コラムcolumn
病気の話, 院長より

子どものいびき

音の大きさより、眠っている間の呼吸を見る

かぜをひいた夜に、子どもがいびきをかくことはあります。一方で、かぜが治っても毎晩のように大きないびきが続き、ときどき息が止まる、胸やみぞおちがへこむ、何度も目を覚ます。
こうした様子は、『よく眠っている音』ではなく、眠っている間の空気の通り道が狭くなっているサインかもしれません。※1、※2

見るべきなのは、いびきの音量だけではありません。呼吸が止まる間、息を再開するときのあえぎ、胸や首元のへこみ、眠りの落ち着かなさ、日中の様子を一緒に見ます。呼吸が苦しそうで、くちびるが紫色、顔色が明らかに悪い、呼吸が弱い場合は119番です。※2、※3

なぜ子どもはいびきをかくのか

子どものいびきで多いのは、鼻からのどへ続く空気の通り道が狭くなることです。鼻づまりに加え、鼻の奥にあるアデノイドや口蓋扁桃が大きいと、眠って筋肉の力がゆるんだときに空気が通りにくくなり、いびきや無呼吸が起こります。肥満や顎の形など、複数の要因が関係することもあります。※1

いびきがあるだけで、すべて睡眠時無呼吸と決まるわけではありません。大切なのは、かぜの期間だけか、繰り返しているか、呼吸の努力や無呼吸を伴うか、眠りと日中の生活に影響しているかです。

口を開けて見える扁桃、見えないアデノイド

口を開けると喉の左右にある口蓋扁桃は、小児科の診察室でも見えます。
これに対してアデノイドは、鼻の突き当たりにある上咽頭にあり、軟口蓋のさらに奥に隠れています。そのため、通常の小児科診察室で覗いても、アデノイドそのものを直接確認することはできません。※1、※4

図:子どもの頭を横から見た模式図(理解のために簡略化しています)。1=アデノイド(咽頭扁桃)。鼻の突き当たりにあり、通常の口腔診察では見えません。2=口蓋扁桃。口を開けると、のどの左右に見える組織です。


したがって、診察室で『口蓋扁桃はそれほど大きくありません』と言われても、それだけでアデノイド肥大を否定できるわけではありません。
アデノイドの大きさや鼻の奥の狭さを確かめる必要があるときは、耳鼻咽喉科で鼻からの内視鏡や単純X線写真などを用いて評価します。※1、※5


夜に見ておきたいこと

  • かぜや鼻水がない時期にも、いびきが続いているか
  • いびきの途中で息が止まり、その後にあえぐように呼吸を再開しないか
  • 息を吸うたびに、鎖骨の上、胸、みぞおちがへこんでいないか
  • 口を開けたまま眠る、寝返りが多い、夜中に何度も起きることがないか
  • 眠っている時間は足りているのに、日中に眠そう、ぼんやりする、落ち着かない様子がないか
  • 食事や体重の増え方など、成長について気になることがないか※1、※2

子どもの睡眠時無呼吸では、日中の強い眠気だけでなく、集中しにくい、落ち着かないといった形で現れることがあります。
睡眠中の呼吸の問題は、成長や発達へ影響することもあるため、繰り返す場合は『いつものいびき』として済ませず相談します。※1、※2


受診時には動画が役立つ

診察室では、子どもは起きています。家庭で見えている睡眠中の呼吸を、そのまま診察室で再現することはできません。眠っている顔だけでなく、胸とあごの動きが入るように動画を撮っておくと、評価の手がかりになります。※1
かぜをひいている夜と、元気な時期の夜で違いがあれば、その両方が参考になります。いびきが始まってからの経過、何晩くらい気づいているか、口呼吸、夜中の覚醒、日中の様子も伝えます。


当院での睡眠評価の進め方

いびきというのは狭いところを通る音です。つまり狭くなりすぎると音がしなくなりますが、その分だけ呼吸の妨げになります。実はいびきをかいているお子さんの一部は、酸素の濃度が下がっているのです。
これは診察室でいくら観察しても分かりません。
当地では幸い(少し距離はありますが)小児の睡眠を評価してくださるクリニックがあります。
そちらで睡眠中の脳波、心電図、筋電図、呼吸状態、酸素飽和度などを測る終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行っていただきます。

この流れは、『いびきがあるからすぐ手術』と決めるためではありません。家庭で見える呼吸、診察で分かる原因、睡眠検査で分かる重症度を重ねて、治療による利益が期待できる子どもを選ぶためのものです。


受診の目安

次のような場合は、日中の外来で小児科または耳鼻咽喉科へ相談してください。

  • かぜが治っても、大きないびきや口呼吸が繰り返す
  • 家族が、眠っている間の無呼吸やあえぎを目撃した
  • 胸やみぞおちがへこむ呼吸、何度も起きるなど、眠りが苦しそう
  • 日中の眠気、集中しにくさ、落ち着かなさ、成長について気になることがある※1、※2

診断では、鼻やのどの診察に加え、必要に応じて内視鏡や画像、睡眠中の呼吸や酸素の状態をみる検査が行われます。治療は原因と重症度で異なり、鼻の病気の治療、経過観察、アデノイドや扁桃への治療などを組み合わせます。

いびきは家でしか見えない症状です。音だけで判断せず、胸の動き、呼吸の間、眠り方、翌日の様子を短い動画とともに持ってきてください。その情報を睡眠検査の結果とつなぐことで、必要な治療をより具体的に考えられます。

参考文献

  1. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:子どもの睡眠時無呼吸
  2. 国立成育医療研究センター:重症睡眠時無呼吸(2歳以下)
  3. 厚生労働省:こんな時は迷わず119へ
  4. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:小児OSAとアデノイドの確認(令和7年)