コラムcolumn
薬・おうちケア, 院長より

お盆にお孫さんを預かる前に

夏休みやお盆は、おじいちゃん・おばあちゃんがお孫さんを預かる機会が増える時期です。
楽しみな一方で、「今の子育ては、私たちの頃と何が違うのだろう」「家の中のどこに気をつければよいのだろう」と迷うこともあると思います。
長く子育てから離れていれば、分からないことがあるのは自然です。昔の経験を否定する必要はありませんが、今の知識や生活環境に合わせて、少しだけ情報を更新しておくと安心です。


今と昔では、子育ての「当たり前」が変わっています

授乳や離乳食、抱っこ、寝かせ方、服装、チャイルドシートなど、昔と今では考え方が変わったことが少なくありません。医学的な知識が増え、家庭で使う製品や法律も変わってきたためです。
また、普段は大人だけで暮らしている家には、子どもにとって気になる物がたくさんあります。ポットや炊飯器のコード、薬、電池、たばこの吸い殻、浴槽の残り湯などは、子どもの目線で一度確認しておきたい場所です(※2)。


名古屋市の「孫育て応援ブックなごまご」などをご活用ください

名古屋市は、祖父母世代と親世代の子育ての違いによる戸惑いを減らすために、祖父母手帳「孫育て応援ブックなごまご」を公開しています(※1)。
冊子には、今と昔の育児の違い、親世代と祖父母世代の関わり方、家の中の危険な場所、困ったときの相談先などが、イラストとともにまとめられています(※2)。

名古屋市祖父母手帳「孫育て応援ブックなごまご」を読む(PDF)

安城市では、祖父母向けに同じような内容を一冊にまとめた独自冊子は、現時点では確認できませんでした。
大都市圏では、比較的この「祖父母手帳」を作成している自治体が多いですが、内容はどれも大きな変わりはありません。
紹介されている近隣の遊べる施設が変わる程度なので、今回は比較的馴染みのある名古屋市のものを紹介しました。
子どもの安全や、今と昔の育児の違いは、市境で変わるものではありません。安城市にお住まいの方にも、十分参考になる内容です。


祖父母の体調や負担も、子どもの安全と同じくらい大切です

「祖父母手帳を使ってください」というだけでは、特にコラムとしての面白みがないので、今回は実際にお世話をすることになる「祖父母自身」にフォーカスしてみようと思います。
親御さんは、いつも頻繁に会っている相手であれば気にならないかもしれませんが、久しぶりに帰省したときに会うお父さんやお母さんは、自分が若い頃に見ていた姿とは少し違うはずです。
お父さんやお母さんが大人になってお子さんを持たれたように、祖父母もまた年を重ねています。

お孫さんを預かると、つい子どもの安全ばかりに目が向きます。ただ、祖父母ご自身の安全も同じくらい大切です。
元気であっても、走り回る子どもを追いかけたり、抱っこや移動を繰り返したりすることは、想像以上に体力を使います。「せっかく来てくれたから」と無理をする必要はありません。
高齢者は、加齢により暑さやのどの渇きに気づきにくくなり、暑さに対する体の調節機能も低下します(※3)。
子どもの熱中症予防だけでなく、預かる側も、冷房を使い、こまめに休憩と水分をとることが必要です。暑い時間の外遊びは短くする、外出は親御さんに任せるなど、最初から無理のない予定にしておきましょう。
心臓や腎臓の病気などで水分量の指示を受けている方は、かかりつけ医の指示を優先してください。

加齢性難聴は、単に小さな音が聞こえにくくなるだけではありません。大きな声でも内容を聞き取りにくく、声が大きすぎるとかえって聞き取りにくいことがあります(※4)。また、内耳の障害では、音が少し大きくなると、感じる大きさが急に増す「補充現象」がみられることがあります(※5)。そのため、聴力が低下している方の中には、子どもの突然の大声や甲高い声を、耳に刺さるようにつらく感じる方もいます。これは、お孫さんをかわいいと思う気持ちが足りないためではありません。
音がつらくなったら、テレビを消す、同時に何人も話さない、静かな部屋で休むなど、刺激を減らしてください。一人で見守っている間に耳栓などで周囲の音を遮るのではなく、可能なら別の大人に見守りを交代してもらう方が安全です。

子どもの声、テレビ、料理、安全確認が同時に重なると、若い頃より疲れやすいこともあります。暑さ、音、睡眠不足、緊張が重なれば、思うように動けなかったり、気持ちの余裕がなくなったりするのは不思議ではありません。預ける側も、「昔はできたでしょう」と求めず、何時間なら無理なく見られるか、途中で休めるか、困ったときに誰が交代するかを一緒に決めておくことが大切です。祖父母の方も、難しいことは遠慮せず断って構いません。


預かる前に、子どものことと祖父母の負担を確認する

冊子を読むことに加えて、次のことを親御さんと共有しておくと、当日慌てにくくなります。

  • 食物アレルギーと、まだ食べたことのない食品
  • いつも使っている薬と、その使い方
  • 昼寝や食事など、普段のおおまかな生活リズム
  • 車に乗せる場合のチャイルドシート
  • 困ったときの連絡先と、かかりつけ医
  • 何時間なら無理なく預かれるか、途中でいつ休むか
  • 体調や音がつらくなったとき、誰に交代を頼むか


分からないことは、当院のLINEへご相談ください

なかのこどもクリニックでは、病気の相談だけでなく、事故予防や食事、家庭での過ごし方など、健康なお子さんについてのご相談もお受けしています。
当院かかりつけのお子さんはもちろん、これまで受診したことのないお子さんでも構いません。LINEで、お子さんのお名前、性別、生年月日をお知らせください。状況をうかがいながら、確認したい点や次に取る行動を一緒に整理します。

ただし、意識が悪い、呼吸がおかしい、けいれんが続くなど緊急性がある場合は、LINEの返信を待たずに119番へ連絡してください。

お孫さんを預かる人が迷わず、親御さんも安心してお願いできることが大切です。お盆を迎える前に、この祖父母手帳を一度開き、ご家庭に必要なところだけでも確認してみてください。小児科は、病気になった後だけでなく、病気や事故を防ぎながら元気に過ごすためにも、お手伝いできる場所でありたいと考えています。


参考文献

  1. 名古屋市:名古屋市祖父母手帳「孫育て応援ブックなごまご」の発行
  2. 名古屋市:名古屋市祖父母手帳「孫育て応援ブックなごまご」(令和6年6月発行)
  3. 厚生労働省:高齢者のための熱中症対策
  4. 太田有美:加齢性難聴の病態と対処法.日本老年医学会雑誌 2020;57(4):397-404
  5. 日本聴覚医学会:リクルートメント(補充)
  6. Fjell AM, Walhovd KB. Structural brain changes in aging: courses, causes and cognitive consequences. Rev Neurosci. 2010;21(3):187-221. PMID: 20879692