コラムcolumn
感染症, 薬・おうちケア

子どもの舌に白いものがついている   ー年齢で考える「白い舌」の正体ー

「子どもの舌に白いものがついているんですが、これは何ですか?」

診察やLINEで、本当によく受けるご相談です。

授乳のあと、朝起きたとき、風邪のあと……。ガーゼで拭っても取れにくいと、「何か悪い病気では?」と心配になりますよね。

この「白いもの」の正体は、実はお子さんの年齢によって大きく変わります。

当院では、まず年齢で区切って整理してから判断します。家庭でできる見分け方と、受診のタイミングをまとめました。

【診断の地図】まずは年齢で分けて考えましょう

舌の白さは、おおむね次の3つのグループに分けられます。

新生児・乳児

よくある原因は、乳かすと鵞口瘡(がこうそう)です。授乳に関係するものが多く、元気で飲めていれば急ぎません。ただし、白い斑が頬の内側や上あごまで広がる、飲みが悪い、口の中を痛がるような様子がある場合は、治療が必要になることがあります。

幼児・学童

よくある原因は、舌苔(ぜったい)地図状舌(ちずじょうぜつ)です。多くは生理的な変化や体質の範囲で、病気ではなく、治療も不要です。

年齢を問わず

発熱、口の痛み、よだれ、食欲低下を伴う場合は、ウイルス性疾患など別の病気のサインとして考えます。

【0歳の赤ちゃん】ミルクかす vs 鵞口瘡

生後数か月の赤ちゃんで最初に考えるのは、この2つです。

見分けるポイントは、**「軽く拭って取れるか」「舌だけか、頬の内側や上あごにも広がっているか」「飲みが悪くなっていないか」**です。

1. ミルクかす

母乳やミルクの成分が、舌の表面に残って白く見える状態です。

授乳のあと、指に巻いた清潔なガーゼで軽く拭ってきれいに取れるなら、ミルクかすの可能性が高いです。

赤ちゃんは唾液がまだ少なく、ミルクや母乳の成分が糸状乳頭(しじょうにゅうとう、舌の表面にある細かい突起)のすき間に残りやすいため、よく起こります。母乳栄養のお子さんでも同じように見られます。

舌だけが白く、機嫌がよく、いつも通り飲めている場合は、多くは急ぐ必要はありません。

2. 鵞口瘡

鵞口瘡は、カビの一種であるカンジダによる、口の中の感染症です。

以前は「こすっても取れない白い斑」と説明されることも多かったのですが、より正確には、ミルクかすのように簡単には取れにくい白い斑です。

無理にこすると取れることもありますが、その下の粘膜が赤くただれたり、少し出血したりすることがあります。そのため、ご家庭で強くこすって確認する必要はありません。

特に、白い斑が舌だけでなく、頬の内側、唇の内側、上あごにも広がっている場合は、鵞口瘡を考えます。

鵞口瘡は、どれくらい心配すべき病気なのか

ここが一番大切です。

赤ちゃんの舌が白いと、「カンジダかどうか」を心配されることがあります。ただ、実際の診療で大事なのは、カンジダの可能性が少しでもあるかどうかではありません。

大事なのは、治療や受診が必要な鵞口瘡らしさがあるかどうかです。

鵞口瘡は、健康な赤ちゃんでは多くの場合、口の中に限られた表在性の感染です。軽い場合は痛みがなく、自然に落ち着くこともあります。見逃しただけで急に全身に広がる、命に関わる、という病気では通常ありません。健康な赤ちゃんの軽い鵞口瘡では治療が不要なこともあります。

治療の目的は、主に次の3つです。

  1. 口の痛みで飲めなくなることを防ぐ
  2. お母さんの乳頭痛と赤ちゃんの口の中で、カンジダが行き来することを防ぐ
  3. おむつかぶれなど、他の部位のカンジダ症を悪化させないようにする

つまり、鵞口瘡は「少しでも疑ったら急いで検査・治療しないと危険」という病気ではありません。

一方で、飲めない、痛がる、白い斑が広がる、母乳育児中のお母さんの乳頭痛がある、おむつかぶれを繰り返すといった場合には、治療した方がよい病気です。

「白い舌=すぐ治療が必要なカンジダ」ではありません

文献上、新生児・乳児の鵞口瘡はおおむね4〜15%程度とされます。つまり、珍しい病気ではありません。ただし、これは「舌が白い赤ちゃんの多くが鵞口瘡」という意味ではありません。

実際には、舌だけが白く、機嫌がよく、いつも通り飲めている場合は、まずミルクかす・舌苔寄りに考えます。この場合、鵞口瘡の可能性はゼロではありませんが、仮に軽い鵞口瘡だったとしても、急いで治療しないと大変なことになる状況ではありません。

一方で、鵞口瘡としてしっかり疑うのは、白い斑が舌だけでなく、頬の内側、唇の内側、上あごにも広がっている場合です。カンジダによる鵞口瘡では、白〜黄色の斑が舌、唇、歯肉、口蓋、頬の内側に出ることがあり、痛みや哺乳不良、おむつかぶれを伴うことがあります。

さらに、次のような所見が重なるほど、鵞口瘡として治療を考える割合は高くなります。

  • 軽く拭っても取れにくい
  • 取れたあとに赤くただれる、少し出血する
  • 授乳量が減る
  • 口を痛がる、機嫌が悪い
  • おむつかぶれを繰り返す
  • お母さんの乳頭に痛み、赤み、しみる感じがある
  • 抗菌薬を使ったあとに出てきた

逆に、舌だけが白く、頬の内側や上あごに広がらず、機嫌よく飲めている場合は、まずはミルクかす・舌苔として見守ることが多いです。

ただし、背景によっては注意が必要です

健康な赤ちゃんの軽い鵞口瘡は、多くの場合、急いで治療しないと危険という病気ではありません。

ただし、次のような背景がある場合は別です。

  • 早産・低出生体重
  • 免疫を下げる治療中
  • 抗がん剤治療中
  • 中心静脈カテーテルがある
  • 明らかな誘因なく何度も再発する
  • 1歳以降で繰り返す
  • 体重増加不良や全身状態の悪さを伴う

このような場合は、カンジダが単なる「口の中だけの問題」ではなく、免疫状態や全身状態のサインになることがあります。特に免疫抑制状態や長期の点滴治療中では、カンジダが血流感染として問題になることがあります。

そのため当院では、「舌が白い」だけでは治療を急がず、「広がり」「痛み」「飲み」「母乳トラブル」「背景リスク」を見て判断します。

なぜ起こる?

カンジダは、もともと口の中や皮膚に存在しうる菌です。赤ちゃんでは、口の中の環境や常在菌のバランスがまだ安定しておらず、唾液量も少ないため、カンジダが一時的に増えやすいことがあります。

また、抗菌薬を使用したあとには、口の中の菌のバランスが崩れ、カンジダが増えやすくなることがあります。

カンジダは出生前後、授乳、哺乳びんやおしゃぶりなどの生活環境を通じて赤ちゃんの口の中に定着しうると考えられています。

ただし、鵞口瘡になるかどうかは「産道を通ったかどうか」だけで決まるものではありません。赤ちゃん側の口腔環境、抗菌薬の使用、授乳中のお母さんの乳頭症状など、複数の要素が関係します。

家庭での4つのチェックポイント

次の状態がないか確認してください。

  1. 頬の内側や上あごにも白い斑が広がっているか
  2. 授乳量が明らかに減っていないか
  3. おむつかぶれが同時に出ていないか
  4. 授乳中のお母さんの乳頭に、赤み・痛み・しみる感じがないか

3や4がある場合、赤ちゃんとお母さんの間でカンジダが行き来している可能性があります。お母さんの乳頭痛や乳腺炎のような症状が同時にある場合は、母子双方の評価が必要になることがあります。

当院の治療方針と薬剤の選び方

赤ちゃんが元気で、いつも通り飲めている場合、鵞口瘡は自然に落ち着くこともあります。

一方で、白い斑が広がる、授乳量が減る、口の中を痛がる、おむつかぶれを繰り返す、といった場合は治療を検討します。

治療が必要な場合、当院では抗真菌薬であるファンギゾンシロップを使用します。

使い方のコツ

ファンギゾンシロップの成分であるアムホテリシンBは、消化管からほとんど吸収されません。

つまり、「飲んで全身に効かせる薬」というより、舌や頬の粘膜に薬を広く行き渡らせる薬です。

そのため、使用するときは、薬をただ飲み込むというより、白い斑があるところに行き渡るように使うイメージが大切です。口腔内カンジダ症では、患部に広く行き渡らせ、できるだけ長く口の中に含んだ後に飲み込むよう説明されています。

当院がファンギゾンシロップを選ぶ理由

ファンギゾンシロップは、添付文書上、小児に対して用量が設定されています。

一方で、もう一つの代表的な薬にフロリードゲルがあります。フロリードゲルは口腔カンジダ症に使われる薬ですが、日本の添付文書では、小児を対象とした有効性・安全性を確認する臨床試験は実施されていないとされています。

また、乳児ではゲル剤を誤嚥するリスクにも注意が必要です。添付文書上も、外国で6か月未満の乳児において誤嚥による窒息例が報告されています。

そのため当院では、乳児の口腔内カンジダ症では、添付文書上の小児用量があり、粘膜に広げて使いやすいファンギゾンシロップを第一選択にしています。

【1歳からの子】舌苔と地図状舌

1歳を過ぎると、病気ではない「生理的な白さ」が増えてきます。

舌苔

舌苔は、舌の表面の突起に、食べかすや細菌、はがれた粘膜の成分などがたまって白く見える状態です。

寝ている間は唾液が減るため、朝起きたときに舌が白っぽく見えることは珍しくありません。多くは生理的な範囲で、強くこする必要はありません。

口臭が強い、痛みがある、食事がとれない、といった症状がなければ、まずは水分摂取、食後のうがい、年齢に応じた歯みがきで十分です。

地図状舌

地図状舌は、舌の表面の白い苔が部分的に取れて、赤い地肌が地図のように見える状態です。

2歳以上の子どもに見られる良性の変化で、日によって模様が変わるのが特徴です。

痛みがなければ治療は不要です。模様が動くのは「治っていない」サインではなく、地図状舌の性質ですので、過度に心配しなくて大丈夫です。

注意したい「別の病気のサイン」としての白さ

年齢を問わず、白いものだけでなく、発熱、強い痛み、よだれ、食事や水分がとれない、といった症状があるときは注意が必要です。

ヘルパンギーナ

突然の発熱と、のどの奥の水ぶくれや浅い潰瘍が特徴です。口の奥が痛いため、食事や水分を嫌がることがあります。

手足口病

口の中に白っぽい点や水ぶくれ、浅い潰瘍ができることがあります。手のひら、足の裏、足の甲、おしりなどに小さな水ぶくれを伴う発疹が出ることもあります。

手足口病は「高熱が出る病気」とまとめてしまうと少し不正確です。発熱は38℃以下のことが多く、軽いことも少なくありません。ただし、ウイルスの型や流行状況によっては高熱になることもあります。

ヘルペス性歯肉口内炎

口全体が赤く腫れ、歯ぐきからの出血、強い口臭、激しい痛みを伴うことがあります。食事や水分がとれず、脱水になるリスクがあります。

抗菌薬の使用後

副鼻腔炎や中耳炎などで抗菌薬をしばらく飲んだあと、口の中の菌のバランスが崩れて、カンジダが増えることがあります。

受診の目安:いつクリニックに来るべき?

相談・受診をおすすめするケース

数日以内の受診をおすすめします。

  • 軽く拭っても取れにくい白い斑が、頬の内側や上あごまで広がっている
  • 白い斑のせいで、授乳量や食事量が明らかに減っている
  • お母さんの乳頭に痛み、赤み、しみる感覚が同時に出ている
  • 抗菌薬をしばらく飲んだあとに、白い斑が出てきた
  • おむつかぶれを繰り返している
  • 何度も再発している
  • 早産・低出生体重、免疫を下げる治療中など、背景リスクがある

急ぎの受診が必要なケース

当日中の受診をおすすめします。

  • 高い熱が続く、またはぐったりしている
  • よだれが大量に出て、水分が飲み込めない
  • おしっこの回数が減るなど、脱水のサインがある
  • 口の痛みが強く、水分もほとんど取れない

院長からのメッセージ

「舌が白い」というだけで、慌てて受診する必要はありません。

まずは、元気があるか、軽く拭って取れるか、舌だけなのか頬の内側まで広がっているのか、機嫌よく飲めているかを見てください。

健康な赤ちゃんでは、軽い鵞口瘡であっても、見逃しただけですぐに大変なことになる病気では通常ありません。大切なのは、白さそのものより、広がり・痛み・飲みの悪さ・母乳トラブル・背景リスクです。

ただし、無理にこすって確認する必要はありません。強くこすると、かえって粘膜を傷つけてしまうことがあります。

判断に迷うときは、スマートフォンのカメラで舌と頬の内側の写真を撮って、LINEからご相談いただくのが一番スムーズです。

仕組みを理解して、正しく見守る。
それがお子さんとご家族の「本質的な安心」につながります。

参考文献

※1 公益社団法人 日本口腔外科学会. 口腔粘膜疾患・口腔カンジダ症. 白苔はガーゼなどで剥離可能だが、剥離後に発赤・びらんを呈することがあると説明されています。

※2 Vainionpää A, Tuomi J, Kantola S, Anttonen V. Neonatal thrush of newborns: Oral candidiasis? Clin Exp Dent Res. 2019;5(5):580-582. 新生児・乳児の鵞口瘡頻度として4〜15%程度が言及されています。

※3 Nationwide Children’s Hospital. Thrush (Oral Candida Infection) in Children. 健康な赤ちゃんの軽い鵞口瘡では治療不要なことがある一方、重い場合は抗真菌薬治療が検討されると説明されています。

※4 MedlinePlus. Thrush in newborns. 抗菌薬使用、乳頭症状、おむつかぶれ、自然軽快する場合があることなどが説明されています。

※5 PMDA. ファンギゾンシロップ100mg/mL 添付文書情報.

※6 PMDA. フロリードゲル経口用2% 添付文書情報. 小児等を対象とした有効性・安全性試験が実施されていないこと、6か月未満乳児で誤嚥による窒息例が報告されていることが記載されています。

※7 厚生労働省. 手足口病. 発熱は38℃以下のことが多いと説明されています。