コラムcolumn
予防接種

鼻のワクチン「フルミスト」と注射、どちらにする?

― 日本小児科学会の新しい考え方(第2版)をふまえて―

「今年のインフルエンザワクチン、注射と鼻のどちらにしよう」と迷っている方は多いと思います。2026年9月、日本小児科学会が鼻から入れるインフルエンザワクチン「フルミスト」についての考え方を改訂し、第2版を公表しました(※1)。この記事では、今回変わった点をふまえて、迷っている方が選びやすいように整理します。

フルミストってどんなワクチン?

フルミストは、毒性を弱めたインフルエンザウイルスを鼻に吹きかけるワクチンです。左右の鼻に1回ずつシュッと噴霧するだけで、1シーズンに1回で終わります(※1)。対象は2歳から19歳未満です(※1)。

なぜ鼻に入れるのかというと、弱いウイルスが鼻の奥からのどで増えることで、実際にインフルエンザにかかったときに近い免疫がつくと期待されているからです(※1)。鼻やのどの粘膜で働く抗体(IgA抗体:ウイルスが体に入る入り口で防ぐ抗体)と、血液中の抗体など全身の免疫の両方が期待されています(※1)。

学会も、お子さんにとってワクチンの痛みは大きな心配ごとで、鼻から接種して痛みを減らせることには大事な意味があるとしています(※1)。ただし「生きたウイルス」を使うため、接種できない方や注意が必要な方がいるという点が、注射との大きな違いです。


効果に差はあるの?

学会は、注射とフルミストの間に、インフルエンザを防ぐ効果の明確な優劣は確認されていないとしています(※1, ※2)。

実際に使われ始めてからの国内データも出てきました。例えば2025年1〜3月の製薬会社の調査では、フルミストのワクチン有効率は55.5%でした(※1)。また2025/26シーズンの国内の調査では、A型インフルエンザに対する有効率が注射で43%、フルミストで81%でした(※1, ※3)。ただし、フルミストを受けた人数が少なく数値の幅が大きいため、この結果だけで「鼻のほうがよく効く」とは言えないと学会は述べています(※1, ※3)。「どちらも効果がある」と受け止めてください。


今回の改訂で変わったこと

1つ目は喘息の扱いです。前回の版では「喘息のお子さんには注射を勧める」とされていましたが(※2)、今回は「重度の喘息のお子さん」に変わりました(※1)。英国では、吸入ステロイドを使っている喘息のお子さんも量にかかわらず安全に接種できるとする一方、発作が起きている時期、特に72時間以内にゼーゼーが悪化したときは勧めないとしています(※1)。

2つ目は登園・登校です。フルミストを受けたお子さんは、鼻やのどからワクチンのウイルスを最長3〜4週間出すことがあります(※1)。ただ、その量はふつう他の人にうつすには少なく、自然のインフルエンザよりうつる力は低いと説明されており(※1)、今回「接種後に登園や登校を制限する必要はない」と明記されました(※1)。

3つ目は、注射のみを勧める対象が「ミトコンドリア脳筋症」から「ミトコンドリア病」全体に広がったことです(※1, ※2)。このほか、ワクチンに含まれるウイルスが4種類から3種類に変わったことも反映されています(※1, ※2)。


迷ったときの選び方

フルミストが選びやすいお子さん

  • 2歳から19歳未満で、注射がとても苦手なお子さん
  • 1回で済ませたいご家庭
  • 喘息がない、または重くないお子さん(最近の発作がないこと)


注射のワクチンをお勧めするお子さん・ご家族

学会は、次の場合は注射のワクチンを勧めています(※1)。

  • 2歳未満、または19歳以上の方
  • 重度の喘息があるお子さん
  • 免疫の病気がある、または免疫を抑える治療中の方、脾臓の働きがない方
  • ゼラチンアレルギーのある方
  • ミトコンドリア病のお子さん
  • 人工内耳を入れているなど、脳や耳の構造に関わる病気がある方
  • 妊娠中の方、授乳中の方ご本人
  • ご家族など周りに重い免疫不全の方がいる場合


一度ご相談いただきたいお子さん

  • 最近ゼーゼーした、喘息の吸入薬を増やしたお子さん
  • 卵や鶏肉のアレルギーがあるお子さん(添付文書では「注意が必要な方」とされています。なお米国では、卵アレルギーだけなら特別な対策は不要としています(※1))
  • 最近タミフルなどインフルエンザの薬を飲んだお子さん(薬がワクチンのウイルスの増殖を抑え、効果が弱まる可能性があります(※1))


よくあるご質問

Q:副反応はありますか?
A:最も多いのは鼻づまりや鼻水で、国内の試験では59.2%にみられました(※1)。接種後数日して熱が出て検査をすると、ワクチンのウイルスが見つかり「インフルエンザ」と診断されることがあります(※1)。接種したことを受診先に伝えてください。

Q:熱があっても接種できますか?
A:はっきりした発熱があるときは接種できません(※1)。体調が良い日に接種しましょう。

Q:ほかの予防接種と同じ日に受けられますか?
A:医師が必要と判断すれば、他のワクチンと同時に接種できます(※1)。

Q:接種したら保育園や学校を休ませたほうがいいですか?
A:休ませる必要はありません(※1)。

Q:喘息がありますが、フルミストは受けられますか?
A:今回の改訂で、注射を特に勧める対象は「重度の喘息」のお子さんになりました(※1)。国内の添付文書では、重度の喘息がある方やゼーゼーしている方は「接種に注意が必要な方」とされています(※1)。当院では、ふだんの喘息の状態や最近の発作の有無を伺い、落ち着いていればフルミストも選択肢としてご相談しています。

Q:家に下の子(赤ちゃん)がいますが、大丈夫ですか?
A:学会が注射のワクチンを勧めているのは、周りに重い免疫不全の方がいる場合です(※1)。添付文書でも、接種後1〜2週間は重い免疫不全の方との密接な接触をできるだけ避けるよう説明することになっています(※1)。

当院では、健康な赤ちゃんのきょうだいがいるというだけでフルミストを避ける必要はないと考えていますが、赤ちゃんに持病がある場合は事前にお知らせください。


まとめ

注射とフルミストは、どちらを選んでも「インフルエンザ対策として正しい選択」です。今回の改訂で、喘息や登園など迷いやすかった点が整理され、より多くのお子さんにとってフルミストが選びやすくなったと私は受け止めています。一方で、持病やご家族の状況によっては注射が安心な場合もあります。

迷ったときは、喘息の状態(最近の発作や吸入薬)、アレルギー、ご家族の健康状態、最近飲んだ薬を予約時や問診票でお知らせください。お子さんに合う方法を一緒に決めましょう。流行が始まる前に接種を済ませておくことが、何よりの備えになります。


参考文献

※1 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方:第2版 ~医療機関の皆様へ~. 2024年9月2日(2026年9月2日改訂). https://www.jpeds.or.jp/society-activities/pediatric-medical-care/vaccination/opinion/20607.html

※2 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方 ~医療機関の皆様へ~(第1版). 2024年9月2日. https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=607 (改訂前の版はInternet Archive 2025年12月20日保存版で確認)

※3 Shinjoh M, Furuichi M, Sugimoto R, et al. Effectiveness of inactivated and live-attenuated influenza vaccines in children during the 2025-2026 influenza season with genetically distinct influenza A and B viruses. Vaccine. 2026; 88: 128869. PMID: 42349133