コラムcolumn
検査

たくさん調べる検査は、本当に正確なのか  ― 多項目検査の落とし穴 ―

最近、「一度にたくさん調べる検査」が増えています。

アレルギー検査では Viewアレルギー39
これは、39種類のアレルゲンに対する特異的IgEを一度に測定する検査です。
一見便利ですが、当院ではこのような網羅的なアレルギー検査にはかなり慎重です。

理由はシンプルです。

たくさん調べるほど、何かは陽性になりやすい。
しかし、それが本当に病気の原因とは限らないからです。

アレルギー検査の「陽性」は、診断ではありません

血液検査で特異的IgEが陽性になることと、
実際に食べたり触れたりした時にアレルギー症状が出ることは、同じではありません。
食物アレルギーの診療の手引き2023でも、抗原特異的IgE抗体陽性は「感作されていること」を示すものであり、食物アレルギー症状が出ることとは必ずしも一致しないとされています。
つまり、View39で何かが陽性になっても、それだけで、

「この食べ物は禁止」
「これが原因」
「これはアレルギー」

とは言えません。

View39で問題になるのは「臨床的な偽陽性」です

ここでいう偽陽性は、機械が単純に間違えて陽性を出す、という意味だけではありません。
もっと大きな問題は、検査では陽性でも、実際には症状が出ないという意味での「臨床的な偽陽性」です。

たとえば、3歳のお子さんで牛乳の特異的IgEが 3.0 kUA/L だったとします。
食物アレルギーの診療の手引き2023では、ミルク特異的IgE抗体価3.0 kUA/Lの場合、牛乳200mLまでの食物経口負荷試験で症状が出る可能性は、1歳未満で約90%、1歳で約50%、2歳以上で約30%とされています。つまり、3歳では「2歳以上」に入ります。

牛乳の検査が陽性でも、実際に症状が出るのは約30%。
逆に言えば、約70%は症状が出ない可能性がある。

これはかなり重要です。
もちろん、実際には症状の既往、食べている量、数値の高さ、他の検査結果を合わせて判断します。
ただし、少なくとも、陽性=食べてはいけないではありません。

39項目も調べれば、何かは出ます

View39の問題は、39項目を一度に調べることです。
1つ1つの項目で「陽性でも実際には症状が出ない」ことがあるのに、それを39個並べるわけです。
そうすると、当然、何かが陽性になる可能性は上がります。
そして、保護者の方は不安になります。

「卵も小麦も牛乳も陽性でした」
「ダニも犬も猫も花粉も出ました」
「何を避ければいいですか?」

しかし、検査で陽性になったものをすべて避ける必要はありません。
特に、すでに普通に食べられている食品で陽性が出た場合、それは「アレルギー」ではなく「感作だけ」の可能性が高いです。
View39は、結果が多く出る分、安心よりも不安を増やすことがあります。

不要な除去は、子どもにとって不利益です

食物アレルギーで大切なのは、必要最小限の除去です。
症状が出る食品は避ける必要があります。
しかし、食べられている食品まで検査結果だけでやめる必要はありません。

不要な除去は、食事の幅を狭くします。
栄養面の不利益もあります。
家族の負担も増えます。

「検査で陽性だったからやめましょう」
という単純な話ではありません。

食物アレルギーの診断には、いつ、何を、どれくらい食べて、何分後に、どんな症状が出たのか。
この経過がとても大切です。
この情報があって初めて、検査に意味が出ます。

症状との対応がはっきりしないままView39を行うと、結果の解釈が難しくなります。

検査は、疑っている病気を確認するために使うものです。
疑っていないものを大量に並べて、「何か出たから原因かもしれない」と考えるのは、順番が逆です。

当院の考え方

当院では、View39のような網羅的アレルギー検査を積極的に行う方針はありません。
アレルギーが疑われる時は、まず症状の経過を丁寧に確認します。
そのうえで、必要な項目を絞って検査します。
必要に応じて採血を行い、負荷試験が必要な場合は総合病院へ依頼させていただきます。

大切なのは、
たくさん調べることではなく、必要な検査を、必要なタイミングで行うこと
です。

検査は診療を助ける道具です。
検査結果が、患者さんやご家族を振り回してはいけません。