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アレルギー

離乳食のあと、数時間してから吐く赤ちゃんへ ― FPIES(食物蛋白誘発胃腸炎症候群)とは

「胃腸炎かな?」と思ったら、いつも同じ食べ物のあとだった

赤ちゃんが食後に吐くと、保護者の方はとても心配になります。食べすぎ、咳き込み、胃腸炎、眠気、体調不良、食べ慣れないものなど、原因はいろいろあります。

ですから、食後に1回吐いたからといって、すぐに食物アレルギーと考える必要はありません。

ただ、「同じ食べ物を食べたあと、いつも数時間してから何度も吐く」というパターンが繰り返される場合、FPIES(エフパイス、食物蛋白誘発胃腸炎症候群)という、少し特殊な食物アレルギーの可能性があります。

頻度は高くなく、イスラエルの出生コホート研究では牛乳FPIESが0.34%、米国の人口ベース研究では小児FPIESが0.51%と報告されています。子どもの食後嘔吐の大多数はFPIESではありません。それでも、見逃されると脱水やショックにつながることがあるため、知っておく価値のある病気です。

じんましんが出ない、食物アレルギー

一般的な食物アレルギー(即時型)では、食べてから数分〜2時間以内に、じんましん、咳、ゼーゼー、まぶたの腫れといった症状が出ます。皮膚や呼吸の症状がはっきり出るので、保護者の方も気づきやすく、医療機関でも診断が比較的しやすいタイプです。

FPIESはこれと大きく違います。皮膚やのどにすぐ症状が出るのではなく、食べてから1〜4時間ほど経ってから、急に何度も吐くのが特徴です。じんましんやゼーゼーは目立ちません。2017年に発表された国際コンセンサスガイドラインでも、急性FPIESの中心症状は「原因食物を食べて1〜4時間後の反復嘔吐」とされています。

数時間してから症状が出るため、最初は急性胃腸炎と区別がつきにくく、何度か繰り返してはじめて「いつも同じ食べ物のあとだ」と気づかれることが多い病気です。

また、「腸の症状だけだから軽い」というわけではありません。反応が強いと、顔色が悪くなったり、ぐったりしたり、脱水になったりすることがあります。


FPIESを疑うサインは「再現性」

細かいチェックリストよりも、まずはこの一文で十分です。

同じ食べ物を食べるたびに、1〜4時間後に何度も吐く。じんましんやゼーゼーはない。

このパターンが繰り返される場合に、FPIESを疑います。

日本では特に、離乳食で卵黄を進めている時期に、食後2〜3時間で繰り返し吐くケースが増えています。卵黄のほか、牛乳、魚、米、大豆などでも起こることがあります。原因食物は国によって違いがあり、日本では卵黄が最も多いことが、国立成育医療研究センターを中心とした多施設研究で報告されています。

逆に、1回だけ吐いた、食べすぎた、咳き込んで吐いた、園や家族で胃腸炎が流行っている、発熱や下痢が先にある、という場合は、まずFPIES以外の原因から考えます。


血液検査ではわかりにくい病気です

一般的な食物アレルギー(即時型)では、血液検査で「特異的IgE抗体」を調べると、原因となりやすい食物がある程度予測できます。実際の診療でも、IgEの値は診断や治療方針を決める大きな手がかりになります。

ところがFPIESでは、このIgEの値が陰性のことが多く、血液検査だけでは診断できません。つまり「血液検査が異常なし=食物アレルギーではない」とは言えない病気です。

最近の研究では、FPIESは即時型アレルギーとは違う仕組みで起こると考えられています。腸の局所での免疫反応、嘔吐に関わる神経の経路、腸内細菌叢などが複雑に関わっており、2025年に発表された米国NIAID(国立アレルギー感染症研究所)のワークショップ報告でも、自然免疫・神経内分泌応答・腸内細菌叢を含めて理解する必要があると整理されています。

結果として、FPIESの診断と寛解(治ったかどうか)の判定は、経口食物負荷試験(OFC: Oral Food Challenge)に頼らざるを得ない場面が出てきます。経口食物負荷試験とは、医療機関で、原因と疑われる食物を医師の管理下で少量ずつ食べてもらい、症状が出るかどうかを確認する検査のことです。


食後に吐いたとき、家ではどうすればよいか

まずは、何を食べたか、何時に食べたか、何時に吐いたか、何回吐いたかを記録してください。FPIESかどうかの判断は、その瞬間の症状そのものよりも、「同じ食べ物で同じ時間帯に繰り返すか」という再現性が決め手になります。記録があると、医師が判断する時の精度も上がります。

嘔吐が1〜2回で、顔色がよく、水分が少しずつ取れて、元気もある場合は、しばらく時間をあけてから少量ずつ水分を試します。家で様子を見て大丈夫なケースもあります。

一方で、何度も吐く、顔色が悪い、ぐったりする、水分が取れない、おしっこが少ない場合は、早めに受診してください。急性FPIESでは、繰り返す嘔吐から脱水やショックに進むことがあります。


「もう一度食べさせてみる」のは、平日の日中に

FPIESかもしれないと感じたとき、保護者の方が悩むのが「もう一度同じものを食べさせて確かめてよいか」という点だと思います。原則は、自己判断で何度も試すのではなく、まずは医師に相談していただくのが安全です。当院では、FPIESの可能性が高くないと考えられる場合や症状が強くなくて再度症状が出ても許容できると考えた場合、再度の摂取をお勧めすることがあります。

そのうえで、軽い症状で家で様子を見ながら少量試す段階に入る場合は、必ず病院やクリニックが診療している平日の日中に行ってください。

FPIESの症状は、食べてから1〜4時間後に出てきます。朝食や昼食で試せば、もし症状が出ても、その日のうちにかかりつけ医や救急外来を受診できます。一方、夕方や夜、休日の前に試すと、症状が出たときに対応できる医療機関が限られ、不安な数時間を家で過ごすことになりかねません。

「平日の午前中、診療時間内に、少量から」が基本ルールです。


診断されたら、治療と検査の進め方

FPIESの治療の基本は、原因と考えられる食べ物を、いったん食事から外すことです。

ただし、1回吐いたからといって何種類もの食材を一度に中止すると、離乳食が進まなくなり、栄養面でも不利益が出ます。除去する範囲は、症状の経過を見ながら、医師と相談して決めていきます。

そして、食べられるようになったかどうかを確かめるために、経口食物負荷試験(OFC)が必要になることがあります。FPIESの負荷試験は、即時型アレルギーの負荷試験とは違って、食べてすぐに症状が出るとは限らないため、観察時間も長めに取られます。2026年に発表されたOFC標準化に関する報告でも、FPIESの負荷試験では少なくとも4〜6時間の観察が推奨されています。

なかのこどもクリニックでは、安全面を考え、FPIESが疑われるお子さんの経口食物負荷試験は、入院や緊急対応ができる総合病院へご紹介しています。

ご家庭で自己判断で再開するのではなく、症状の強さ、原因食物、年齢、これまでの経過を確認したうえで、必要に応じて専門的に評価できる医療機関へつなぎます。


多くは成長とともに食べられるようになります

FPIESと診断されても、一生その食べ物を食べられないわけではありません。多くのお子さんは成長とともに腸の反応が落ち着き、食べられるようになります。

ただし、改善する時期は原因となる食べ物によって違います。

牛乳FPIESは比較的早く治ることが多く、日本の単施設研究では、牛乳FPIESの32例のうち36か月までに96.9%が耐性を獲得したと報告されています。

一方で、卵黄や魚では時間がかかることもあります。日本の単施設研究によれば、卵黄FPIES 50例の累積寛解率は24か月で35.6%、36か月で51.0%とされており、すぐには再開できないケースもあります。

大切なのは、「ずっと食べられない」と決めつけないことと、「もう大丈夫だろう」と家庭で無理に試さないことです。経口食物負荷試験のタイミングは、医師と相談しながら決めていきましょう。


まとめ

FPIESは、食後1〜4時間ほど経ってから強い嘔吐を繰り返す、少し特殊な食物アレルギーです。じんましんやゼーゼーは出ません。子どもの食後嘔吐の多くはFPIESではありませんが、「同じ食べ物を食べると毎回、数時間後に何度も吐く」という再現性があるときは、FPIESの可能性を考えます。

血液検査だけでは診断できないことが多く、診断と寛解の判定には経口食物負荷試験が必要になることがあります。

食後に何度も吐いたときは、何を食べたか、何時に食べたか、何時に吐いたかを記録してください。強い嘔吐、顔色不良、ぐったり、水分が取れない、おしっこが少ない、といった様子があれば、早めに受診をお願いします。

もう一度同じ食べ物を試してみるときは、必ず平日の日中、診療時間内に、少量から始めてください。

FPIESと診断されても、多くは成長とともに食べられるようになります。なかのこどもクリニックでは、FPIESが疑われるお子さんの経口食物負荷試験は、安全のため総合病院へご紹介しています。気になる症状があれば、ご相談ください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としています。お子さんの症状が気になる場合は、医療機関にご相談ください。

参考文献

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