涙は鼻へ流れています。目やにの3つのタイプと、見分け方
目やにの相談は、季節を問わず、当院の外来でよくいただきます。かぜをひいたときに目やにが増えることも、よくあります。
かぜのときの目やには、目だけの問題ではなく、鼻とつながって起きていることがよくあります。
涙は目の上でつくられ、目頭から鼻へ流れています
涙の水分は、目の上の外側(まぶたの奥、こめかみ寄り)にある涙腺でつくられます※1。
つくられた涙は、目の表面をうるおしながら目頭のほうへ流れていきます。目頭の上下のまぶたのふちには、涙点という小さな穴があります。涙はここから吸い込まれ、目頭の奥にある袋(涙嚢)と、鼻涙管という管を通って、鼻の中のひだ(下鼻甲介)の下のすき間(下鼻道)へ流れ出ています※2※3。
涙を吸い込む力になっているのは、まばたきです。まぶたを閉じるときに涙の通り道が押されて、中の涙が鼻のほうへ押し出されます。まぶたを開けると通り道が広がり、目のふちにたまった涙が涙点から吸い込まれます※4。
鼻涙管の壁には、スポンジのように血液をためて膨らんだり縮んだりする血管の層があります。この層は鼻の中のひだの同じ層とつながっていて、膨らむと管の内側が狭くなります。大人の解剖で確かめられたしくみです※5。
この層は、膨らんだり縮んだりして管を開け閉めし、鼻へ流れる涙の量を調節していると考えられています※5。15〜37歳の30人で調べた実験では、目の表面に小さな異物をのせると、涙が鼻へ抜けるまでの時間が長くなりました※3。泣いたときに涙があふれることにも、この層が関わっている可能性が指摘されています※6。

朝、目頭に目やにがたまっているのはなぜ?
まばたきで涙を送るしくみは、閉じて開くくり返しで働きます※4。
日本の研究では、まばたきをしない最初の数秒は、目に入れた色素が鼻側へ流れず、まばたきを重ねると流れ出しました。ギュッと強く閉じるまばたきでは、流れる量が増えました※7。涙の通り道の手術を受けた大人15人での観察で、目を閉じたままの状態は調べられていません。
眠っている間は、まばたきのくり返しがありません。目を閉じている間は、反射で出る涙が大きく減り、流れもゆっくりになり、たんぱく質の多い涙に変わることが分かっています※8。そのため、涙と一緒に流れていくはずのものが目頭に残り、朝の目やにになると考えられます。
かぜで鼻の中が腫れて鼻涙管の出口が狭くなっていると、涙はさらに流れにくくなると考えられます。かぜのときに朝の目やにが増える理由の一つです。
赤ちゃんは、涙の出口がまだ開ききっていないことがあります
鼻涙管が鼻に開く出口には、ハスナー弁と呼ばれる部分があります。生まれたとき、このハスナー弁のあたりが薄い膜でふさがったままのことがあり、膜が破れるまでに生後6〜12か月かかる赤ちゃんもいます※9。
これを先天鼻涙管閉塞といい、新生児の6〜20%にみられます※2。涙が鼻へ抜けずに管の中にたまるため、涙目や目やにの原因になります。典型的には、生後1か月以内に症状が出ます※2。米国の住民調査では、最初の症状が「目やにだけ」だった赤ちゃんが3分の2を占めていました※10。
当院を受診する小さいお子さんの目やにも、この先天鼻涙管閉塞が背景にあることがあります。
多くは自然に治り、全員に治療が必要なわけではありません。生まれた赤ちゃん4,792人を1年間追いかけたスコットランドの調査では、20%に一度は涙の流れが悪い時期があり、その96%が1歳までに自然に治っていました※11。
実際に治療を受ける子は一部です。米国の住民調査では、先天鼻涙管閉塞と診断された1,998人のうち、治療を受けたのは289人(14.5%)でした※12。日本の新生児335人を調べた研究では、閉塞があった42人の経過を見たところ、処置が必要になったのは涙嚢の炎症を起こした1人だけでした※13。
国内の診療ガイドラインでも、まぶたの炎症が強いときや涙嚢の炎症を起こしたときなどを除いて、一定期間は経過を見ることが多いとしています※2。家庭では、目やにをやさしく拭き取ることが基本です※2。
米国の研究では、かぜで症状が出たり強くなったりする可能性に触れています※14。ふだんは落ち着いていても、かぜのときに目やにが目立つ赤ちゃんもいる、ということです。
生後半年を過ぎても涙目や目やにが続く場合は、眼科で治療の時期を相談します。片目の場合は、生後6〜9か月ごろの処置が提案されています※2。
かぜのときの目やには、3つに分けて考えます
かぜのときの目やには、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
- 鼻の中が腫れて涙の通り道が狭くなり、涙がたまるもの
- 鼻やのどの細菌が目に来て起こる結膜炎(膿のような目やにが出やすい)
- ウイルスが目に感染して起こる結膜炎(アデノウイルスなど。熱やのどの痛みを伴うことがある)
結膜は、白目とまぶたの裏をおおう薄い膜です。結膜に炎症が起きると、白目が赤くなります(結膜充血)。
1つめ:白目が白いままなら、涙の通り道が狭くなっていると考えます
鼻の粘膜の炎症が鼻涙管の出口のまわりを腫らすと、涙が鼻へ流れにくくなり、涙目になると考えられています※15。鼻から上がってきた炎症で涙の通り道の粘膜が腫れ、一時的にふさがるという考え方もあります※16。
大人では、鼻炎の治療で涙目がよくなった小さな試験(11人中7人)※17と、鼻の炎症がおさまると涙の通り道も元に戻った1例の報告があります※18。
子どものかぜで涙の流れを実際に測った研究は、まだありません。ただ、スコットランドで7歳の子を調べた調査では、涙目がある子は7.7%で、その70%がかぜかアトピー(アレルギーを起こしやすい体質)と関係していました※19。
涙が流れずにたまると、目やにが増えます※2。このタイプは結膜炎ではないので、白目は白いままのことが多く、涙目を伴います。熱がなく、鼻水だけの赤ちゃんでも、涙目や目やにが目立つことは当院でもよくあります。ただ、目をこすって、結膜炎やまぶたの炎症を合わせて起こすこともあります※2。
2つめ:膿のような目やにで白目が赤いときは、細菌の結膜炎を考えます
鼻の奥には、ふだんから細菌がすみついています※20。かぜをひくと、この細菌による結膜炎を起こすことがあります。
目やにで受診したのに耳まで診るのは、鼻の奥が耳管という細い管で耳(中耳)とつながっているからです。かぜのときはウイルスが耳管を上がり※21、耳管の守りも一時的に弱まるため、鼻の奥にいる細菌が中耳へ上がって中耳炎を起こすことがあります※20。細菌がどの道を通って目に来るのかは、はっきり分かっていません。
ある小児科の診療所で、膿のような目やにが出る結膜炎の子132人を調べた報告では、73%が同時に中耳炎を起こしていました。目と鼻の両方を調べた31人のうち27人で、同じ菌が見つかっています※22。日本の研究でも、目やに・中耳・鼻の奥から見つかった菌は、ほとんどが同じ型でした※23。
膿のような目やには、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別の細菌)と関係していたという米国の報告もあります※24。
膿のような目やにで白目が赤いときは、当院では耳の中も確認します。
3つめ:熱とのどの痛みがあれば、ウイルスの結膜炎を考えます
アデノウイルスによる咽頭結膜熱は、発熱、頭痛、だるさとともに、のどの痛みと結膜充血を起こします。夏に流行することが多く、5歳以下の子に多く報告されています※25。
別の小児科診療所の調査でも、のどの炎症を伴う結膜炎の子17人のうち11人(65%)から、アデノウイルスが見つかりました※26。
見分けるときは、白目・目やに・耳とのどを見ます
白目が赤いかどうか。目やにが膿のようか、涙まじりか。耳の痛みやのどの痛み、熱があるか。この3つを合わせると、おおよその見当がつきます。ただ、細菌かウイルスかを見た目だけで決めるのは、医師でも難しいとされています※26。
白目が白く、目やにが涙まじりで、耳やのどの症状もなければ、1つめのタイプと考えて、拭きながら様子を見てかまいません。
こんなときは早めに受診してください
まれですが、次のようなときは早めに受診してください。
目頭の下(涙嚢のあたり)が赤く腫れて、押すと痛がるときは、涙嚢の中で細菌が増える急性涙嚢炎のことがあります。先天鼻涙管閉塞の赤ちゃん1,998人のうち70人に起きていました※27。炎症が涙嚢の外に広がると、蜂窩織炎になります※2。
膿のような目やにと一緒に耳を痛がるときは、中耳炎を合併していることがあります※22。
生後1か月未満の赤ちゃんで、白目が赤く目やにが出ているときも、早めに受診してください。新生児では、アデノウイルスが全身に広がって重くなることがあります※25。
目を強く痛がる、まぶしがって目を開けない、見えにくそうにしているときは、目やにとは別の目の病気(角膜の病気など)を確かめる必要があります※28。
涙目が続き、黒目が大きく見えるときは、緑内障などを確かめるために眼科を受診してください※2※29。
目やには、多くは拭き取るだけで大丈夫です
結膜炎でも、多くは数日で自然に治ります。
英国の12の診療所で、6か月から12歳の結膜炎の子326人を、抗菌の目薬と、薬の入っていない目薬に分けた試験があります。7日目までに治った子は、抗菌の目薬で86%、薬の入っていない目薬で83%で、差はわずかでした※30。米国の研究でも、5日目までに86%の子の症状がなくなり、抗菌の目薬を使ったかどうかで差はありませんでした※24。
かぜのときの目やには、多くは目薬を使わず、やさしく拭き取りながら様子を見られます※30※24。当院でも、かぜのときの目やにに抗菌の目薬は基本的に出していません。ただ、目やにに加えてかゆみがあり、お子さんが目を触ってしまうときは、目薬を使います。かゆみだけのときは、塗り薬などを一緒に使うこともあります。
先天鼻涙管閉塞でも、抗菌の目薬は自然に治るのを早めるものではありません。目やにを減らす効果は期待できるので、目やにが多いときなど、必要なときだけ使います※2。
アデノウイルスは消毒用アルコールが効きにくいので、目やにを拭いたあとは手洗いを丁寧にします※25。
まとめ
涙は目の上でつくられ、目頭から鼻へ流れています。かぜで鼻の中が腫れると、涙の出口も狭くなり、目やにが増えることがあります。
白目が白く、涙まじりの目やにで、耳やのどの症状がなければ、拭き取るだけで様子を見てかまいません。膿のような目やにや、熱とのどの痛みを伴う白目の充血も、多くは数日でよくなります。
目頭の下が赤く腫れて押すと痛がる、膿のような目やにと一緒に耳を痛がる、生後1か月未満の赤ちゃんで白目が赤く目やにが出ている、目を強く痛がる・まぶしがる・見えにくそうにしているときは、早めに受診してください。
生まれて間もなくから涙目や目やにがあった赤ちゃんでは、もともとの涙の出口の狭さ(先天鼻涙管閉塞)が、かぜで目立つこともあります。気になるときは、いつでも外来でお声がけください。
参考資料
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