コラムcolumn
病気の話, 薬・おうちケア

子どもの便秘、水をたくさん飲ませれば治る?

大切なのは「たくさん」よりも「不足させない」こと

「便が硬いのは、水分が足りないからでしょうか」
「もっと水を飲ませたほうがよいですか」

子どもの便秘について、診察室でよく受ける質問です。

便がコロコロしていたり、排便のたびに痛がったりすると、保護者としては少しでも水を飲ませようと工夫したくなるものです。それでも便が柔らかくならないと、「飲ませ方が足りないのでは」と心配になるかもしれません。
最初に結論をお伝えすると、水分は便秘のある子にも大切ですが、飲ませれば飲ませるほど便秘が治るわけではありません。
年齢や体格、食事、活動量などに対して水分が不足している場合は、その不足を補う必要があります。一方、すでに普段どおり飲めている子に、便秘の治療としてさらに大量の水分を飲ませても、改善するとは証明されていません。

国内の診療ガイドラインには、「便秘改善に水分摂取が有効であるとの根拠はないが、水分摂取不足が便を硬くする傾向がある」と記載されています。国際ガイドラインも、年齢相応の水分摂取を勧める一方、通常の必要量を超えて増やす治療効果を支持する根拠はないとしています。※1、※2


なぜ、便は硬くなるのでしょうか

大腸には、腸の中を進む内容物から水分を吸収する働きがあります。
便が大腸や直腸に長くとどまるほど水分が吸収され、便は硬く、大きくなっていきます。
子どもの便秘では、ここに「痛み」と「排便がまん」が加わります。硬い便を出して痛かった子は、次に便意を感じたときに体をこわばらせたり、排便を避けたりすることがあります。
すると便がさらに長くたまり、もっと硬くなり、次の排便も痛くなるという悪循環が始まります。※1、※6
この状態になると、水分を追加するだけでは、すでにたまった便や排便への怖さを十分に解決できません。

便秘は、排便回数だけで判断するものでもありません。毎日少量ずつ出ていても、次のような様子があれば、直腸に便がたまっていることがあります。

・便が硬く、コロコロしている
・排便のときに痛がる
・便意があるのに、体をこわばらせてがまんする
・少量の便が何度も出る
・下着に便が漏れる


「水分が少ない子に便秘が多い」と「水を増やせば治る」は別の話です

水分と便秘の研究を読むときには、二つの異なる問いを分けて考える必要があります。

普段の水分摂取が少ない子には、便秘が多いのでしょうか

いくつかの観察研究では、水分摂取が少ない子どもに便秘が多いという関連が報告されています。
2017年に発表されたレビューでは、対象となった疫学研究5本のうち3本で、少ない水分摂取と便秘との関連が認められました。ただし、研究ごとに水分量や便秘の評価方法が異なり、結果は一貫していませんでした。※3
2021年の症例対照研究でも、便秘のある子どもは、便秘のない子どもより総水分摂取量が少なく、尿が濃い傾向にありました。一方、「水分不足の状態」と便秘との関連は、統計学的に明確とはいえませんでした。※4
つまり、便秘の子に水分摂取が少ない傾向がみられることはあっても、それだけで「水分不足が便秘を起こした」とは断定できません。
食事内容、生活リズム、運動量、排便がまん、トイレの環境など、ほかの要因が同時に関係している可能性もあります。

すでに便秘のある子の水分を増やすと、改善するのでしょうか

こちらは、「便秘の治療として水分を増やす効果」を調べる問いです。
小児を対象にした介入研究や、その研究をまとめた系統的レビューでは、普段の摂取量を超えて水分を増やしても、排便回数や便の硬さが明らかに改善するとは示されませんでした。※2、※5
したがって、現在のエビデンスからは、次のように考えるのが適切です。
水分不足を避けることは大切です。しかし、水分だけを便秘の治療にするのは難しいと考えられます。


家庭では、どうしたらよいでしょうか

まずは「水分が不足していないか」を見ましょう
必要な水分量は、年齢だけで一律には決まりません。
体格、食事に含まれる水分、活動量、気温、発熱や下痢の有無などによって変わります。
海外の一部の研究では、特定の水分摂取量と便秘との関連が報告されています。しかし、その数値を日本のすべての子どもに共通する基準として使うことはできません。
「便秘なら1日一律に○mL飲ませる」と考えるよりも、その子の普段の生活に対して不足していないかを見ることが大切です。※1、※2
起床後、食事やおやつのとき、外遊びや運動の後など、生活の区切りで自然に飲める機会を作りましょう。一度に大量に飲ませる必要はありません。

便秘を理由に水だけを一律に増やすのではなく、授乳量や離乳の状況を含めて小児科で相談してください。乳児期は食事内容が大きく変化するため、その移行期に食物繊維や水分が不足することが便秘に関係する場合があります。※1

硬い便や痛みが続くときは、水分だけで頑張らないでください

次のような状態が続く場合には、腸や直腸にたまった便への治療が必要なことがあります。

・硬くて痛い便が続く
・排便をがまんしている
・下着に便が漏れる
・腹痛や食欲低下がある
・水分や食事を工夫しても改善しない

飲水量をさらに増やし続けるのではなく、小児科に相談してください。
便秘治療の目標は、単に「毎日便を出す」ことではありません。

痛みなく排便できる状態を続け、排便がまんの悪循環を断つことが大切です。
薬を処方されている場合は、水分量を理由に自己判断で薬を増減したり、中止したりせず、処方医の指示に従いましょう。

水分を工夫しても便秘が改善しないのは、保護者の努力が足りないからではありません。
子どもの便秘には、水分だけでなく、便の貯留、排便時の痛み、排便がまん、食事や生活リズム、トイレの環境など、いくつもの要素が関係しています。
大切なのは、無理にたくさん飲ませることではありません。
必要な水分が不足しない生活を整えながら、痛みのない排便を取り戻すことです。
硬い便や排便時のつらさが続いているときは、水分だけで様子を見続けず、ご相談ください。

参考文献

※1 日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会編.『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2025年版』診断と治療社,2025.ISBN 9784787827173.
出版社公式ページ

※2 Gordon M, de Geus A, Boruta M, et al. European Society for Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition/North American Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition guidelines for treatment of functional constipation in children aged 0–18 years. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2026;83(2):335–366. DOI: 10.1002/jpn3.70447.
DOIページ

※3 Boilesen SN, Tahan S, Dias FC, Melli LCFL, de Morais MB. Water and fluid intake in the prevention and treatment of functional constipation in children and adolescents: is there evidence? J Pediatr(Rio J). 2017;93:320–327. PMID: 28450053. DOI: 10.1016/j.jped.2017.01.005.
PubMed

※4 Boilesen SN, Dias FC, Tahan S, Melli LCFL, de Morais MB. Fluid intake and urinary osmolality in pediatric patients with functional constipation. Eur J Nutr. 2021;60:4647–4655. PMID: 34409509. DOI: 10.1007/s00394-021-02657-2.
PubMed

※5 Tabbers MM, Boluyt N, Berger MY, Benninga MA. Nonpharmacologic treatments for childhood constipation: systematic review. Pediatrics. 2011;128:753–761. PMID: 21949142. DOI: 10.1542/peds.2011-0179.
PubMed

※6 日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会編.『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン』2013.学会公式公開版.
学会公開PDF

※7 日本小児科学会.こどもの救急(ONLINE-QQ)「腹痛・便秘」.2026年8月13日アクセス.
腹痛・便秘の確認画面

※8 日本小児科学会.こどもの救急(ONLINE-QQ)「吐き気」.2026年8月13日アクセス.
吐き気の確認画面