RSウイルスの検査は、何のためにするのか
RSウイルスとはどんなものか、検査をすると何が分かり、何が変わるのか
RSウイルスの患者さんが増えています。外来では、「RSの検査をしてください」と言われることがよくあります。反対に、「ほかの医院では検査をしてもらえなかった」というお話も聞きます。原因を知って安心したいと思うのは、自然なことです。
この記事では、RSウイルスがどんなものか、そして、検査をすると何が分かり、何が変わるのかをお話しします。
RSウイルスは、赤ちゃんに多いかぜのウイルスです
RSウイルスは、赤ちゃんや小さなお子さんに多いかぜのウイルスです。はじめは咳と鼻水で、そのあとに呼吸が速くなり、ゼーゼーと音がすることがあります。この状態を、細気管支炎と呼びます。細気管支は、気管支の先にある細い枝で、赤ちゃんでは、少し腫れて痰がたまるだけで、空気が通りにくくなります(※1)。
特別な抗ウイルス薬はなく、治療の基本は、症状を和らげる対症療法です(※2)。入院が必要になる子は一部で、国内の推定では、0歳児の入院は1,000人あたり年に20〜30人です(※2)。
症状は、長引きやすい病気です。救急外来を受診した、初めて細気管支炎になった12か月未満の赤ちゃん95人の研究では、症状が続いた期間の中央値は15日で、4分の1は21日たっても症状が残っていました(※3)。
検査をしても、治療は変わりません
では、RSウイルスの検査をすると、何が起こるのでしょうか。当院では、検査が陽性でも陰性でも、治療や受診の目安は変わりません。治療の基本は対症療法で、受診の目安は、呼吸の様子、飲めているか、おしっこが出ているかで決まるからです。
それでも検査をするのは、2つの意味があるからです。1つは、原因が分かり、保護者の方にきちんと説明できることです。もう1つは、細気管支炎の経過をお話しするきっかけになることです。「ゼーゼーは長引くことがある」と、先にお伝えしておけます。
ただ、RSウイルスが陽性かどうかで、一人ひとりの長さを言い当てることはできません。上の研究で、症状が続いた期間に、RSウイルスが陽性かどうかによる明らかな差は見られませんでした(※3)。
また、過去の記録をさかのぼって調べた研究では、入院した2歳未満の子で、退院後1年以内に、長期の喘息の薬が必要になるほどゼーゼーを繰り返した割合は、RS以外のウイルスの子で16.6%、RSの子で2.5%でした(※4)。
これは今回の病気の長さではなく、そのあとのゼーゼーの話ですが、「RSだから先々まで悪い」とも言えません。
検査で分かるのは、陽性ならRSウイルスだということです
RSウイルスの迅速検査は、鼻の奥の粘液から、ウイルスの成分(抗原)を調べます。診察室で結果が分かります。PCR検査(ウイルスの遺伝子を調べる、より精度の高い検査)と比べた研究をまとめると、RSウイルスにかかっている子に検査をしたとき陽性になる割合(感度)は約75%、かかっていない子に検査をしたとき陰性になる割合(特異度)は約99%でした(※5)。
つまり、陽性ならRSウイルスと考えてよい、ということです。一方、RSウイルスにかかっている子100人に検査をしても、陽性になるのは75人ほどで、25人ほどは陰性になります。陰性でも、RSではないとは言い切れません。研究によって、感度は41〜89%と大きくばらつきます。
見つかりやすさは、症状が出てからの日数でも変わる傾向があります。入院した3歳未満の子の研究では、症状が出始めてから0〜1日で92%、2〜4日で78%、5日以上で65%でした(※6)。
救急外来を受診した1〜59か月の子を、別の種類の測定機器で調べた研究でも、1〜4日は76%、4日を超えると57%でした(※7)。
日本の研究(1種類のキットを、小児と成人のあわせて81人で調べた、キット会社の資金による研究です)では、発症の当日と7日目以降に陰性の例が増えましたが(※8)、当日も見つかりにくいという結果は、この1つの研究だけです。
インフルエンザの迅速検査は、発症から時間がたってから受けたほうがよい、といわれることがあります。RSウイルスの検査には、「何時間たってから」と決めた研究は、見つかりませんでした。
数え方は、発熱やゼーゼーが出た日ではなく、症状が出始めた日からです。細気管支炎の子を調べた研究では、研究に登録された時点で、咳がすでに約4日続いていました(※9)。
ゼーゼーが目立って受診するころには、すでに数日たっていることも多く、「ゼーゼーが出てからすぐ検査したのに陰性だった」ということも、ありえます。
だからといって、検査に合わせて受診の時期を決める必要はありません。受診するかどうかは、お子さんの様子で決めていただいて大丈夫です。
保険で検査できるのは、1歳未満などに限られています
RSウイルスの迅速検査は、保険では、入院中の患者、1歳未満の乳児、そして、パリビズマブまたはニルセビマブという予防の抗体製剤の適応になる患者のいずれかに当てはまり、RSウイルス感染症が疑われる場合に使えます(※10)。外来では、1歳未満が目安になります。
1歳未満が対象になっている理由は、通知には書かれていません。重くなりやすい年齢だからだと、私は理解しています。国内の請求データでは、2歳未満のRSウイルスによる入院は、1,000人あたり年に23.2人で、生後6か月未満ではさらに多く、35.4人でした(※2)。
当院は、診察や検査の費用を一定額にまとめる仕組みで診療しています。当院の方針として、診察の必要に応じて、この検査を行っています。診察や検査ごとに費用を計算する仕組みのクリニックでは、保険の対象にならない場合(たとえば、抗体製剤の対象でない、1歳以上の外来のお子さん)には、検査を行っていないところもあります。
1歳以上のお子さんで、検査をしてもらえなかったとき、不安になるかもしれません。でも、診察が足りなかったということではありません。結果で治療や受診の目安は変わらないからです。咳、ゼーゼー、呼吸の様子、飲めているか、おしっこが出ているかを診て、判断しています。
ヒトメタニューモウイルスも、同じようなかぜです
ヒトメタニューモウイルスも、RSウイルスと同じように、ゼーゼーを伴うかぜを起こしやすいウイルスです。症状だけでは、RSウイルスとの区別はつきにくいです。
ただ、RSウイルスの検査で調べられるのはRSウイルスだけで、ヒトメタニューモウイルスは分かりません。別の迅速検査があり、保険では、6歳未満で、画像や聴診で肺炎が強く疑われる場合に限られます(※11)。
まとめ
- RSウイルスは、赤ちゃんに多いかぜのウイルスで、治療の基本は症状を和らげる対症療法です
- 外来の診療では、RSウイルスの検査の結果で、治療や受診の目安は変わりません。検査は、原因の説明と、経過をお話しするきっかけになります
- 陽性ならRSウイルスと考えてよいのですが、陰性でもRSではないとは言い切れません(感度は約75%)。症状が出てから日が浅いうちのほうが見つかりやすい傾向があります
- 保険で外来で使えるのは、1歳未満が目安です。1歳以上で検査をしていないのは、診察が足りないからではありません
ご不明な点は、お気軽にご相談ください。
参考資料
※1 Bower J, McBride JT. Bronchiolitis. In: Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases. 2015:818-822.
※2 国立感染症研究所. RSウイルス母子免疫ワクチンと抗体製剤 ファクトシート. 2025年10月22日. https://id-info.jihs.go.jp/immunization/basics/facts-sheets/RS_20251022.pdf
※3 Petruzella FD, Gorelick MH. Duration of illness in infants with bronchiolitis evaluated in the emergency department. Pediatrics. 2010;126:285-90. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20624799/
※4 Valkonen H, et al. Recurrent wheezing after respiratory syncytial virus or non-respiratory syncytial virus bronchiolitis in infancy: a 3-year follow-up. Allergy. 2009;64:1359-65. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19416146/
※5 Bruning AHL, et al. Rapid Tests for Influenza, Respiratory Syncytial Virus, and Other Respiratory Viruses: A Systematic Review and Meta-analysis. Clin Infect Dis. 2017;65:1026-32. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28520858/
※6 Miernyk K, et al. Performance of a rapid antigen test (Binax NOW RSV) for diagnosis of respiratory syncytial virus compared with real-time polymerase chain reaction in a pediatric population. J Clin Virol. 2011;50:240-3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21163694/
※7 Eklundh A, et al. Evaluation of the Antigen mariPOC Respi Test Versus PCR in Relation to Immunological Viral Response in Children With Lower Respiratory Tract Infection. Int J Microbiol. 2025;2025:8832419. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41132494/
※8 Tamura D, et al. Temporal Trend of the SARS-CoV-2 Omicron Variant and RSV in the Nasal Cavity and Accuracy of the Newly Developed Antigen-Detecting Rapid Diagnostic Test. Diagnostics (Basel). 2024;14:119. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38201428/
※9 Thompson M, et al. Duration of symptoms of respiratory tract infections in children: systematic review. BMJ. 2013;347:f7027. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24335668/
※10 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号)別添1 D012 (15). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757385.pdf
※11 同 D012 (17). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757385.pdf

