コラムcolumn
検査

学校検尿で血尿・蛋白尿を指摘されたら

学校検尿で「再検査」「精密検査」と書かれた紙を渡されると、ほとんどの保護者は驚きます。腎臓に何かまずいことが起きているのだろうか――そう感じるのは自然なことです。

結論から言うと、学校検尿で異常を指摘されたお子さんの大多数は、最終的に病気ではないと判明します。一方で、毎年わずかに見つかる「治療を始めたほうがよい腎炎」を見逃さないために、この検査は大きな意味を持っています。

本稿では、学校検尿の目的、結果の読み方、そして「なぜ毎年受け続けることが重要か」を整理します。

※本稿は小・中・高の「学校検尿」に関する解説です。3歳児健診等とは目的が異なります。

 

1. 学校検尿は「症状のない腎炎」を見つけるための検査

日本の学校検尿は1974年に始まり、半世紀以上の歴史があります。主なターゲットは、日本人に多いIgA腎症をはじめとする「慢性糸球体腎炎」です。

「沈黙の病」を見つける:慢性腎炎は、初期には自覚症状がほぼありません。だるさやむくみが出る頃には、腎臓のフィルター(糸球体)で元に戻らない変化が進んでいることが多いのです。

透析導入の減少に貢献:この仕組みにより、若くして透析が必要になる患者さんは明らかに減少しました。

糖尿病の早期発見:副次的に尿糖も調べており、無症状の2型糖尿病が発見されることもあります。

 

学校検尿は「症状があるから受ける」のではなく、「症状のないうちに病気の芽を摘む」ための検査なのです。

 

2. 「異常」と言われた人のほとんどは、病気ではない

学校検尿は、腎炎を見逃さないために「あえて網を広く」張っています。そのため、二次検尿で「異常あり」とされる子の数は、実際の患者数よりずっと多くなります。

診断の頻度:実際に慢性腎炎と診断されるのは、2,000人に1人(約0.05%)程度です。

所見別の「腎炎の確率」:

 ・蛋白尿のみ:約1%

 ・血尿のみ:約2%

 ・蛋白尿+血尿の両方:約60%

 

血尿だけ・蛋白尿だけのケースは、その大半が経過観察でよいものです。再検査の通知で慌てる必要はありません。両方陽性の場合も、すぐに腎炎が確定するわけではなく、まずは「早朝第一尿」での再検査で、所見が持続するかを確認するのが第一歩です。

 

3. 結果のパターン別に、何が起きているか

●血尿(潜血)だけの場合

見た目では分からない「顕微鏡レベルの血尿」がほとんどです。精密検査では、赤血球の形を観察します。

糸球体型赤血球:腎臓のフィルターをすり抜けてくる過程で、いびつに形が変わったもの。腎臓由来を示唆します。

非糸球体型赤血球:尿の通り道(膀胱など)から出た、きれいな円盤形のもの。

 

多くは「良性家族性血尿」や原因不明の「無症候性血尿」で、運動制限も不要です。ただし、尿がコーラ色(肉眼的血尿)になったり、蛋白尿も出てきた場合は専門的な対応が必要です。

 

●蛋白尿だけの場合

思春期のお子さんで多いのが「体位性蛋白尿(起立性蛋白尿)」です。立っていると尿に蛋白が漏れますが、寝ている間(早朝)は出ないという生理的な現象で、病気ではありません。

重要:再検査の際は、必ず「寝起きの最初の尿(早朝第一尿)」を提出してください。動き回った後の尿だと、本来病気でない蛋白まで拾ってしまいます。

 

●血尿と蛋白尿が「両方」出ている場合

これが最も注意が必要なパターンです。腎炎の可能性がはっきり高まるため、持続する場合は「腎生検(組織を一部採取して顕微鏡で診る検査)」を行い、早期治療につなげます。

 

4. 検尿は「毎年」受けてこそ意味がある

慢性腎炎は、ある時期にいきなり発症します。「去年が正常だったから今年も安心」とは言えません

「元気にしている今」だからこそ、毎年提出する。これが、お子さんの腎臓を守る一番確実な方法です。

 

5. 結果の紙を受け取ったら、何をすべきか?

まず落ち着いて、放置せずにかかりつけの小児科を受診してください。

受診のコツ:「早朝第一尿」を持参するか、病院で採尿してください。

 

【至急受診】が必要なケース

① 検査結果用紙に次のいずれかが書かれていた場合

  1. 尿蛋白が(3+)以上
  2. 肉眼で見える血尿(赤〜茶色・コーラ色の尿)
  3. 血尿と蛋白尿の両方が陽性で、かつ「2+」以上が重なっている場合

② 検査結果とは別に、家庭で次のような変化に気づいた場合

  1. 朝起きた時の「顔やまぶたのむくみ」がある
  2. 急に尿の量が減った、または体重が数日で急に増えた

これらは急性糸球体腎炎やネフローゼ症候群のサインである可能性があるため、数日以内の受診をお願いします。

 

再検査の通知は、「腎臓を守る仕組みが、正しく働いた証拠」です。

「異常なし」だった年も、来年の検尿は必ず受けてください。継続することではじめて、お子さんの将来を守ることができます。

 

主な参考資料

  1. 日本学校保健会 編. 学校検尿のすべて 令和2年度改訂. 日本学校保健会; 2021.
  2. 日本小児腎臓病学会 編. 小児の検尿マニュアル 改訂第2版. 診断と治療社; 2022.
  3. 愛知県医師会・愛知腎臓財団 編. 愛知県腎臓病学校検診マニュアル 改訂第2版. 2018.
  4. Yamagata K, Takahashi H, Suzuki S, et al. Age distribution and yearly changes in the incidence of end-stage renal disease in Japan. Am J Kidney Dis. 2004;43(3):433-443. PMID: 14981601.
  5. Yoshikawa N, Ito H, Sakai T, et al; Japanese Pediatric IgA Nephropathy Treatment Study Group. A controlled trial of combined therapy for newly diagnosed severe childhood IgA nephropathy. J Am Soc Nephrol. 1999;10(1):101-109. PMID: 9890315.
  6. Kamei K, Nakanishi K, Ito S, et al; Japanese Pediatric IgA Nephropathy Treatment Study Group. Long-term results of a randomized controlled trial in childhood IgA nephropathy. Clin J Am Soc Nephrol. 2011;6(6):1301-1307. PMID: 21493743.
  7. 日本糖尿病学会 編. 糖尿病診療ガイドライン2024 第18章 小児・思春期における糖尿病.
  8. 金子一成. 学校検尿制度による小児腎疾患の診断と治療. Sysmex Journal Web. 2005;6(3).
  9. Leung AKC, Wong AHC, Barg SSN. Proteinuria in Children: Evaluation and Differential Diagnosis. Am Fam Physician. 2017;95(4):248-254.