子どもの「あせも」を科学する
小さな体に詰まった、大人と大きく変わらない数の汗腺
夏が近づくと、お子さんの首すじや額、背中に小さな赤いブツブツが出てきて、「これ、あせもですよね?」とお問い合わせをいただく機会が増えます。
一見すると湿疹やかぶれと見分けがつきにくく、「ステロイドを塗っていいのか分からない」「顔にできているけれど、あせもって顔にもできるんですか?」というご相談もよくあります。
あせもは、ほとんどの場合は数日で落ち着く、比較的おだやかな皮膚トラブルです。ただし、かゆみが強くてかき壊してしまうと、湿疹のように悪化したり、とびひにつながったりすることがあります。
今回は、あせもを少し「科学」に寄った視点で整理しながら、家庭でできるケアと、受診したほうがよい目安をお伝えします。
子どもの汗腺の数は、大人と大きく変わりません
意外に思われるかもしれませんが、汗を出す工場である「エクリン汗腺」は、子どもでも大人と大きく変わらない数を持っていると考えられています。
ヒトのエクリン汗腺は全身におよそ200〜400万個あるとされ、胎児期から作られ、成長後もその数が大きく増えていくわけではありません。むしろ、成長とともに体表面積が広がることで、単位面積あたりの汗腺密度は下がっていきます。
ここで大切なのが、体の大きさとのバランスです。
汗腺の数が大人と大きく変わらない一方で、赤ちゃんや小さなお子さんの体表面積は大人よりずっと小さい。つまり、同じような数の汗腺が、狭い面積にぎゅっと集まっていることになります。
さらに、子どもは体温調節もまだ発達途中です。遊んだあと、泣いたあと、寝入りばな、発熱後などに、頭や首、背中に汗をかきやすくなります。
小さな体に汗腺が密集していて、汗をかきやすく、汗が皮膚に残りやすい。これが、子どもにあせもができやすい大きな理由です。
あせもは「汗の出口のつまり」が本体です
あせもは、医学的には「汗疹」と呼ばれます。
汗は、皮膚の中にある汗腺で作られ、汗管という細い通り道を通って皮膚の表面に出てきます。この汗の通り道や出口がふさがると、汗が外に出にくくなります。
行き場をなくした汗が皮膚の中にたまったり、周囲にもれたりすることで、小さな水ぶくれや赤いブツブツができます。これがあせもです。
汗の出口がふさがる原因としては、汗そのもの、皮脂、ふやけた角質、皮膚の蒸れなどが関係します。
以前の文章では「表皮ブドウ球菌がつくるバイオフィルム」という表現を入れていましたが、保護者向けには少し感染症のように見えやすいので、ここではあえて詳しく書きすぎず、
汗・皮脂・ふやけた角質などで汗の出口がふさがる
と理解していただくほうが分かりやすいと思います。
あせもの種類
「水晶様汗疹」と「紅色汗疹」
あせもは、汗の通り道がどの深さでつまるかによって、見た目が変わります。代表的には、水晶様汗疹、紅色汗疹、深在性汗疹に分けられます。
① 水晶様汗疹
水晶様汗疹は、皮膚のごく浅いところで汗がたまるタイプです。
透明な水滴のような、1〜2mmほどの小さな水ぶくれがぽつぽつと出ます。赤みやかゆみはあまり目立ちません。皮膚をそっとこすっただけで破れるような、浅くてもろい水ぶくれです。
新生児や乳児に多く、額、こめかみ、首、体幹などにみられることがあります。涼しくして汗を残さないようにすると、自然に落ち着くことが多いタイプです。
② 紅色汗疹
一般に「あせも」と聞いてイメージされるのは、こちらの紅色汗疹です。
皮膚のもう少し深いところで汗管がつまることで、赤いブツブツが集まり、チクチクした刺激感やかゆみを伴います。首、背中、胸、おしり、わき、肘や膝の裏、太ももの付け根など、汗がこもりやすい場所に出やすいです。
子どもでは、顔や頭にもよく出ます。特に、額、こめかみ、ほっぺ、首のしわ、耳の後ろなどは、汗が残りやすい場所です。
③ 深在性汗疹
汗管がさらに深いところでつまるタイプです。高温多湿の環境に長くさらされた場合や、紅色汗疹を繰り返した場合などにみられることがありますが、日本の子どもで日常的に問題になることはまれです。
子どものあせもは、顔や頭にも出ます
保護者の方とお話ししていて、よく誤解されているのが「あせもができる場所」です。
「あせも=首、ひじの裏、ひざの裏、汗がたまるところ」というイメージをお持ちの方は多いのですが、子どもの場合はそれだけではありません。
赤ちゃんや小さなお子さんは、頭や顔にも汗をよくかきます。眠ったあとに頭や額がしっとり湿っているのは、よくあることです。
そのため、皮膚のしわや関節の裏だけでなく、額、こめかみ、ほっぺ、あご、首から耳の後ろにかけてなど、しわの少ない顔の部分にもあせもが出ることがあります。
「顔にできたから、これはあせもではなくアトピーや別の湿疹ではないか」と心配される方もいますが、子どもでは顔や頭のあせもは珍しくありません。
特に、発熱した翌日、暑い日に長時間抱っこしていたあと、毛布や厚着で寝たあとなど、「いつもより汗をかいた状況」のあとに出やすくなります。
家庭でできること
基本は「涼しく、さらっと、清潔に」
あせもの治療と予防の基本は、ほぼ同じです。
大切なのは、次の3つです。
1つ目は、汗をかき続けないこと。
2つ目は、かいた汗を皮膚の上に長く残さないこと。
3つ目は、皮膚を蒸れさせないことです。
具体的には、室温や湿度を調整する、通気性のよい服を選ぶ、厚着を避ける、汗をかいたらこまめに着替える、ぬるめのシャワーで流す、濡らしたガーゼでやさしく拭く、入浴後に皮膚をしっかり乾かす、といった対応が基本になります。
冷房を使うこと自体は悪いことではありません。
もちろん、汗をまったくかかない環境にする必要はありません。大切なのは、汗で蒸れている時間を短くすることです。
抱っこひも、ベビーカー、チャイルドシート、おむつ、寝具の中は、思った以上に汗がこもります。首の後ろや背中をときどき確認し、汗で湿っている場合は、着替えや休憩を入れてください。
また、保湿剤や軟膏を厚く塗りすぎると、かえって汗の出口をふさいで蒸れやすくなることがあります。あせもが強い時期は、必要な保湿はしつつも、ベタベタ厚く塗りすぎないことが大切です。MSDマニュアルでも、あせもでは厚い軟膏や閉塞性の衣類を避けることが勧められています。
お薬の使い方の目安
水晶様汗疹
透明な水ぶくれが中心で、赤みやかゆみがほとんどない水晶様汗疹では、特別な治療をしなくても、涼しくして皮膚をさらっと保つだけで自然に落ち着くことが多いです。
紅色汗疹
赤みやかゆみが強い紅色汗疹では、医師の判断でロコイドなどのステロイド外用薬を短期間使うことがあります。
ここは、少し丁寧に説明しておきたいところです。
ステロイド外用薬というと、副作用を心配される方も多いのですが、小児では、かゆみを我慢できずにかき壊してしまうことのほうが問題になる場合があります。
かき壊しが続くと、皮膚がただれたり、じゅくじゅくしたり、黄色いかさぶたがついたり、とびひにつながったりすることがあります。
そのため、赤みやかゆみが強い場合には、ステロイドを過度に怖がって我慢するよりも、数日しっかり炎症とかゆみを抑えるほうがよいことがあります。
当院では、強い赤みやかゆみがある場合、ロコイドなどを1日1〜2回、2〜3日程度使い、よくなったら中止する、という使い方をすることがあります。
長くても5〜7日ほどで改善が乏しい場合は、あせも以外の湿疹、虫刺され、とびひ、カンジダなどが混ざっていないか確認が必要です。
ロコイドは、日本のステロイド外用薬の分類では「ミディアム」に入る薬です。ただし、必要な部位に、短期間だけ使う場合、過度に副作用を心配する薬ではありません。
一方で、添付文書上も、長期・大量・広範囲の使用や、おむつ部位のように密封に近い状態での使用には注意が必要とされています。また、症状が改善したらできるだけ速やかに中止することも記載されています。
大切なのは、
なんとなく長く塗り続けるのではなく、かゆみが強い数日だけ使い、よくなったらやめる
という使い方です。
ステロイドを塗る前に受診したほうがよい場合
すでに感染が疑われる場合は、ステロイドだけで対応しないほうがよいことがあります。
次のような場合は、自己判断で塗り続けず、受診してください。
赤みが強く、広がっていく。
ブツブツの中心に黄色いうみがある。
じゅくじゅくしている。
黄色いかさぶたが増えてきた。
痛みや熱感が強い。
発熱や機嫌の悪さがある。
強いかゆみで夜眠れない。
数日〜1週間ほどケアしてもよくならない。
むしろ広がっている。
あせもなのか、湿疹、虫刺され、とびひ、カンジダなのか区別がつかない。
ロコイドの添付文書でも、皮膚感染を伴う湿疹・皮膚炎には原則として使用しないこと、必要な場合は抗菌薬や抗真菌薬との併用を考慮することが記載されています。
あせもは家庭で対応できることも多いですが、「じゅくじゅく」「黄色いかさぶた」「膿」「どんどん広がる赤み」がある場合は、とびひなどの二次感染を考える必要があります。
この場合は、自宅ケアだけで様子を見るより、一度診せていただくほうが結果的に早く落ち着くことが多いです。
最後に
あせもは、「夏のささいな皮膚トラブル」のように扱われがちです。
しかし、その裏には、小さな体に高密度に集まった汗腺、汗をかきやすい体の特徴、汗が皮膚に残りやすい環境、汗の出口がふさがる仕組みがあります。
子どものあせもは、首や関節の裏だけでなく、顔や頭にも普通に出ます。
基本は、涼しく、さらっと、清潔に。
この3つを意識して、汗で蒸れる時間を短くしてあげましょう。
一方で、かゆみが強い、眠れない、かき壊している、黄色いかさぶたやじゅくじゅくがある、数日たってもよくならない場合は、無理に自宅で引っぱらずご相談ください。
あせもは、正しく見ればこわい病気ではありません。
ただ、かゆみを放置しすぎないこと、感染のサインを見逃さないことが大切です。
参考文献
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「汗疹」レビュー/改訂 2024年3月.
- Guerra KC, Toncar A, Krishnamurthy K. Miliaria. StatPearls. Updated 2024.
- DermNet. Heat rash / Miliaria.
- Baker LB. Physiology of sweat gland function. Temperature. 2019.
- Cui CY, Schlessinger D. Eccrine sweat gland development and sweat secretion. Exp Dermatol. 2015.
- ロコイド添付文書.

