コラムcolumn
病気の話

小児の成長痛1

「成長痛」は、痛みの名前ではなく、確かめ終わったあとの名前です

夕方から夜にかけて、子どもが突然「脚が痛い」と泣き出す。抱き寄せてふくらはぎをさすっているうちに眠ってしまい、翌朝はけろっとして走り回っている。
外来でとてもよく聞く訴えです。そして多くの場合、「成長痛でしょう」と言われます。
私はこの言葉そのものを否定するつもりはありません。ただ、その言葉がどういう手順を経て出てきたのかには、こだわりたいと思っています。

「成長痛でしょう」には、二通りの意味があります

ひとつは、「成長痛の可能性がありますね」。
これは診察の
入口です。もうひとつは、「Bでもない、Cでもない、Dでもない。だから成長痛と言えます」。これは診察の結論です。
言葉は同じでも、中身はまったく違います。前者は何も確かめていない状態で、後者はひとつずつ消していった結果です。
私が診察室で渡したいのは、後者です。この作業は、それほど複雑ではありません。特別な検査がなくても、聞き方と診かたでかなり絞れます。その手順を、そのままお見せします。

 

まず、3人に1人が経験します

オーストラリア南部で4〜6歳の子どもを持つ保護者に無作為に調査した研究では、有効回答1,445件のうち36.9%(95%信頼区間 32.7〜41.1)に、いわゆる成長痛にあたる脚の痛みがありました(※1)。デンマークで3〜6歳の777人を2週間ごとに追いかけた調査でも、どの定義を使うかによって24〜43%という値が出ています(※2)。
つまり、3人に1人前後です。
経過も分かっています。成長痛と診断された44人を5年後に追いかけた研究では、再評価できた35人のうち18人(51%)で痛みが消えていました。まだ続いていた17人についても、そのうち14人(83%)で発作の回数も痛みの強さも軽くなっていました。そして、線維筋痛症のような慢性の痛みの病気になった子は、ひとりもいませんでした(※3)。

「成長痛」には、世界共通の定義がありません

ここが、この言葉のいちばんやっかいなところです。2022年に発表された大規模な文献レビューでは、「成長痛」に言及した145の研究と、ICD-10・SNOMEDという2つの国際的な病名分類を突き合わせています。その結果、もっとも一致していた要素ですら「下肢の痛み」で50%でした。「夕方から夜の痛み」は48%、「繰り返す経過」は42%、「診察所見は正常」は35%、「両側の痛み」は31%。そして80%以上の研究が発症年齢に触れておらず、93%は「成長」そのものに触れていませんでした(※4)。
日本小児整形外科学会の一般向けページも、冒頭に「『成長痛』に明確な定義はありません」と書いています(※5)。
診断基準がない、ということは、「成長痛です」という言葉だけでは、何も確かめていないのと区別がつかないということです。だからこそ、何を消したのかが大事です。

 

朝はどうか ── 炎症の病気は、朝に出ます

私が最初に聞くのは、朝のことです。

「夜だけ痛くて、朝はけろっとしている」。これが確認できると、関節の炎症でおきる病気――若年性特発性関節炎のような、関節そのものが腫れるタイプの病気は、かなり考えにくくなります。

理由は炎症の性質にあります。関節に炎症があると、夜のあいだ動かさずにいるうちに関節の中に水分や炎症性の物質がたまり、周りの組織がむくみます。ですから朝いちばんがもっともつらく、動かしているうちにほぐれてきます。これが「朝のこわばり」です。炎症は夜のうちに悪くなるのではなく、夜のうちに溜まって、朝に姿を現します。

成長痛はこれと正反対です。夜に痛くなり、朝には消えています。

この対比には裏づけもあります。イタリアの47施設が、16歳未満で新たに小児がんまたは若年性特発性関節炎と診断された1,957人を集め、両者を分ける要素を調べた「ONCOREUM」という研究です。この、どちらかの病気だと分かっている子どもたちのなかで、朝のこわばりと関節の腫れは、がんではなく関節炎の側に強く寄る所見でした(※6)。朝に残る症状は、炎症を探す方向のサインなのです。

 

左右どちらか ── 骨の腫瘍は、一か所に出ます

次に確かめるのが、左右です。
「昨日は右、今日は左」「両方とも痛がる」。これが聞けると、骨の腫瘍のように一か所にかたまりを作るタイプの病気は、ぐっと考えにくくなります。腫瘍は体のどこか一か所にできるので、痛みもその一か所に出ます。日によって左右が入れ替わる、という出方はしません。がんと関節炎を比べたONCOREUM研究でも、ひとつの関節だけが侵されていること、そして関節ではない「骨そのもの」の痛みが、がんの側を強く示す所見でした(※6)。
ただし、ここには大事な例外があります。白血病のように骨の中に広がっていく病気では、痛む場所が複数になることも、両側になることもあります。ですから「両側だから腫瘍ではない」とは決められません。左右の情報は、次にお話しする「脚以外はどうか」と必ずセットで見ます。
成長痛の側の数字もあります。トルコの小児リウマチ科が集めた398人では、両側が86.2%、下肢が89.7%でした(※7)。専門施設の数字なので、一般の外来にそのまま当てはまるわけではありません。
なお、成長痛でも「今日は右だけ」という日はあります。問題になるのは、いつも決まって同じ側だけが痛く、だんだん強くなっていく場合です。

 

全身はどうか ── 熱、体重、顔色

三つめは、脚から目を離して全身を見ることです。
先ほどのONCOREUM研究では、がんと診断された1,277人のうち324人(25%、95%信頼区間 23.0〜27.8)が、筋肉や骨の症状で発症していました。骨の悪性腫瘍では66人中53人(80%)、白血病では582人中189人(32%)です。そして体重が減っていることは、がんの側を強く示す所見のひとつでした(※6)。リウマチ科に紹介されて最終的に悪性腫瘍と分かった29人の振り返りでも、関節ではなく「骨」が痛いという訴えが68%、背中の痛みが主な訴えだった子が32%にありました(※8)。

ですから私は、熱が続いていないか、体重が減っていないか、顔色や元気さが普段と違わないか、あざが増えていないかを見ます。
ただし、これらはいずれも専門の病院に紹介された子どもたちの研究です。実際の頻度はずっと低く、小児リウマチ科を10年ぶん振り返った研究では、筋肉や骨の症状で受診した1,254人のうち悪性腫瘍が見つかったのは10人(1%未満)でした(※9)。白血病の不安については、別の記事(https://nakanokodomo.jp/column/222/ )に書いています。

 

ここまで確かめられたら、検査は要りません

夜だけ痛く、朝は元気で、両側または左右が入れ替わり、熱も体重減少もなく、診察でも腫れや熱感がない。この形が何か月も繰り返しているなら、血液検査は必要ありません。
これは省略ではなく、根拠のある判断です。イランで行われた研究では、3か月以上続いている典型的な四肢痛の子ども100人と、年齢・性別をそろえた対照の子ども150人に、血算、赤沈、カルシウム、リン、アルカリフォスファターゼ、リウマチ因子を測りました。結果は、すべての項目で両群に差がありませんでした(※10)。
レントゲンも同じです。腫れや、一点を押したときの痛み、跛行がないなら、写して分かることはほとんどありません。

むしろ、心配だからと検査を広げると、偶然の異常値が出てさらに検査が必要になり、不安が増えるという逆転が起きます。検査のかわりに私がするのは、「いつ、どうなったらもう一度来てください」をはっきり決めて、再診を約束することです。「原因不明」で終わらせないという考え方は、腹痛の記事(https://nakanokodomo.jp/column/281/ )にも書きました。

 

それでも受診してほしいとき

ここまでの裏返しが、そのまま受診の目安になります。次の4つのどれかに当てはまるときは、もう一度診せてください。

  • 朝も痛がる、歩き方がおかしい、走らなくなったとき。夜だけという形が崩れています。ただし、寝起きに少しぐずるだけで、朝食のころには普通に動いているなら、これには当たりません。
  • いつも決まって同じ片側だけが痛く、週単位で強くなっていくとき。片側の日が時々あるだけなら、心配はいりません。
  • 熱が続く、体重が減る、顔色が悪い、あざが増えるといった、脚以外のサインが重なるとき。どれかひとつが一時的にあるだけなら、あわてなくて大丈夫です。
  • 痛む場所が腫れている、赤い、さわると熱いとき。成長痛では診察しても何も出ません。熱もあって、その脚を痛がって歩けないときは、その日のうちに受診してください。

ここに「夜に痛がること」は入っていません。夜に痛むのは成長痛のもっとも典型的な形であって、それ自体は危険なサインではありません。専門施設に集まった398人の調査でも、夜間に発作が起きる子は74%、痛みで目を覚ます子は60.8%でした(※7)。
もうひとつ、危険という意味ではありませんが、「痛い」より「じっとしていられない」「脚を動かすと楽になる」という言い方をするときは、むずむず脚症候群という別の病気が混じっていることがあります。対応が変わるので、教えてください。

日本整形外科学会は、学校健診で訴えをすべて「成長痛」で片づけることについて、「『成長しているから痛い』『だから放置してよい』と誤解されます」「中には重大な疾病の始まりであることもあります」と述べています(※11)。「成長痛だから様子を見て」は、学会の立場ではありません。

 

家庭でできること

痛がっている最中にできることは、実はとてもシンプルです。さする、そばにいる。さするだけで軽くなることが多い、というのは学会の一般向けページにも書かれています(※5)。温めるのも、やって悪いことはありません。
ストレッチを試す価値もあります。ももの前、ももの裏、ふくらはぎを伸ばすストレッチを続けた18人と、行わなかった16人を18か月追いかけた古い研究では、ストレッチをした子は9か月の時点で発作がゼロになり、しなかった子は18か月たっても月に1〜2回続いていました(※12)。小さく盲検化もされていない研究なので「必ず効く」とは言えませんが、害のあるものではありません。
逆に、運動や外遊びを減らす必要はありません。活動を制限すれば発作が減る、というデータはありません。

もうひとつ。この痛みでいちばん消耗しているのは、多くの場合、子どもではなく夜中に起こされる側です。子どものほうは翌朝、痛かったことをあまり覚えていません。何週間も続けば、睡眠を削られた保護者のほうが先に限界に来ます。気の持ちようの問題ではありません。受診されたときは、そのことも遠慮なく話してください。相談できることがあります。

 

まとめ

「成長痛」は、痛みの名前ではありません。他の病気をひとつずつ消し終えたあとに残る名前です。
消すために見ているのは、朝はどうか(炎症の病気)、左右どちらか(腫瘍)、脚以外はどうか(全身の病気)の3つです。ここが揃えば、検査をしなくても言い切れます。
3人に1人が経験し、5年で半数は消え、残った子も多くは軽くなっていきます。まず、そこは安心してください。そのうえで、先ほどの4つのどれかが出てきたときだけ、もう一度お越しください。
では、そもそもなぜ痛むのか。原因の話は後編に書きました。

 

参考資料

※1 Evans AM, Scutter SD. Prevalence of “growing pains” in young children. J Pediatr. 2004;145(2):255-258. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15289780/

※2 Hestbæk L, Lücking A, Jensen ST. Growing pains in Danish preschool children: a descriptive study. Sci Rep. 2024;14(1):3956. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38368453/

※3 Uziel Y, Chapnick G, Jaber L, Nemet D, Hashkes PJ. Five-year outcome of children with “growing pains”: correlations with pain threshold. J Pediatr. 2010;156(5):838-840. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20171654/

※4 O’Keeffe M, Kamper SJ, Montgomery L, et al. Defining Growing Pains: A Scoping Review. Pediatrics. 2022;150(2):e2021052578. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35864176/

※5 日本小児整形外科学会「成長痛」 https://www.jpoa.org/disease/growingpains/

※6 Civino A, Alighieri G, Prete E, et al. Musculoskeletal manifestations of childhood cancer and differential diagnosis with juvenile idiopathic arthritis (ONCOREUM): a multicentre, cross-sectional study. Lancet Rheumatol. 2021;3(7):e507-e516. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38279403/

※7 Akal F, Batu ED, Sonmez HE, et al. Diagnosing growing pains in children by using machine learning: a cross-sectional multicenter study. Med Biol Eng Comput. 2022;60(12):3601-3614. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36264529/

※8 Cabral DA, Tucker LB. Malignancies in children who initially present with rheumatic complaints. J Pediatr. 1999;134(1):53-57. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9880449/

※9 Trapani S, Grisolia F, Simonini G, Calabri GB, Falcini F. Incidence of occult cancer in children presenting with musculoskeletal symptoms: a 10-year survey in a pediatric rheumatology unit. Semin Arthritis Rheum. 2000;29(6):348-359. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10924020/

※10 Asadi-Pooya AA, Bordbar MR. Are laboratory tests necessary in making the diagnosis of limb pains typical for growing pains in children? Pediatr Int. 2007;49(6):833-835. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18045281/

※11 日本整形外科学会「保護者・養護教諭・学校医向けFAQ 検診結果が『全部成長痛』!?」 https://www.joa.or.jp/public/motion/growing_pain.html

※12 Baxter MP, Dulberg C. “Growing pains” in childhood—a proposal for treatment. J Pediatr Orthop. 1988;8(4):402-406. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3292578/