夏休み・お盆休みに迷わない 子どものホームケア
夏休みやお盆休みは、帰省、旅行、花火、水遊びなど、普段と違う予定が増える時期です。
一方で、かかりつけ医が休診のときに限って、熱が出る。咳が増える。虫に刺される。吐いてしまう。
そんなとき、保護者が本当に知りたいのは、病名よりも「今、家で何をするか」「どこまで待てるか」「いつ受診するか」ではないでしょうか。
この記事では、夏に起こりやすい11のトラブルについて、最初の対応と受診の目安をまとめます。
病名より先に、4つを見ます
熱の高さや発疹の数だけでなく、次の4つを確認してください。
- 呼吸:息が苦しそうではないか。胸やみぞおちがへこんでいないか
- 反応:目が合うか。呼びかけにいつも通り反応するか
- 水分:飲めているか。尿が出ているか
- 経過:短時間で急に悪くなっていないか
「いつものこの子と明らかに違う」は、大切な観察所見です。
迷わず救急要請を考えるサイン
- 呼びかけへの反応が悪い、意識がおかしい、けいれんしている
- 唇が紫色、息ができない、強い呼吸困難がある
- 全身のじんましんに、呼吸困難、繰り返す嘔吐、ぐったりなどを伴う
- 暑い場所にいたあと、受け答えがおかしい、けいれんしている
- 広範囲・深いやけど、電気や薬品によるやけど、煙を吸った可能性がある
このような場合は、飲食させたり、自家用車で様子を見ながら移動したりせず、119番に相談してください。(※14、15、16、20)
共通の救急サインの参考リンク
1.発熱したとき
まず見ること
体温の数字だけで重症度は決まりません。
目が合うか、飲めるか、尿が出ているか、呼吸が苦しくないかを見ます。同じような高熱でも、水分を取って遊べる子と、ぐったりして飲めない子では対応が違います。(※2)
家でできること
- 一度にたくさん飲ませず、飲めるものを少しずつ勧める
- 厚着にせず、本人が心地よい室温と服装にする
- 食事は無理に進めず、まず水分を優先する
- 解熱剤は「体温を平熱に戻すため」ではなく、つらくて眠れない、飲めないときに、処方された量で使う
眠れている子を起こしてまで解熱剤を使う必要はありません。解熱剤は熱性けいれんの予防薬ではありません。(※1)
受診の目安
ぐったりして反応が悪い、呼吸が苦しそう、水分が取れず尿が減る、強い頭痛や繰り返す嘔吐がある場合は、早めに受診してください。
生後3か月未満で38℃以上の発熱がある場合は、元気そうに見えても、すぐに医療機関へ相談してください。(※2)
発熱の参考リンク
- ※1 当院コラム「解熱剤の使い方について」
- ※2 当院コラム「夏風邪は熱が高いのか」
2.咳が出るとき
まず見ること
咳の回数より、咳と咳の間に普通に呼吸できているかを見ます。
ゼーゼーする、息を吸うときに変な音がする、胸やみぞおちがへこむ、横になれない、話せない、飲めないときは要注意です。(※5、6、17)
家でできること
- 鼻水が多いときは、鼻をかむ、または鼻吸いをする
- こまめに水分を取る
- 室内の乾燥を避け、たばこや強い香りを遠ざける
- 起きている間は、抱っこなどで本人が楽な姿勢にする
鼻水がのどに流れ込むことで、夜や明け方の咳が増えることがあります。(※3、4)
赤ちゃんを枕やクッションで傾けたまま寝かせるのは避け、眠るときは平らで安全な寝床に、あお向けで寝かせてください。(※4)
受診の目安
呼吸が速く苦しそう、胸がへこむ、顔色が悪い、水分が取れない、咳で眠れない状態が続く場合は受診してください。犬が吠えるような咳や、息を吸うときの音がある場合も、早めの相談が必要です。(※5、6、17)
咳の参考リンク
- ※3 当院コラム「急性上気道炎(かぜ症候群)―保護者のためのガイド」
- ※4 当院コラム「風邪の途中で『咳が悪化した』と感じるのはなぜ?」
- ※5 当院コラム「喘息性気管支炎―赤ちゃんの『ゼーゼー』」
- ※6 当院コラム「クループ症候群」
- ※17 国立成育医療研究センター「気管支ぜん息」
3.虫に刺されたとき
まず見ること
刺された場所だけが赤く、かゆいのか。全身にじんましんが出たり、呼吸や顔色がおかしくなったりしていないかを分けて考えます。
家でできること
- まず皮膚をやさしく洗う
- 冷たいタオルや、布で包んだ保冷剤で冷やす
- 爪を短くし、かき壊しを減らす
- 何に刺されたか分かれば、写真を残す
- かゆみ止めは、年齢に合う手持ちの薬や処方薬を用法通りに使う
蜂に刺された場合、まずその場から離れて安静にします。アンモニアを塗る方法には効果がありません。(※12)
受診の目安
息苦しい、全身にじんましんが出る、腹痛や嘔吐を伴う、ぐったりする場合は救急要請を考えます。
腫れが広がり続ける、熱を持って痛い、膿が出る、目の周りや口の中を刺された場合も受診してください。(※12、14)
虫刺されの参考リンク
4.じんましんが出たとき
まず見ること
じんましんは、盛り上がった赤い発疹が急に現れ、同じ場所の発疹はしばらくすると跡を残さず消えるのが典型です。虫刺されのように、同じ発疹が何日も残る場合とは経過が違います。(※13)
発疹だけか、咳、息苦しさ、唇やまぶたの腫れ、繰り返す嘔吐、ぐったりを伴うかを確認してください。
家でできること
- 発疹が消える前に、全体と近接の写真を撮る
- 出た時刻、直前に食べたもの、薬、運動、入浴、虫刺されなどを記録する
- 暑さ、激しい運動、熱い風呂を避け、涼しくする
- 以前に処方された抗ヒスタミン薬があれば、指示通りに使う
皮膚に塗る薬だけでは、じんましん自体には十分な効果が出にくいとされています。一度出ただけで食物を決めつけ、自己判断で除去を続けるのも避けましょう。(※13)
受診の目安
呼吸困難、強い咳やゼーゼー、繰り返す嘔吐、意識がおかしい、ぐったり、唇が紫色などを伴う場合は、アナフィラキシーを考えて救急要請します。処方されたアドレナリン自己注射薬などがある場合は、指示通り使用してください。(※14)
皮膚症状だけでも、繰り返す、長引く、顔の腫れが強い場合は受診してください。
じんましんの参考リンク
5.手足口病になったとき
まず見ること
口の中が痛くて飲めないことが、家庭で最も困る点です。発疹の数より、水分が取れているか、尿が出ているか、元気があるかを見ます。(※7、22)
家でできること
- 冷たい飲み物、ゼリー、豆腐、やわらかいうどんなど、刺激の少ないものを試す
- 酸っぱい、塩辛い、熱いものは避ける
- 食事量より、水分と尿を優先して見る
- おむつ交換後や食事前は、石けんと流水で手を洗う
手足口病に特効薬はなく、基本は症状を和らげながら回復を待ちます。(※7、22)
受診の目安
飲めず尿が減る、ぐったりする、頭痛が強い、繰り返し吐く、視線が合いにくい、呼吸が苦しそうな場合は受診してください。
登園・登校は、発疹がすべて消えることより、発熱がなく、口の痛みで普段の食事が妨げられず、全身状態がよいことを目安にします。園や学校の個別ルールも確認してください。(※7)
手足口病の参考リンク
- ※7 当院コラム「ヘルパンギーナと手足口病」
- ※22 厚生労働省「手足口病に関するQ&A」
6.花火などでやけどをしたとき
最初にすること
熱源から離れ、すぐに水道水で冷やします。服の上からやけどした場合は、無理に脱がさず、服の上から冷やしてください。皮膚に張り付いた服は、はがしません。(※15、16)
指輪やきつい装飾品は、腫れる前に外します。
やってはいけないこと
- 氷や保冷剤を皮膚へ直接当てる
- 油、みそ、歯磨き粉などを塗る
- 水ぶくれをつぶす
- 張り付いた衣服を無理にはがす
冷やしたあとは、清潔なガーゼや布でゆるく覆います。広いやけどを長く冷やし続けると、子どもは体が冷えすぎることがあります。広範囲の場合は救急要請を優先し、体全体の保温にも注意してください。(※15、16)
受診の目安
水ぶくれがある、白い・黒い・感覚が鈍い、顔、手、関節、陰部のやけど、手足を一周するやけどは、医療機関で評価を受けてください。
電気、薬品、煙の吸入を伴う場合や、範囲が広い場合は救急対応が必要です。(※15、16)
やけどの参考リンク
7.帰省先のペットに触れて咳が出たとき
まず見ること
動物のいる部屋で、咳、鼻水、目のかゆみ、ゼーゼーが始まり、離れると軽くなる場合は、ペットの毛やフケなどが引き金になっている可能性があります。もともと喘息がある子では、ペットが発作のきっかけになることがあります。(※17)
家でできること
- まず動物と離れ、別の換気された部屋へ移る
- 手と顔を洗い、可能なら着替える
- 動物を寝室に入れない
- 本人に処方された発作時の吸入薬があれば、行動計画に従って使う
親族の薬を借りたり、自己判断で薬の回数を増やしたりしないでください。
受診の目安
胸やみぞおちがへこむ、会話・歩行・飲食が難しい、顔色が悪い、手持ちの発作時薬を使っても改善しない場合は、早急な受診が必要です。(※17)
帰省のたびに同じ症状が出る場合は、次の帰省前にかかりつけ医へ相談し、薬の携帯方法と、寝室を分けるなどの環境調整を確認しておきましょう。
ペット接触後の咳の参考リンク
- ※17 国立成育医療研究センター「気管支ぜん息」
8.嘔吐・下痢のとき
まず見ること
吐いた回数や便の回数だけでなく、飲めるか、尿が出ているか、目が合うかを見ます。
家でできること
- 経口補水液を、スプーンなどで少量ずつ、回数を分けて与える
- 吐いたら少し休み、さらに少ない量から再開する
- 母乳は続ける
- 吐き気が落ち着いて飲めるようになったら、年齢に合う普段の食事を少量から戻す
軽度から中等度の脱水では、経口補水療法が初期治療の基本です。(※8、9、18)
受診の目安
少量の水分も保てない、尿が明らかに減る、口が乾く、ぐったりする、血便、緑色の嘔吐、強い腹痛や腹部の張りがある場合は受診してください。
家族への広がりを減らすには
嘔吐物は、使い捨て手袋とマスクを着け、静かに拭き取ります。塩素系消毒剤を使う場合は、製品表示に従い、換気し、酸性の製品と絶対に混ぜないでください。処理後は石けんと流水で手を洗います。(※19)
嘔吐・下痢の参考リンク
- ※8 当院コラム「急性胃腸炎―嘔吐・下痢ホームケア」
- ※9 当院コラム「経口補水療法について」
- ※18 日本小児感染症学会「小児急性胃腸炎診療ガイドライン2024」
- ※19 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
9.熱中症が心配なとき
まず見ること
暑い環境のあとに、頭痛、吐き気、だるさ、ふらつきが出たら熱中症を考えます。最も大切なのは、呼びかけに普段通り反応し、安全に飲み込めるかです。(※20)
家でできること
意識がはっきりして飲み込める場合は、涼しい場所へ移し、服をゆるめ、皮膚を濡らして風を当てます。首、わきの下、足の付け根を冷やし、経口補水液などを少しずつ飲ませます。(※20)
救急要請の目安
受け答えがおかしい、ぐったりしている、けいれんしている、自力で飲めない場合は119番へ。意識がおかしい子には、無理に飲ませないでください。(※20)
熱中症の参考リンク
- ※20 国立成育医療研究センター「熱中症」
10.あせもができたとき
家でできること
- 涼しい環境へ移す
- 汗をかいた服を着替える
- ぬるめのシャワーで汗を流し、こすらず乾かす
- 蒸れやすい厚い服、べたつく油性の塗り薬を避ける
あせもの基本は、皮膚を「涼しく、乾燥しすぎない程度に清潔に保つ」ことです。(※10)
受診の目安
赤みが広がる、膿や黄色いかさぶたが出る、痛みや熱感がある、発熱を伴う、強いかゆみで眠れない場合は受診してください。(※10)
あせもの参考リンク
- ※10 当院コラム「子どもの『あせも』を科学する」
11.鼻血が出たとき
正しい止め方
- 座らせ、少し前かがみにする
- 小鼻の柔らかい部分を、左右から指でしっかりつまむ
- 途中で確認せず、約15分、持続して圧迫する
- 口に回った血は飲み込まず、吐き出す
上を向かせる、首の後ろをたたく、鼻の奥へティッシュを詰め込む方法は勧めません。(※11、21)
受診の目安
正しく圧迫しても止まらない、顔や頭を強くぶつけたあと、出血量が多い、顔色が悪い・ぐったりする、鼻以外からも出血しやすい場合は受診してください。(※11、21)
鼻血の参考リンク
帰省・旅行前に用意しておくと安心なもの
- 体温計
- いつもの内服薬、吸入薬、塗り薬
- お薬手帳または薬の写真
- 経口補水液
- 清潔なガーゼ、絆創膏、使い捨て手袋
- 受診に必要な情報と、滞在先周辺の休日診療先
薬は「必要になったら現地で借りる」のではなく、その子に処方されたものを、使い方と一緒に持参してください。
最後に
ホームケアの目的は、家庭だけで病名を決めることではありません。
子どもを少し楽にしながら、呼吸、反応、水分、経過を観察し、受診が必要な変化を見逃さないことです。
迷ったときは、「熱が何度か」「発疹が何個か」だけでなく、飲めるか、尿が出ているか、呼吸は苦しくないか、いつからどう変化したかを医療者に伝えてください。

