コラムcolumn
薬・おうちケア, 院長より

コンセントを口に入れてしまったら

診療中やLINE相談で、ときどきこんなご相談をいただきます。

「目を離したすきにコンセントをなめていました。」
「充電コードを口に入れていました。」
「今は元気ですが、あとから感電の症状が出ませんか?」
「脳や発達への影響が心配です。」

実際にその場を見ていないと、「もしかしたら感電していたのでは」と不安になりますよね。

しかし、多くの場合は必要以上に心配する必要はありません。大切なのは、「コンセントを触った」という事実だけではなく、何を口にしていたのか、そしてその後のお子さんの様子です。

「充電コード」と「壁のコンセント」は危険性が違います

まず知っておいていただきたいのは、同じ「コード」でも流れている電気は同じではないということです。

家庭用コンセントには100Vの電気が流れています。
一方、スマートフォンの充電器は、その100Vの電気を充電器の中で通常は約5Vまで下げてからスマートフォンへ送っています。つまり、充電ケーブルの先端を流れているのは100Vではなく、乾電池数本程度の低い電圧です。(※1)
そのため、充電ケーブルの先端をなめただけで、家庭用100Vのような感電が起こることは通常ありません。(※1)

※急速充電に対応した充電器では9Vや15V、20Vなどになるものもありますが、これは充電器と対応機器が通信した場合にのみ切り替わる仕組みです。家庭用コンセントの100Vがそのままケーブルの先端に流れているわけではありません。(※1)

一方で注意が必要なのは、

  1. 壁のコンセントそのもの
  2. コンセントに差し込まれたプラグ周囲
  3. 被覆が破れて中の金属線が露出したコード  です。


「コンセントを触った=必ず感電」ではありません

電気でけがをするためには、電気が体の中を流れる必要があります。
乳児が指先だけでコンセントの片方の穴に触れた程度では、通常は感電は起こりません。
一方で、日本小児科学会のInjury Alertでは、鍵や針金などの金属をコンセントへ差し込んで電撃傷を負った事故が報告されています。(※2)

つまり、本当に危険なのは、

  • ヘアピン
  • クリップ
  • 針金

をコンセントへ入れてしまう状況や、壊れたコードの金属部分に触れてしまうことです。(※2、3)

本当に感電したときは、その場で異変が起こります

保護者が一番心配されるのが、「今は元気だけれど、明日になって症状が出ませんか?」ということです。

電撃傷で問題となる症状は、基本的には受傷した直後から現れます。(※3)

例えば、

  • ぐったりする
  • 意識がぼんやりする
  • 呼吸がおかしい
  • けいれん
  • 口角や口の中の白っぽい変化や黒っぽい変色
  • 水ぶくれややけど     などです。

反対に、

  • 普段どおり授乳や食事ができる
  • 元気に遊んでいる
  • 呼吸や顔色に変化がない
  • 口や手にやけどがない

という状態で半日から1日ほど普段どおり過ごせているのであれば、重大な感電が起きていた可能性は極めて低く、その後になって症状が現れることを心配する必要はほとんどありません。(※3)

「あとから発達に影響が出るのでは?」

この質問もよくいただきます。
電気による神経障害が問題になるのは、重い電撃傷で意識障害や心停止、不整脈、けいれんなどを伴った場合です。(※3)
そのような急性期の症状がなく元気に過ごしているお子さんで、数日後や数か月後になって突然発達へ影響が出ることを心配する必要は通常ありません。(※3)
ただし、口の中に実際にやけどができていた場合は少し話が違います。口のやけどは時間がたってから目立ってくることがあり、受傷後1〜2週間ほどして傷口から出血することがあります。(※4)
口の中や口角に白い部分や水ぶくれ、出血がある場合は受診してください。

こんなときは受診しましょう ー次のような場合は、医療機関へ相談してください。ー

  • 口角や口の中に白色・黒色の変化、水ぶくれ、出血がある
  • 「バチッ」という音や火花を見たり聞いたりした
  • やけどがある
  • 意識が悪い
  • けいれんがあった
  • コードの被覆が破れ、中の金属線が見えていた

一番大切なのは事故を防ぐ環境づくりです

日本小児科学会のInjury Alertを見ると、重い事故の多くは、金属をコンセントへ入れてしまったケースです。(※2)
生後6〜10か月頃になると、赤ちゃんは興味を持ったものを何でも口へ運ぶようになります。
この時期は、「触らないように教える」ことよりも、「事故が起きない環境を作る」ことが、お子さんを守る一番の方法です

コンセントを口に入れてしまうと、多くの保護者の方が「見ていない間に何か起きていたのでは」と心配されます。
でも実際には、状況を整理してお子さんの様子を確認すると、安心して見守れるケースがほとんどです。
この時期は何でも口に入れて確かめる発達の一段階でもあります。コンセントカバーやコードの整理など、少し環境を見直すだけでも事故はかなり防ぐことができます。

心配な症状があるときはもちろん受診していただきたいですが、何も症状がないのに「あとから何か起きるのでは」と必要以上に不安になる必要はありません。
お困りのことがあれば、ご来院いただくかLineでご相談ください。


参考文献

※1 消費者庁.Vol.643 スマホ等の充電器の取扱いに注意―感電や火災等の事故も―.2024.
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20240116/

※2 日本小児科学会.Injury Alert No.65 コンセントに鍵を差し込んだことによる手掌電撃傷(類似事例「コンセントに針金を入れたことによる電撃傷」を含む).
https://www.jpeds.or.jp/society-activities/40035.html

※3 消費者庁.Vol.616 コンセントやプラグでの感電に注意!.2023.
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20230118/

※4 Gifford GH Jr, Marty AT, MacCollum DW. The Management of Electrical Mouth Burns in Children. Pediatrics. 1971;47(1):113-119.