コラムcolumn
病気の話

子どものあざ、 いつまで様子を見ていい?

――早めに相談したい「赤・青・茶・黒」のあざと、レーザー治療の考え方――

「生まれたときからあるけれど、このまま消えるのでしょうか」
「レーザーは、もう少し大きくなってからでも間に合いますか」
乳児健診やLINE相談で、子どもの「あざ」についてご相談を受けることがあります。見た目のことだけに、治療を急いでよいのか、子どもに負担をかけないよう待ったほうがよいのか、迷うのは当然です。

結論を先にお伝えします。

あざは、「消えるから待つ」と一括りにはできません。早く治療を始める意味があるものがある一方、経過観察でよいもの、レーザーの効果が安定しないものもあります。「まず早めに種類を見極める」ことが大切です。

少し歯切れが悪いですが、やはりその”あざ次第”です。以下、各々について説明します。
早めの受診は、すぐに治療を始めると決めることではありません。「今は観察でよい」と確認するための受診も、大切な診療です。

「あざ」は、同じ色でも中身が違います

日常語の「あざ」には、血管の異常で赤く見えるものと、メラニンという色素が皮膚のどこにあるかで青・茶・黒に見えるものが含まれます。
たとえば、乳児血管腫(いちご状血管腫)は生後に増える「血管の腫瘍」です。一方、単純性血管腫と呼ばれてきた毛細血管奇形は、生まれつき血管の形が異なる「血管奇形」です。似た赤いあざでも、経過も治療も同じではありません(※1)。
写真だけで診断が難しいこともあるため、「赤いからこの病名」と家庭で決めつけないことも大切です。


受診前に見ておきたい4つのポイント

診察では、名前を当てること以上に、変化の仕方が重要です。

  • いつから見えたか:生まれたときからか、生後に出てきたか
  • 大きくなっているか:直径だけでなく、盛り上がりも見る
  • 表面の状態:じゅくじゅく、かさぶた、出血、傷がないか
  • 生活への影響:目を開けにくい、母乳やミルクを飲みにくい、呼吸しにくいなどがないか

大きくなっていると感じたら、同じ距離、同じ明るさで写真を残しておくと、変化を判断しやすくなります。
当院としては、治療を始めるなら早い方がよいあざがあるという考えから、必要に応じて近隣の医療機関をご紹介しています。
幸い、この地域には小児のレーザー治療に長けた先生がいらっしゃいます。当院ではその先生と連携し、専門医の方針も踏まえながら、次のようにご案内しています。

以下、それぞれの疾患に合わせてリンクを貼っていますが、少し症状が強い患者さんのものが多いと思います。
当院で、残念ながら来院時にきれいな画像を用意できないので、ご覧いただいたときには、一緒に教科書などを見ながらお話しできればと思います。

1.乳児血管腫(いちご状血管腫)

生まれた直後には目立たず、生後しばらくして赤みが現れ、厚みを増してくるのが典型的です。自然に小さくなる性質はありますが、増大する時期には見た目から想像するより早く変化することがあります。
当院では、乳児血管腫が疑われたら、「小さいから」と待ちすぎず、早期にレーザー治療を行う専門医への相談を勧めています。
表面の赤みに対する早期のレーザー照射を含め、病変の厚さ、場所、増え方に合わせて方針を決めます。

急に大きくなるもの、目・鼻・口の周りにあって機能への影響が心配なもの、潰瘍や出血を起こすもの、将来的に皮膚のたるみや傷あとが問題になりそうなものは、内服治療も含めて早めの検討が必要です。現在の診療ガイドラインでは、治療が必要な乳児血管腫に対するプロプラノロール内服療法が第一選択とされています(※2)。

また、顔や頭頸部に広く分布する乳児血管腫は、まれに脳・血管・心臓・眼などの異常を伴う「PHACE症候群」を見つける手がかりになることがあります。広い乳児血管腫があるだけでPHACE症候群という意味ではありませんが、あざの広がり方や場所によっては画像検査などを検討します(※2)。

当院では、増大の程度、機能面、整容面から内服治療の検討が必要と判断した場合、総合病院小児科へ紹介します(※3)。内服には低血糖、徐脈、低血圧、呼吸器症状などに注意が必要なため、専門的な管理のもとで行います(※4)。

写真・詳しい説明はこちら:横浜市立大学附属病院「乳児血管腫」


2.単純性血管腫(毛細血管奇形)

単純性血管腫は、現在は「毛細血管奇形」と呼ばれます。生まれたときから赤い斑があり、基本的には自然には消えません。色素レーザーが主な治療ですが、部位や色、血管の深さによって効果に差があり、十分に薄くならないことや再び色が目立つこともあります。
診療ガイドラインでも、1歳前の治療は有効性が高い可能性があり、早期治療を選択肢の一つとして検討することが提案されています。ただし、これは「早ければ必ず消える」という意味ではありません(※2)。
当院では、レーザーの効果には個人差があることを説明したうえで、早期治療の利点を考え、乳児期から専門医への相談をご案内することがあります。

毛細血管奇形は、見た目だけでなく、ほかの病気を見つけるサインになることがあります。額や上まぶたを含む顔面の広い範囲にあるものでは、スタージ・ウェーバー症候群に伴う緑内障や脳表の血管異常がないか確認することがあります。また、手足の広い範囲にあり、左右で太さや長さが違う場合は、クリッペル・トレノネー症候群など、ほかの血管・リンパ管の異常や骨・軟部組織の過成長を伴っていないか評価します(※2)。
もちろん、顔や手足に赤いあざがあるだけで、これらの病気というわけではありません。あざの位置や広がり方を手がかりに、詳しい確認が必要な子を早めに見つけるという意味です。

写真・詳しい説明はこちら:獨協医科大学埼玉医療センター「毛細血管奇形」


3.サーモンパッチ・ウンナ母斑

額の中央やまぶたの赤い斑は「サーモンパッチ」、うなじの赤い斑は「ウンナ母斑」と呼ばれます。これらは毛細血管奇形とは性質が異なり、成長とともに薄くなることがあります。
当院ではご希望があれば、乳児期から専門医へ相談することをお勧めしています。この地域で小児のレーザー治療を行う先生の方針も踏まえ、多くは早期のレーザー治療を検討します。
その理由は、幼児期になると体を動かさずに照射することが難しくなること、外遊びが増えて日焼け対策が難しくなること、照射後の処置を保護者が管理しにくくなることです。
これは全国一律の方針ではなく、当院と近隣の専門医が、それぞれのあざの経過や治療後の管理を考えて採用している地域での診療方針です。

写真・詳しい説明はこちら:横浜市立大学附属病院「サーモンパッチなどの毛細血管奇形」


4.異所性蒙古斑

おしりや腰にある蒙古斑は、成長とともに薄くなることが多い青あざです。肩、腕、手足、背中など、典型的なおしり以外にあるものを異所性蒙古斑と呼びます。
異所性蒙古斑にも自然に薄くなるものがあるため、すべてがレーザーの対象ではありません(※5)。

専門医へご紹介する目安として、当院では次のように整理しています。

  • レーザーを検討するもの:おしりの蒙古斑より濃い、または辺縁をはっきり追えるもの
  • 経過観察でよいことが多いもの:おしりと同程度の濃さ、または辺縁がぼんやりしているもの

実際に治療を行う専門医では、3か月に1回程度、4〜5回の照射を一つの目安としています。順調でも1年以上かかることがあるため、日焼け対策、体を安全に保持して照射できる年齢、術後処置の管理を考えると、治療適応のある子は早めに始める利点があります。形成外科のガイドラインでも、色が明らかに濃く残りやすいと予想されるものや、露出部で目立つものでは、乳幼児期のレーザー治療が選択肢になるとされています(※5)。

写真・詳しい説明はこちら:日本医科大学武蔵小杉病院「異所性蒙古斑」


5.扁平母斑

扁平母斑は、生まれたときから、または乳幼児期に目立ってくる茶色い平らなあざです。レーザー以外に良い治療が少ない一方、レーザーの効果が安定しにくい、判断の難しいあざです。十分な効果が得られる割合は2割以下と説明を受けています。形成外科のガイドラインでも、Qスイッチルビーレーザー単独の有効率は報告に幅があり、おおむね2割程度とする報告が示されています(※5)。
照射後に再び色が戻る、治療前より濃く見える、色素が抜けて白くなる、濃淡のむらができるといったことがあります。そのため、小さな範囲で試験照射を行い、反応を見てから次の治療を決めることがあります。
このあざも、治療を試すなら早期に相談する意味があります。乳児は皮膚が薄く、日焼けも少ないため、年長児や成人より効果が得られることがあります。ただし、「早くやれば必ず消える」治療ではありません。効果の不確実さと合併症の両方を理解したうえで決めます。
茶色い斑が多数ある、成長とともに数が増える場合は、扁平母斑だけでなく、神経線維腫症1型などに伴うカフェオレ斑との見分けが必要です。乳幼児期にはカフェオレ斑だけが先に見えることもあるため、皮膚の斑が診断の手がかりになることがあります(※7)。

写真・詳しい説明はこちら:慶應義塾大学病院「扁平母斑」


6.色素性母斑(黒あざ)

色素性母斑は、いわゆる黒あざです。大きさ、厚み、毛の有無、部位はさまざまで、治療の第一選択は手術による切除です。大きいものでは、1回で全部を切るのではなく、複数回に分ける手術や、皮膚を広げてから切除する方法が必要なこともあります。
生後1か月ごろのごく早い時期に、扁平母斑に用いる種類のレーザーを高い出力で試験的に照射し、消えなくても薄くなる可能性をみることがあります。ただし、これはやってみないと反応が分からず、標準的に必ず行う治療でもありません。
また、レーザーは黒い色を薄くできても、皮膚の深い部分まで母斑細胞を完全に取り除くことはできません。再発や変化の経過観察が必要です(※5)。「手術なら傷が残る」「レーザーなら母斑細胞が残る」という違いを理解し、大きさと場所、将来の見た目、必要な治療回数を合わせて方針を決めます。
生まれつき大きい黒あざ、急に厚くなる、出血やただれを繰り返すなどの変化がある場合は、早めに皮膚科や形成外科へ相談します。

写真・詳しい説明はこちら:横浜市立大学附属病院「色素性母斑(黒あざ)」


レーザー治療を受けるときの家庭での注意

レーザー治療は、1回の照射で終わるとは限りません。照射後は一時的に赤み、かさぶた、水ぶくれなどが出ることがあります。

治療後の軸は、次の3つです。

  • 日焼けを避ける
  • 指示されたテープ、軟膏、ガーゼの処置を続ける
  • こする、かさぶたをはがすなど、自己判断で触りすぎない

日焼けした皮膚では、レーザーの光が皮膚の色素にも吸収されやすくなり、やけどや色素沈着のリスクが高くなります。「早く相談する」と同時に、治療前後のケアを家族で続けられるかも大切な判断材料です。
この点から、当院では早めに紹介していることが多いと思います。


レーザー治療とワクチン接種の日程に迷ったら

レーザー治療を行う先生の中には、ワクチン接種との間隔を気にされる方もいらっしゃいます。接種後の発熱とレーザー後の体調変化が重ならないよう、1週間程度あけるよう案内されることがあります。
ただし、これは全国一律の接種ルールではありません。レーザー治療の日程やワクチンの種類、接種後の体調などによって考え方が異なるため、実際の間隔は治療を担当する先生に確認します。
レーザー治療は予約が取りにくいこともあります。当院でワクチン接種をご希望の場合は、レーザーの日程を優先しながら接種予定を一緒に調整します。レーザー治療が始まり、ワクチンの接種間隔にお困りの際はご相談ください。


見た目の悩みと、「ほかの病気のサイン」という二つの視点

あざを診るときには、二つの視点があります。一つは見た目や将来のコンプレックス、もう一つは、ほかの病気や合併症を見つけるサインではないかという視点です。
あざは、目・鼻・口の周りなど一部を除き、機能面で困ることが少なく、治療は見た目を整える意味合いが大きくなります。
ただし、見た目の変化がお子さんのコンプレックスになり、日常生活でつらさを感じることもあります。単なる「美容の問題」と決めつける必要はありません。
日本形成外科学会は、単純性血管腫、いちご状血管腫、異所性蒙古斑、扁平母斑などを、レーザー治療に保険適用が認められている疾患として挙げています。一方、あざの種類、治療法、使用するレーザー、照射回数などによって、保険の対象にならない場合もあります(※6)。

実際の治療適応や方法は専門医が判断します。


子どものあざは、経過を見てよいものもあれば、乳児期に相談することで治療しやすくなるものもあります。大切なのは、すべてをすぐ治療することではありません。
このように、あざは美容的な意味合いが強い一方、種類や現れ方によっては、ほかの病気や合併症を見つけるきっかけになることがあります。
「何あざか」「残りやさはどうか」「治療するなら今の方がよいか」を、専門家と一緒に早めに整理することです。

1か月健診のあと、小児科医が赤ちゃんの全身を裸にして診察する次の機会は、通常4か月健診になります。その間に出てきた皮膚の変化(あざなど)は、ご家族だけが気づいていることも少なくありません。安城市の4か月児健診でも、身体計測に続いて、からだの診察が行われます(※8)。
予防接種のときでもかまいません。新しいあざが出てきた、色や盛り上がりが変わったなど、気になることがあれば気軽にお声かけください。
写真では判断しにくいあざもあります。「小さいから」「そのうち消えると聞いたから」と家庭だけで結論を出さず、迷った段階でご相談ください。当院で状態を確認し、必要に応じてレーザー治療医や安城更生病院小児科へつなぎます。


参考文献・公式リンク

  1. 日本形成外科学会「母斑、血管腫、良性腫瘍
  2. Mindsガイドラインライブラリ「血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022
  3. 安城更生病院「小児科、脳神経小児科、新生児科
  4. PMDA「ヘマンジオルシロップ小児用0.375%(一般の方向け)
  5. 日本形成外科学会「形成外科診療ガイドライン1 皮膚疾患
  6. 日本形成外科学会「形成外科と健康保険
  7. 日本皮膚科学会「神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)診療ガイドライン2018
  8. 安城市「4か月児健康診査
  9. 山下理絵『子どものあざ―どう診て・どう治療するか』南山堂、2020年。