾は、多くの場合、単独の足趾の形としてみられます。

自然にまっすぐになる割合は、過去の研究をまとめると25~50%とされています。ただし、古い研究や対象の異なる研究を合わせた推定で、個々のお子さんが治るかを予測できる数字ではありません(※1)。以前から同じ形で、柔らかく、痛みや機能障害がなければ、まず経過をみることが多い変形です。

一方、医療機関を受診した子どもをまとめた研究では、評価できた104人中47人(45.2%)に、痛み、爪の変形、靴の履きにくさのいずれかがありました(※1)。これは症状のある子が集まりやすい診療集団の数字であり、「先天性屈曲趾の約半数が困る」という意味ではありません。病的かどうかは、形そのものより、固定されているか、皮膚や爪が傷むか、靴や歩行に支障があるかで判断します。

先天性第5趾重なり趾も、乳幼児期には見た目だけが気になることがあります。ただし、足趾変形に関する研究は少なく、「必ず自然に治る」「何歳まで待てばよい」と一律にはいえません。症状の有無と柔軟性を見て判断します(※4)。

爪については、以前は正常だった爪が一つだけ変形してきた、爪の下に硬いふくらみがある、強い圧痛や出血を伴う場合は、「生まれつきの形」と決めつけないことが大切です。小児の爪下外骨腫では、爪の変形と、靴を履いたときや歩いたときの痛みが手がかりになります(※8)。

 

遺伝するのでしょうか

先天性屈曲趾や先天性第5趾重なり趾では、親子やきょうだいなど、同じ家族の中で似た足趾の形がみられることがあります(※1、※4)。

ただし、原因となる特定の遺伝子や、誰にどの程度現れるかを予測できる明確な遺伝形式は確立していません。「家族で似やすい体質はありそうだが、親にあれば必ず子どもにも現れる」というものではありません。

先天性母趾爪甲偏位でも、親子や双子での発症から遺伝的な関与が考えられています。一方で、胎内での圧迫、爪と骨の成長のずれ、出生後の靴や運動による反復刺激など、遺伝以外の要因も提案されています(※6)。

つまり、家族内で似ることはあっても、足趾や爪の形だけから単純な「遺伝病」と判断することはできません。

 

歩行に問題をきたすのでしょうか

柔らかく、痛みのない足趾変形だけで、歩き始めが遅れたり、走れなくなったりすることは通常ありません。小児向けの公的医療資料でも、軽い足趾の形の違いは歩行や走行へ影響しにくいと説明されています(※9)。

一方で、変形そのものより、靴との摩擦や痛みが歩き方に影響することがあります。爪先や関節が靴に当たる、胼胝や水ぶくれができる、爪が食い込むと、子どもが足をかばうことがあります。靴を嫌がる、片足を引きずる、運動を避ける場合は相談してください。

また、複数の指が後から鉤爪状に曲がってきた場合は、指だけでなく、足全体と神経・筋肉の評価が必要です。土踏まずが極端に高くなる凹足、つまずきの増加、つま先が上がりにくい下垂足、筋力低下、感覚の違いなどを伴うときは、シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth Disease:CMT)などの神経筋疾患が背景にないか確認します(※10)。

 

靴は、指先が押し合わない幅と高さのあるものを選びます。爪は端を深く切り込まず、引っかからない長さに整えてください。強い力で毎日伸ばしたり、自己流のテーピングを長期間続けたりする必要はありません。テーピングの効果は開始年齢や方法によって異なり、長期的な矯正効果は確立していません(※1、※4)。

典型的で柔らかい先天性屈曲趾や重なり趾では、レントゲンが必ず必要なわけではありません。診察で足趾の上下関係、柔軟性、皮膚・爪、足全体の形、歩き方を確認し、固定性変形や骨の病変が疑われるときに画像検査や小児整形外科への紹介を検討します。

 

形よりも、「困っていること」が判断の中心です

足の指や爪の形が違っていても、痛みがなく、皮膚や爪が傷まず、普通に歩けているなら、急いで形を直す必要がないことが多いです。

診察で知りたいのは、「何度曲がっているか」だけではありません。

隣の指の上か下か、手で動かせるか、皮膚と爪が守られているか、子どもがいつもどおり動けているか。

この4点が、様子を見てよい形と、詳しい評価が必要な形を分ける手がかりになります。

 

参考文献

 

※1 Morcos MM, et al. Congenital Curly Toes in the Pediatric Population: A Management Algorithm and Systematic Review. JAAOS Glob Res Rev. 2024.

 

※2 Cho JY, et al. Congenital curly toe of the fetus. Ultrasound Obstet Gynecol. 2004.

 

※3 Smith WG, Seki JT, Smith RW. Prospective study of a noninvasive treatment for two common congenital toe abnormalities (curly/varus/underlapping toes and overlapping toes). Paediatr Child Health. 2007.

 

※4 Talusan PG, et al. Fifth toe deformities: overlapping and underlapping toe. Foot Ankle Spec. 2013.

 

※5 西須孝.足の形がおかしい.小児科.2017;58(9):1153-1158.

 

※6 Catalfo P, et al. Congenital Malalignment of the Great Toenails: A Review. Skin Appendage Disord. 2018.

 

※7 Kashiyama K, Tanaka K. Congenital Curved Nail of the Fourth Toe with Subungual Hyperkeratosis. Skin Appendage Disord. 2021.

 

※8 Li H, et al. Clinical diagnosis and treatment of subungual exostosis in children. Front Pediatr. 2022.

 

※9 NHS Greater Glasgow and Clyde. Lesser Toe Problems in Children.

 

※10 Sanpera I, et al. How to manage pes cavus in children and adolescents? EFORT Open Rev. 2021.