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薬・おうちケア

「亜鉛華軟膏」と「亜鉛華単軟膏」

名前はそっくり、中身は別のお薬です

「前にもらった亜鉛華と、なんだか塗り心地が違う」。「なんか名前が違う気がする」。そう感じたことのある方は少なくないと思います。実は「亜鉛華」と名のつく塗り薬には、名前がよく似た別々の製剤があり、さらに同じ名前でも作っている会社によって使用感が少しずつ異なります。今回は、亜鉛華軟膏がどんなときに使う薬なのか、似た名前の亜鉛華単軟膏とどう違うのか、そして家庭での塗り方と落とし方までをまとめます。

この記事では2つを見分けやすいように、名前を太字にし、違いの目印である「単」の1文字に下線を引いています。お手元の薬の名前に「単」が入っているかどうかも、ぜひ確かめてみてください。

亜鉛華軟膏はどんなときに使う薬?

亜鉛華(あえんか)とは酸化亜鉛のことです。添付文書に記載されている効能は、外傷、やけど、しもやけ、湿疹・皮膚炎、おしりのかゆみ(肛門そう痒症)などの「収れん・消炎・保護・緩和な防腐」と、ただれ(びらん)・潰瘍・じくじくした面の改善です(※3, ※4)。酸化亜鉛には皮膚を引き締めて分泌物を減らす働きがあり、さらに軟膏として皮膚に密着し、かさぶたをやわらかくして新しい皮膚ができるのを助けるとされています(※3)。強くはないものの抗菌作用もあります。

ステロイドのような強い炎症止めではなく、「皮膚の表面にふたをして守る薬」と考えるとイメージしやすいと思います。


当院での主な使い方――どちらも
亜鉛華軟膏を使います

おしりの保護:おむつかぶれや、下痢が続いて赤くなったおしりに、亜鉛華軟膏を厚めに塗り、便や尿の刺激から皮膚を守ります。

ステロイドとの重ね塗り(重層法):湿疹の部分にまずステロイドを塗り、その上から亜鉛華軟膏を重ねる方法です。上に重ねた亜鉛華軟膏が患部を覆って保護し、じくじくを吸い取ることで、下のステロイドが患部にとどまりやすくなります(※8)。亜鉛華軟膏をリント布に塗ったシート状の製剤も、ステロイドとの重層療法に使われています(※7)。

なお、重度または広範囲のやけどには使えません。酸化亜鉛が傷に付着して、かえって治りを遅らせることがあるためです(※3, ※4)。また、眼には使わないでください(※3)。

「亜鉛華軟膏」と「亜鉛華単軟膏」の違い

効能・効果はどちらもまったく同じです(※3, ※4)。違うのは、主成分の濃さと、薬の土台(基剤)です。まず要点をまとめます。

  • 亜鉛華軟膏:酸化亜鉛20%/土台は白色軟膏(ワセリン+乳化剤)/じくじくを吸い取る(※1, ※3)
  • 亜鉛華単軟膏:酸化亜鉛10%が一般的/土台は単軟膏(ミツロウ+植物油)/じくじくはほとんど吸わない(※2, ※4)

違い1:酸化亜鉛の濃さ

日本薬局方の亜鉛華軟膏は、100g中に酸化亜鉛を20g含みます(※3)。一方、一般的な亜鉛華(10%)単軟膏は100g中10gです(※4)。一般的には長く使い続けると皮膚の乾燥・赤み・かゆみが出ることがあるため、長期使用には10%程度がよいと考えられていると言われます(※1)。ただし、単軟膏タイプでも酸化亜鉛20%の製品(サトウザルベ軟膏20%)が作られていたことがあり(※6)、「単」の有無は濃さではなく基剤の違いを表しています。

違い2:基剤(薬の土台)

亜鉛華軟膏の土台は「白色軟膏」で、白色ワセリンにサラシミツロウと、ソルビタンセスキオレイン酸エステルという乳化剤(界面活性剤)を加えたものです(※3, ※5)。亜鉛華単軟膏の土台は「単軟膏」で、ミツロウとダイズ油(植物油)でできています(※4, ※6)。

なぜ塗り心地が違うのか

ポイントは乳化剤の有無です。白色軟膏には乳化剤が入っているため、油の軟膏でありながら水分を取り込むことができます。そのため亜鉛華軟膏は浸出液(傷やただれから出るじくじくした液)を吸収し、分泌液が多い場合に好んで使われます(※1, ※2)。一方、単軟膏には乳化剤がないので、亜鉛華単軟膏は浸出液をほとんど吸収しません(※2)。逆に、じくじくが少ない場所に亜鉛華軟膏を使うと乾燥が進みすぎ、かゆみが出ることがあるため、症状に応じた使い分けが勧められています

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土台が違えば、手ざわりも変わります。ただし、どちらが硬い・やわらかいと一概に言えるものではありません。同じ「亜鉛華軟膏」「亜鉛華単軟膏」という名前でも、製薬会社によって硬さ・におい・色・使用感が異なります(※9)。見た目では、亜鉛華軟膏は白色で光沢があり、亜鉛華単軟膏は淡黄色がかって植物油特有のにおいがあります(※1, ※4)。

単軟膏の原料であるミツロウやダイズ油は天然物なので、製造ロットによって色の濃さが変わることもありますが、品質には問題ありません(※1, ※2)。

つまり、「前と塗り心地が違う」と感じたときは、①別の製剤(亜鉛華軟膏か亜鉛華単軟膏か)になっている、②同じ製剤でもメーカーが違う、③ワセリンなど別の軟膏と混ぜて処方されていた、といった理由が考えられます。効き目が劣るわけでも、不良品でもありません。

当院の考え方

では、2つの薬は実際どう使い分けるのか。目安は次のとおりです。

  • 亜鉛華軟膏:じくじくしている、ただれている、便や尿からしっかり守りたいとき。浸出液を吸い取る力があるためです(※1, ※2)
  • 亜鉛華単軟膏:じくじくが落ち着いてきたとき、長い期間使うとき。亜鉛華軟膏を続けると乾燥しすぎてかゆみや赤みが出ることがあり、長期使用には10%程度がよいとされています(※1)

おむつかぶれや重層法を行う湿疹は、じくじくしていることが多いため、当院ではどちらにも亜鉛華軟膏を選んでいます。なお、亜鉛華単軟膏も重層法に向くとされており(※1)、どちらが正解というものではありません。皮膚の状態が変われば、薬を切り替えることもあります。

塗りにくさが続いて家で使いづらいときは、我慢せず診察時にお伝えください。使う目的に合う範囲で、製剤の変更や塗り方の工夫を一緒に考えます。薬局で受け取った薬の名前(「単」が入っているかどうか)を見ておいていただけると、相談がスムーズです。

家での塗り方と落とし方

塗り方

薄く伸ばすのではなく、「多すぎるかな」と思うくらい、皮膚が白く隠れる厚さでのせるのがコツです(※8)。厚く塗ることで、便や尿などの刺激から皮膚を物理的に守ります(※8)。ガーゼやリント布に伸ばして貼る場合は、清潔なガーゼに多めにのせ、バターナイフで伸ばすと扱いやすくなります。

リント布を使った重ね塗り(重層法)

リント布は、軟膏をのばして患部に貼るための綿の布です。軟膏をのばした布を貼りつける方法は、ただれの保護やかさぶたを取り除く目的で皮膚科で用いられており、リント布に亜鉛華軟膏をあらかじめ塗った既製品もよく使われています(※11)。

家で行うときの手順は次のとおりです(※12, ※13)。

  1. 入浴後など、患部を清潔にしてから始めます。
  2. リント布を患部の大きさに合わせて切ります。
  3. ヘラやバターナイフで、リント布に亜鉛華軟膏をパンにバターを塗るようにのばします(※13)。
  4. 患部にステロイドを直接塗ります。ステロイドは布にのばすより、直接塗るほうが効果的です(※12)。
  5. ステロイドの上から、軟膏をのばした面を患部に当てます。
  6. テープや包帯で、ずれないようにやさしく固定します(※7, ※13)。

布にのばす亜鉛華軟膏は、厚くしすぎないのがコツです。厚く塗りすぎると軟膏が患部に貼りついて、拭き取りにくくなります(※12)。おしりに直接塗るときの「厚め」とは、ここが違います。

貼りかえるときに残った軟膏は、次に説明するようにオイルでやさしく拭き取ります。きつくこすると湿疹を悪化させてしまいます(※12)。塗る回数や続ける期間は、医師の指示に従ってください。かぶれや悪化が見られたら中止して受診してください(※13)。

落とし方:水ではなく「油」で

酸化亜鉛は水にほとんど溶けず(※3)、土台も油なので、水やお湯で洗ってもなかなか落ちません。無理にこすると、せっかく守っていた皮膚を傷めてしまいます(※8)。

落とすときは、オリーブオイルやベビーオイルをコットンや柔らかい布に含ませ、やさしく拭き取ります(※8)。そのあと、よく泡立てた石けんでなでるように洗い流してください。ゴシゴシこするのは避けましょう(※8)。少し肌に残っていても問題はありません。

また、おむつ替えのたびに全部落とす必要はありません。便で汚れた部分だけをそっと拭き取り、拭いたところに塗り足せば十分です。

保管

室温で保管し、冷蔵庫に入れる場合は凍らせないようにしてください。夏場は直射日光の当たる場所や車の中など、高温になる場所を避けます。

こんなときは受診してください

数日使っても良くならない、赤みが広がってきた、腫れや強い痛み、熱っぽさがある、といった場合は、細菌感染や真菌感染などが隠れている可能性があります。自己判断で使い続けず受診してください(※8)。また、ステロイドとの重層法で、かゆみやぶつぶつ(毛のう炎)が出ることがあると報告されているので(※7)、重ね塗り中に新しい発疹が出てきたときも相談してください。塗った後に赤み・かゆみが強くなった場合は、薬が合っていない可能性があります(※3)。

まとめ

「亜鉛華軟膏」と「亜鉛華単軟膏」は、効能は同じでも、酸化亜鉛の濃さと土台が違う別々のお薬です。乳化剤を含む亜鉛華軟膏は浸出液を吸い取りしっかり密着し、植物油ベースの亜鉛華単軟膏はやわらかく長く使いやすい、という特徴があります。塗り心地の違いは「効かない薬になった」とか「不良品を渡された」いう意味ではありません。使いにくいと感じたら、薬の名前を確認したうえで、遠慮なくご相談ください。落とすときは、水ではなくオイルで、やさしく。

参考文献

参考文献

※1 健栄製薬. 亜鉛華(10%)単軟膏「ニッコー」 製品情報・Q&A. https://www.kenei-pharm.com/medical/products/1269/

※2 丸石製薬. 亜鉛華(10%)単軟膏「ニッコー」 本製品に関するよくあるご質問. https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/products/13964/

※3 日医工. 亜鉛華軟膏「日医工」 添付文書(2023年8月改訂 第1版). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/530169_2649704M1228_1_05

※4 日興製薬. 亜鉛華(10%)単軟膏「ニッコー」 添付文書(2023年10月改訂 第1版). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/530090_2649710M2050_3_04

※5 吉田製薬. 白色軟膏「ヨシダ」 添付文書(2023年8月改訂 第1版). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/830039_7121700X1131_1_05

※6 佐藤製薬. サトウザルベ軟膏10%・20% 医薬品インタビューフォーム(2012年12月改訂). https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2649710M1037

※7 帝國製薬. ボチシート20% 添付文書. https://www.data-index.co.jp/drugdata/pdf/2/470006_2649710S1036_1_03.pdf

※8 ウチカラクリニック. 亜鉛華軟膏の効果・副作用を解説!【医師監修】. https://uchikara-clinic.com/prescription/zinc-oxide-ointment/

※9 yakuzaic.com. 亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の違いは?. https://yakuzaic.com/archives/1259

※10 北海道大学皮膚科学教室 公開資料. 外用療法(実際の外用方法:貼布). https://derm-hokudai.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/6-03.pdf

※11 Medical Tribune. 薬剤師のための皮膚科処方箋/ステロイドと亜鉛華軟膏の重層塗布. https://medical-tribune.co.jp/rensai/articles/?blogid=11&entryid=537663

※12 ms-kodomo.clinic. アトピー性皮膚炎やどひひの時、薬剤の効果を高める重層療法をしてみましょう. https://www.ms-kodomo.clinic/disease/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E%E3%82%84%E3%81%A9%E3%81%B2%E3%81%B2%E3%81%AE%E6%99%82%E3%80%81%E8%96%AC%E5%89%A4%E3%81%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%82%92%E9%AB%98