小児の成長痛2
原因は分かっていません。でも「調べていない」のとは違います
前編では、「成長痛」は他の病気を消し終えたあとに残る名前だ、という話を書きました。3人に1人が経験し、5年で半数は消えていく痛みです。
では、消したあとに残ったその痛みは、いったい何なのか。ここからは、そちらの話です。
結論から言うと、原因はまだ分かっていません。ただ、外来で「原因不明です」とだけ言われると、調べてもらえなかったように聞こえてしまいます。実際には、「これは違う」と分かったことと、「どうやらこうらしい」と見えてきたことが、はっきり積み上がっています。
「原因不明」と「調べた結果こうだった」は違います
この痛みが医学の文献に初めて記載されたのは、フランスの医師によって1823年のことでした(※1)。それ以来、たくさんの仮説が立てられ、ひとつずつ検証されてきました。
2019年に発表された病因についての系統的レビューは、32本の研究をまとめたうえで「原因は依然としてよく分かっていない」と結んでいます(※1)。正直な結論です。ただし、その32本のなかには、否定された説と、繰り返し確かめられている所見の両方が含まれています。以下、その両方を書きます。
背が伸びるから痛いのではありません
まず、名前の由来になっている説から。これははっきり否定されています。
デンマークで3〜6歳の777人を前向きに追いかけた研究は、痛みが出る時期と急に背が伸びる時期に関連を見つけられず、「growing pains(成長痛)という用語は誤称である」と結論しました(※2)。台湾の小児病院で12歳未満の268人を調べた研究でも、診断してから2年間の身長の伸び方と成長痛のあいだに、有意な関連はありませんでした(※3)。
さらに、前編で挙げた145研究のレビューでは、93%の研究が定義のなかで「成長」に一切触れていませんでした(※4)。研究者の側は、とうに成長と切り離して考えているということです。
「夜に骨が伸びる」という話について
これに関連して、よく紹介される研究があります。
子羊のすねの骨に微小なセンサーを埋め込み、167秒おきに21〜25日間にわたって骨の長さを測り続けた実験です。その結果、骨が伸びる量の少なくとも90%は、横になっているあいだに起きていたことが分かりました。立っているときや歩いているときには、ほとんど伸びていませんでした(※5)。
面白い実験です。ただし、これは子羊の実験です。論文の著者自身、「ヒトでも休息中や睡眠中に成長が起きているかもしれず、成長痛との関連を示唆するかもしれない」と、あくまで仮説として書いています。
そして、ヒトでその橋をかける証拠のほうは、先に書いたとおり出ていません。骨が夜に伸びるのは本当でも、痛みが成長と結びつくという証拠は、いまのところない――ここが現状です。
いま一番確からしいのは、痛みの感じ方の説明
では何が残っているか。もっとも再現されている所見は、痛みを感じるしきい値の違いです。
成長痛のある子ども44人と、ない子ども46人に、圧痛計という器具で少しずつ圧力をかけて、痛いと感じる強さを測った研究があります。線維筋痛症で調べられる圧痛点では、成長痛のある子が平均3.5 kg/cm²で痛いと言ったのに対し、ない子は4.0 kg/cm²まで耐えました。関係のない対照点でも、すねの前面でも、同じように低い値で、いずれも統計的にはっきりした差でした(※6)。
さらに面白いのは、この44人を5年後に追いかけた研究です。全体で見ると、成長痛のあった子と健康な子のあいだに、もう差はありませんでした。ところが、痛みがまだ続いている子だけを取り出すと、しきい値は依然として低いままでした(※7)。痛みが消えた子では、しきい値も戻っていたのです。
これは「痛みに弱い子」という話ではありません。同じ刺激でも痛いと感じやすい時期があり、その時期が過ぎると戻る、という現象です。誤解されやすいところなので、強調しておきます。
もうひとつは、骨の育ちが追いついていない説
もうひとつ、5年越しで確かめられている所見があります。骨の強さです。
成長痛のある子ども39人に超音波を当てて、骨の中を音が伝わる速さ(骨の硬さの目安になります)を測った研究があります。比べた相手は、別に集められた健常児1,085人から作った同年代の標準値です。結果は、すねの骨で男の子が標準より0.55、女の子が0.89ぶん低い値でした。腕の骨でも、女の子では低くなっていました(※8)。
そして5年後。この39人のうち再検査できた30人では、骨の値は標準より0.62低かったところから、0.65高いところまで改善していました。そのうえで注目すべきは、標準より1以上低いままだった6人は、全員がまだ痛みを訴えていたことです(※9)。
この所見は、「骨が弱い」という話ではありません。むしろ、骨の育ちが、その時期だけ一時的に追いついていない――そういう時期があるのかもしれない、という読み方になります。
外来でよく聞く「公園で走り回った日の夜に限って痛がります」という実感とも、つながりそうに思えます。ただし、この2つの研究は運動量を測っていません。実感との一致は、あくまで仮説の段階です。
体質として受け継がれています
家族に同じ経験がある、というのもよくある話です。これにもデータがあります。
オーストラリアの双子の登録から3〜16歳の1,843組を調べ、成長痛にあてはまる双子がいた88組を詳しく追った研究では、一卵性双生児では34組中25組が一致(一致率0.85)、二卵性双生児では54組中12組(0.36)と、はっきり差がつきました。さらに、成長痛のある子のきょうだいでは51%、親では47%が、生涯のどこかで同じ痛みを経験していました(※10)。
つまり、これは体質です。診察室で「そういえば私も子どものころ、よく脚が痛いと言っていました」と話される保護者は本当に多いのですが、その記憶には根拠があります。
眠りとの関係 ── むずむず脚症候群
もうひとつ、いま議論が続いている領域があります。むずむず脚症候群との関係です。
むずむず脚症候群は、脚に不快な感覚があって「じっとしていられない、動かすと楽になる」という病気で、夕方から夜に強くなります。成長痛と時間帯も場所もよく似ています。
イスタンブールの7校で9〜18歳の4,565人を調べた研究では、むずむず脚症候群が4.2%、成長痛が3.1%で、両方の診断基準を満たしたのは、4,565人のうち12人しかいませんでした。ところが同じ研究で、成長痛とされた140人のうち39.3%に「脚を動かしたい衝動」があったのです(※11)。
別の研究では、睡眠検査を受けた子ども230人のうち成長痛のある43人を見ると、睡眠中に脚が周期的に動く現象が25.6%にあり、成長痛のない子の10.2%より多く、他の条件を調整しても2.5倍ほど起こりやすい、という計算でした(95%信頼区間 1.1〜6.1)(※12)。
結論は出ていません。ただ、前編で「じっとしていられない、動かすと楽」という言い方をするときは教えてください、と書いたのは、この領域があるからです。
支持されなかった説もあります
一方で、検証して支持されなかった説もあります。
「夜に脚の血の巡りが悪くなるのでは」という血管説は、以前からよく言われていました。これを確かめるために、成長痛のある子ども11人と、他の理由で骨のシンチグラフィ検査を受けた子ども12人で、痛む部位の血流を比べた研究があります。結果は、血流にも取り込みにも、まったく差がありませんでした(※13)。ただし23人という小さな研究なので、「否定された」というより「支持する所見は出なかった」というのが正確です。
ビタミンD不足を原因とする説もよく目にします。成長痛のある子にビタミンD不足が多いという研究はいくつもあるのですが、その多くに比較対照が置かれていません。痛みのない子と正面から比べたインドの研究では、ビタミンDが足りていない子の割合は成長痛のある群で95.6%、ない群で93.3%と、差がありませんでした。しかも、もともと足りている子も、補充を受けた子と同じように痛みが軽くなっていました(※14)。
補充してよくなったという報告もありますが、こちらは対照群のない前後比較です(※15)。成長痛はもともと自然に軽くなっていく痛みなので、前後で比べただけでは効果を判定できません。
「甘えん坊だから」ではありません
古い教科書には、成長痛の子は甘えん坊で、親が過保護だ、という趣旨の記述が残っています。この点にも、きちんとしたデータがあります。
オーストラリアの地域住民1,605人の子どもコホートから、過去1年に腕・脚・関節の痛みがあった183人を選び、痛みのない子と比べた研究です。保護者による評価では、腹痛を繰り返す、機嫌が悪い、行動上の問題がある、といった項目で差が出ました。ところが、同じ子どもについての教師の評価では、行動、気質、社会性、学業成績のいずれにも差がありませんでした(※16)。
家庭で見ている人と、学校で見ている人とで、評価が割れたわけです。これは「親が過保護だから子どもが痛がる」という話ではありません。夜中に何度も痛がる子を見ている人と、そうでない人とでは、同じ子が違って見える、ということだと私は読んでいます。保護者の育て方の問題として語られるべきものではありません。
まとめ
成長痛の原因は、まだ分かっていません。ただ、この200年で分かったことははっきりしています。
違うと分かったことは、背が伸びるから痛いという説明です。そして血流の悪さも、支持されませんでした。
見えてきたことは4つ。痛みを感じるしきい値がその時期だけ低くなっていること。骨の育ちが使った量に追いついていない時期があるらしいこと。体質として受け継がれること。そして、眠りとの関係が続いて議論されていること。
どれも決着はしていません。それでも、「何も分かっていない」のと「ここまで分かっている」のとでは、受け取り方がずいぶん違うはずです。
痛がっているときの対応と受診の目安は、前編に書きました。
参考資料
※1 Pavone V, Vescio A, Valenti F, Sapienza M, Sessa G, Testa G. Growing pains: What do we know about etiology? A systematic review. World J Orthop. 2019;10(4):192-205.(1823年の初記載についても本論文の記述による) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31041161/
※2 Hestbæk L, Lücking A, Jensen ST. Growing pains in Danish preschool children: a descriptive study. Sci Rep. 2024;14(1):3956. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38368453/
※3 Liao CY, Wang LC, Lee JH, et al. Clinical, laboratory characteristics and growth outcomes of children with growing pains. Sci Rep. 2022;12(1):14835. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36050454/
※4 O’Keeffe M, Kamper SJ, Montgomery L, et al. Defining Growing Pains: A Scoping Review. Pediatrics. 2022;150(2):e2021052578. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35864176/
※5 Noonan KJ, Farnum CE, Leiferman EM, Lampl M, Markel MD, Wilsman NJ. Growing pains: are they due to increased growth during recumbency as documented in a lamb model? J Pediatr Orthop. 2004;24(6):726-731. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15502578/
※6 Hashkes PJ, Friedland O, Jaber L, Cohen HA, Wolach B, Uziel Y. Decreased pain threshold in children with growing pains. J Rheumatol. 2004;31(3):610-613. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14994414/
※7 Uziel Y, Chapnick G, Jaber L, Nemet D, Hashkes PJ. Five-year outcome of children with “growing pains”: correlations with pain threshold. J Pediatr. 2010;156(5):838-840. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20171654/
※8 Friedland O, Hashkes PJ, Jaber L, et al. Decreased bone speed of sound in children with growing pains measured by quantitative ultrasound. J Rheumatol. 2005;32(7):1354-1357. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15996077/
※9 Uziel Y, Chapnick G, Oren-Ziv A, Jaber L, Nemet D, Hashkes PJ. Bone strength in children with growing pains: long-term follow-up. Clin Exp Rheumatol. 2012;30(1):137-140. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22325064/
※10 Champion D, Pathirana S, Flynn C, et al. Growing pains: twin family study evidence for genetic susceptibility and a genetic relationship with restless legs syndrome. Eur J Pain. 2012;16(9):1224-1231. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22416025/
※11 Türkdoğan D, Mahmudov R. Overlapping features of restless legs syndrome and growing pains in Turkish children and adolescents. Brain Dev. 2022;44(6):372-379. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35221168/
※12 Wong MW, Williamson BD, Qiu W, Champion D, Teng A. Growing pains and periodic limb movements of sleep in children. J Paediatr Child Health. 2014;50(6):455-460. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24547979/
※13 Hashkes PJ, Gorenberg M, Oren V, Friedland O, Uziel Y. “Growing pains” in children are not associated with changes in vascular perfusion patterns in painful regions. Clin Rheumatol. 2005;24(4):342-345. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16034648/
※14 Jain I, K A, Agarwal N, Nayak S, Jindal A. Does Vitamin D Deficiency Contribute to Growing Pains? A Case-Control Study. Clin Pediatr (Phila). 2026;65(2):196-202. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41047847/
※15 Vehapoglu A, Turel O, Turkmen S, et al. Are Growing Pains Related to Vitamin D Deficiency? Efficacy of Vitamin D Therapy for Resolution of Symptoms. Med Princ Pract. 2015;24(4):332-338. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26022378/
※16 Oberklaid F, Amos D, Liu C, Jarman F, Sanson A, Prior M. “Growing pains”: clinical and behavioral correlates in a community sample. J Dev Behav Pediatr. 1997;18(2):102-106. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9113591/

